2015年8月19日8:21
ハウスプリペイド決済のプロセッシングでアジア制圧を目指すバリューデザイン
重慶ローソンの採用を機に、中国ではコンビニエンスストアでの採用が加速
クラウド型電子マネー(プリペイド)発行システムを提供するバリューデザインは、2013年から本格的にアジア展開を開始。日本で培ったリチャージカードのノウハウを生かし、ハウスプリペイドカードがそれほど浸透していないアジアにおいて、サービスの浸透を目指している。
韓国では300約500店舗、中国では約150店舗で採用
中国で現地法人を設立し案件がスピードアップ
現在、バリューデザインは、韓国、中国、シンガポールでサービスを開始しておりタイ、フィリピンは、2015年度中のサービス開始予定。また、ベトナム、インドネシアにおいても検討を行っている。
「韓国では約500店舗、中国では約150店舗で採用されており、重慶ローソンでの採用を機に、中国での案件が増加しています。すでに、北京や上海のコンビニでも導入に向けて動き出しています」(バリューデザイン代表取締役CEO 尾上徹氏)
中国現地での飲食店での会計は「元」での支払いが中心となるが、より単価の低いコンビニエンスストアでは「角」といった細かいおつりが出てくるという。レジのスピードアップや小銭による支払いの煩雑さの解決から、プリペイドカードの採用を望むケースが増えている。
中国においては代理店と連携して加盟店を開拓。現地のパートナーとは3社と提携。バリューデザインがフロントでサービスを提供することも可能だが、中国企業との契約を望む場合は、同社が黒子となって展開することもあるそうだ。
「中国のビジネスの立ち上げで学びましたが、出張ベースで代理店と交渉をして、加盟店を広げていくのは限界があります。たとえば、重慶ローソンがスタートする際に、現地での領収書の問題、人的なサポートなどが必要なため、中国では佰馏(上海)信息技术有限公司(バリューデザイン上海)を立ち上げて5人体制で動いています。今後は、他国でも駐在員は必ず必要になると考えています」(尾上氏)
自己利用のプロモーションが競合の差別化に
日本のシステムをクラウド上で展開するため価格競争力も強み
なお、中国にも競合となるプロセッサーはいるが、「自己利用での活用やプロモーションのノウハウはリードしていると感じています」と尾上氏は話す。また、中国では会員カードとしての引き合いも多く寄せられているそうだ。
「弊社はプロセッサーの領域だけでアジア№1になりたいと考えており、中国で成功しなければそれが実現しないため、最も力を入れています。現在、日本の導入店舗は約3万5千ですが、店舗数では数年後に中国が日本を上回るかもしれません」(尾上氏)
ただ、利益率に関しては中国より日本のほうが高いそうだ。その理由として、中国はクレジットカードの端末を無料で配るなど、決済に関して店舗の負担がそれほどない環境にある。端末の費用負担は発生するが、「日本のシステムを横展開できるため、投資コストがそれほどかかりません。場合によっては日本の半値以下でアジアにおいて展開できるため、価格競争力があります」と尾上氏は説明する。
バリューデザインの海外展開では、原則、日本のハウスプリペイドカードのシステムをベースに展開している。ただ、各国の法律やインターネットの環境により、現地で処理するケースもあるそうだ。中国では現地で処理しているが、クラウド環境に日本と同じ仕組みを構築しており、監視は日本から行っている。
韓国は釜山での営業を強化し、1年後の普及を目指す
シンガポールでは株主と協力した営業を展開
韓国では、メイクアップブランド「エチュードハウス」で2012年に採用されて以降、案件がストップしていたが、釜山の代理店と契約してから引き合いが増加。飲食チェーンの「Mango Monster」でサービスをスタートすることが決定している。韓国では、VAN(Value Added Network、決済処理事業者)がプリペイドカードの営業を積極的に行うケースが増えており、競争が激しくなっている。尾上氏は、「韓国では、米国で普及しているギフトカードのように、商品券の代替として営業が行われるケースが多いですが、弊社の場合、自己利用を想定しており、現地の企業に響き始めています」と語り、笑顔を見せる。韓国では1年~1年半で本格的に普及のフェーズに入ると予測。また、現地での営業を強化する目的で、韓国人の現地スタッフが常駐し、サービスの営業を行っている。
東南アジアでいち早く営業を開始したシンガポールでは、2014年1月より支社を構えてサービスを開始。すでに高級住宅地のカフェ「The Cornerstone」で導入されている。シンガポールは、人口も少なく、市場としては小さいが、ギフトカードモールがセブン-イレブンに導入されているためため、コンテンツの拡充に向けスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどに対し協力してアプローチしている。
タイではガソリンスタンド等での可能性に期待
インドネシアやフィリピンも市場は大きい
タイでの展開も開始予定。タイでは、プリペイドカードに事前に入金して小売店でお金を支払う文化が定着していないが、インセンティブについては消費者の意識は高いため、複数の飲食チェーンが検討を進めている。また、すでに1社スパでの採用が決定している。導入検討はスタートしたばかりだが、早期に100社程度の採用はあるとみている。なお、タイのガソリンスタンドでは、プリペイドカードの導入が進んでいないため、「時間はかかるかもしれませんが可能性は感じています」と尾上氏は意気込む。
また、フィリピンについては導入が4社確定。基本的に、フィリピンの代理店が契約して、バリューデザインはOEMに徹するが、「フィリピンも市場は間違いなく大きい」(尾上氏)という。
そのほか、ベトナム、インドネシアでの展開も準備しているが、「ベトナムは金融機関でないとプリペイドカードを発行できないため、当面は連携先と協力する予定です」と尾上氏は口にする。
5年後に海外での売り上げが国内を超える想定
台湾やマレーシアでの展開も検討
海外での展開において、当面はハウスプリペイドが中心となるが、「ブランドプリペイドも案件ベースで検討したい」とのこと。決済端末については、輸出入や認定などの面から、展開地域によって設置する端末を分けているそうだ。また、企業の要望によりNFCや非接触ICカードでのカード発行も可能だが、ギフトカードモールや外販が難しくなるので、磁気カードやスマホのバーコードのほうが当面のコストパフォーマンスは見込めると考えている。
今後の目標として、「アジアでのプリペイドカードのプロセッサーはどこかとなった際に、バリューデザインと言われるレベルに早く持っていきたいです。アジア全体でハウスプリペイドカードのマーケットが拡大したうえで、№1になりたいです」と尾上氏は力を込める。導入店舗数については、全体で10万店舗は超えると想定。現在、海外に占める売り上げはわずかだが、「3~4年で海外の売り上げが30~40%、5年で逆転させたい」と尾上氏は意気込みを口にする。今後は台湾やマレーシアでの展開も想定。また、同じくアジアでの展開に力を入れる株主や企業と連携した取り組みも強化する方針だ。