2010年9月16日12:20
「カード決済とCRM/付加サービスの親和性」パーク24(前篇)
交通系ICカードの乗車履歴に応じて自動的に駐車料金を優待
パーク&ライドサービスで環境負荷低減や交通渋滞緩和などに貢献
全国で時間貸し駐車場「タイムズ」を運営するパーク24ではクレジットカードの利用を2000年から開始。その後、Edyを皮切りに、SuicaやPASMOなどの電子マネーを積極的に導入している。同社では鉄道事業者と連携したパーク&ライドの取り組みを2008年4月からスタート。交通系ICカードを利用して環境負荷を低減するだけではなく、電車とバスをつなぐサービスとして高い評価を受けている。
郊外から都心へスムーズなアクセスが実現
都心の手前の駅に駐車、一カ所に止めて回遊するパターンも
パーク&ライドとは、駅近くの駐車場にクルマを止めて、公共の交通機関を利用する環境にやさしいクルマの使い方である。具体的には交通系ICカード内に記録された鉄道の乗車履歴と、タイムズの精算機システムを連動させることにより、切符を見せる、パーク&ライド用の駐車券を使うなどの手順を一切用いずに、交通系ICカードに記録された乗車履歴に応じて自動的に駐車料金を優待料金にする。これにより、鉄道、車双方の利用促進を図ることができ、環境負荷低減や交通渋滞緩和などの効果が期待できる。
同社では東武鉄道と連携し、2008年4月から、タイムズ幸手駅前、志木駅前でPASMO(Suica)を活用して「タイムズ」で割引ができる乗車履歴連動のパーク&ライドサービスを開始した。タイムズ幸手駅前の例では、東武鉄道の利用日と駐車した日が同じであり、幸手駅の利用(降車履歴)があれば、自動的に駐車料金をパーク&ライド優待料金(200円減額)へ変更して表示した。
「パーク&ライドの狙いは郊外から都心部まで車を乗り入れさせないことですが、サービスを実施していると必ずしもそれだけではないことがわかりました。例えば、都心の1つ手前の駅に駐車させて、中心の駅まで電車で移動させたり、一カ所に駐車して周辺のエリアを電車で回遊させる方法なども実現できました」(パーク24 事業企画本部 技術開発室長 岩渕泰治氏)
例えば、多摩モノレールの立川北駅の1つ北には高松駅がある。立川の中心部に入ると渋滞が起きやすいため、タイムズ高松駅前に車を止めてモノレールで移動すると駐車料金を優待するサービスを実施した。また、東京・お台場のタイムズテレコムセンターに車を止めて、ゆりかもめで回遊させる取り組みも行った。
電子マネーの利用上位はパーク&ライドの実施タイムズ
タイムズ幸手駅前は全決済の50%以上が電子マネー
これまでパーク&ライドは、約70カ所のタイムズで実施。利用者も9月中旬時点で30万人を超えた。
「従来、パーク&ライドは手間やコストがかかる割には実際に鉄道利用額も駐車料金も小額決済で割に合わず、そこまで労力をかけられないケースが多かったのですが、交通系ICカードを用いることにより、例え100円、200円の利用でも自動で精算が可能になります」(岩渕氏)
電子マネーの利用率もパーク&ライドのサービス開始初日からアップするタイムズも多いという。一番利用が多いタイムズ幸手駅前では約55%、タイムズ武蔵五日市(JR東日本の武蔵五日市駅)では約45%が電子マネーで決済が行われている。
「交通系の電子マネーは採用後、すぐに利用される傾向があります。例えば、クレジットカードの利用率は約4%と微増ですが、後発の電子マネーは約7%あり、現在でも堅調な伸びを示しています。現在、電子マネーを利用できるタイムズは300を超えていますが、パーク&ライドを実施している駐車場が電子マネーの利用率上位を占めています」(岩渕氏)
同社では専用のコールセンターを設け、パーク&ライドの質問に関しては鉄道事業者に迷惑がかからないようにすべて自社で対応しているという。また、販促物の作成や駅近隣でのチラシ配布、新聞の折り込み広告、駅近隣のタイムズ利用者に対するメルマガ送付など、鉄道事業者の了解も得ながらパーク&ライドの告知活動も積極的に行っている。
例えば、2009年の「立川の花火大会」実施時には、前述の高松駅を利用して、タイムズ高松駅前の精算機にPASMOをタッチすると駐車料金を200円優待するサービスを行った。同社では事前にポイントプログラム「タイムズクラブ」会員に対し5,666件のメールマガジンを配信したが、そのうち82人が記事から同社のWebサイトにアクセスした。花火大会当日の土曜日は前後の土曜日と比較して約2倍、駐車場は約3.2倍の利用があったという。