2016年2月12日8:00
Visa Net接続の開放により、パートナーとの協業機会の創出へ
ビザ・ワールドワイド(Visa)は、2016年2月10日、同社の戦略説明会を開催した。代表取締役 ジェームス・ディクソン氏より同社の日本市場戦略と今後の展望について説明。また、新技術推進部 部長 鈴木章五氏から、モバイルで鍵となるプロダクトについても紹介された。
日本におけるカード決済の比率は約17%と現金が主流
デビット、プリペイドの成長が加速
日本の民間最終消費支出に占めるカード決済の割合は約17%。これは、韓国(73%)、カナダ(68%)などに比べて低い数字となっている。その理由として、日本は問題なく現金が利用されており、治安のよさから消費者は大金を持ち歩いても安全だ。また、ATMの台数も多く、常に現金を引き落とせる環境が整っている。さらに、銀行の自動引き落としの仕組みも確立されている。電子決済に移行するためには、さらに利便性を高めていく必要があるとしている。
Visaでは、後払いのクレジットだけではなく、前払いのプリペイド、即時払いのデビットなど、さまざまなプロダクトを消費者、加盟店、政府などに提供している。たとえば、国内においてVisaデビットは10年前から発行。海外ではデビットの処理件数がクレジットよりも多くなっており、国内でもここ数年イシュアが増加している。また、「今後もイシュアは増えていく」とディクソン氏は説明する。また、プリペイドの市場も伸びており、若年層への発行、バーチャルカード、海外留学生への提供など、さまざまなニーズに対応している。
東京は訪日外国人の「決済」に対する満足度が低い
表参道、京都、札幌でインバウンド施策を展開
日本では、1964年の東京五輪開催時にさまざまなインフラが整備されたが、2020年に向けて利便性の高い決済システムの確立が期待される。Visaでは、「2020年に向け、キャッシュレスな社会、日本を目指して進んでいきたい」(ディクソン氏)としている。
また、2015年は約2,000万人の外国人が日本を訪れ、3.4兆円が支出されたが、2020年に向けてその数字はさらに高くなると予想される。Visaでは、世界26カ国において調査を実施したが、東京は「交通」や「食事」についての評価は高いが、「決済」に関しては平均値よりも低い結果となった。その一方で、「カードで支払える加盟店があれば消費額は増える」と回答している人は37%となった。
Visaでは、インバウンドへの取り組みとして、中国の旧正月(春節)に合わせ、訪日旅行客に人気の高い表参道、京都、札幌という3つのエリア・都市でインバウンド施策を展開。たとえば、京都ではオリジナルのアクセプタンスマークを設置するなど、カード決済が利用できる環境であることを伝えることが重要であるとしている。
モバイルを活用した決済の多様化も進む
日本でのVisa payWaveの普及に期待
近年では、ファイナンスとテクノロジの造語である「Fintech(フィンテック)」がバズワード化している。海外を見ると、多くの新規参入者が登場しているが、Visaでは同分野において、テクノロジが重要であると認識している。特に、モバイルは決済全般に対して関連性が高い。Visaでは、デジタルの分野でも実店舗の取引同様に、便利で安全に使用できる環境を目指している。
鈴木氏は、「従来型オンライン決済」「事前オーダー型決済(ネット決済+店舗の商品提供)」「組み込み型決済(ネット決済+物理的なサービス提供)」「従来型対面決済」など、モバイルを利用したさまざまな取引が進んでいると説明した。また、NFCに加え、BLE(Bluetooth Low Energy)、ジオフェンシング、QRコードなど、さまざまな技術を決済に活用可能だ。
Visaでは、非接触IC決済の「Visa payWave」、遠隔決済「Visa Checkout」、P2P決済の「Visa Direct」、セキュリティ対策の「Tokenisation」、Visaクラウド決済プラットフォーム、さまざまなプレイヤーとの協業機会の創出に向けた「Visa Net」接続の開放などの取り組みを行っている。
例えば、Visa payWaveは、2015年6月時点において68カ国で利用可能だ。米国では2014年のEMVコンタクトレス対応端末の普及台数は22万台強だったが、最近200万台の設置を突破するなど、対応環境が整備されてきた。日本でもインバウンド需要の拡大に向け、世界各国で普段使いの決済が望まれるとみている。
「Visaデベロッパー」をスタート、日本での展開は?
Visaの決済関連の技術、製品、サービスに自由にアクセス可能に
米国時間の2016年2月4日には、「Visaデベロッパー(Visa Developer)」の立ち上げを発表。Visa決済の中核である「Visa Net」への接続を60年間の歴史の中ではじめて開放し、API(Application Programming Interface)やSDK(Software Development Kit)を提供することで、金融機関、加盟店、パートナー、開発者などは、Visaが提供する決済関連の技術、製品、サービスに自由にアクセス可能になった。
ディクソン氏は、「同プラットフォームを促進して、従来のお客様のみならず、決済業界のすべてのユーザーに対してメリットがあるようにしていきたい」と意気込みを見せる。鈴木氏は、「日本でもVisa Developerは環境として整っており、窓口は空いていますが、サウンドボックスの関係やAPIの数は急速に立ち上がってくる状況などで、弊社から能動的にアプローチをかける段階には来ていません。ただ、時間がかからずそういう時期は来ると考えています」と説明する。
さらに、セキュリティ対策として、磁気よりも安全な取引が可能なEMV化を促進させていく方針だ。同分野において、日本と米国は遅れているが、米国ではEMV化が加速しているという。さらに、カード番号を別の乱数に置き換えるトークン取引により、カード番号の漏洩を防げるとしている。