富士山静岡空港、中国人向けモバイル決済サービス「WeChat Pay」「Alipay」の利用が好調

2018年7月23日8:00

開港から9年を迎えた静岡県の富士山静岡空港は、施設内の店舗で中国人向けモバイル決済サービスの「Alipay」と「WeChat Pay」を導入している。静岡県によると、全国54の地方管理空港として外国人入出国数が最も多い同空港だが、中国人が日常的に利用する両決済サービスに対応したことで、観光客の利便性向上、テナントの売上アップに役立てている。

静岡県によると54の地方管理空港で外国人入出国数は8年連続で第一位
テナントがアクワイアラと直接契約することで負担軽減

富士山静岡空港は、富士山を眺めながら離着陸できる“富士山に最も近い”空港だ。全国54の地方管理空港での外国人入出国数は8年連続で第一位。首都圏から近く、東名高速道路から短時間でアクセス可能な立地もあり、国内の地方空港として注目を浴びている。

富士山静岡空港 商業コンセッション室 室長 田倉義弘氏

富士山静岡空港では、カフェの「TABI CHA FE(タビチャフェ)」、売店の「DUTY FREE SHOP (免税店)」、「f-air」、リラクゼーションショップ「もみかる富士山静岡空港店」で、中国人モバイル決済サービスの「Alipay」と「WeChat Pay」を導入した。同空港では開港当初、国内線の利用が中心と見込んでいたが、実際は国際線の需要が非常に多かった。特に、2015年は中国人観光客の爆買いブームがあり、同空港での購買も高まった。

売店の「f-air」
カフェの「TABI CHA FE(タビチャフェ)」

同時期には、中国人向けモバイル決済サービスのアクワイアリングを国内で展開する企業からの複数の引き合いも受けた。当時は、中国人観光客の支払いは銀聯カードが主流であったが、AlipayとWeChat Payに対応することで、利便性がさらに高まると考え、導入を決意したそうだ。

富士山静岡空港 商業コンセッション室 室長 田倉義弘氏は、「カード決済の目的は販促であり、今までにないターゲット層を増やすことが可能です。空港間競争が激しくなる中、これからの空港は選ばれる時代になりますので、AlipayとWeChat Payが両方使えて、便利だと感じていただきたいです」と説明する。

導入に向けては、取引内容等を慎重に検討した結果、ANA Digital GateからAlipay、静銀ディーシーカード(連携先はアプラス)からWeChat Payを導入した。田倉氏は、「テナントが、アクワイアラと直接契約していただく形態とすることで、両決済サービスを導入するリスクを軽減させ、館内全テナントの導入を目指し、お客様の負担を強いない形を最大限に考慮しました」と強調する。富士山静岡空港では、アクワイアラにテナントを紹介する形を取ることで、仲介手数料などは徴収していない。

リラクゼーションショップ「もみかる富士山静岡空港店」での告知

AlipayとWeChat Payの導入で利用者全体が底上げ
伊藤園の自動販売機でWeChat PayとLINE Payの支払いが可能に

結果として、「導入前は銀聯と現金の比率が半々でしたが、WeChat PayとAlipayの取り扱いがプラスされたため、利用者としての分母は伸びています」と田倉氏は成果を口にする。現在も中国人観光客の利用は銀聯が最も多いが、AlipayとWeChat Payのモバイル決済はそれに迫る勢いだ。また、両モバイル決済サービスでは定期的にキャンペーンを行っており、消費者の購買力に拍車がかかる点も利用を後押している。中国人の多くがWeChatなどのSNSを活用しているため、富士山静岡空港が両サービスを使用できるという口コミ効果も期待できる。

なお、店舗の導入形態として、AlipayとWeChat Payに対応した専用端末(SUNMI V1)を活用する方法、タブレット端末を利用する方法がある。各店舗ではPOPを掲示するなどして、AlipayとWeChat Payが使えることを告知している。

「富士山静岡空港では、地方空港の中でも話題性のあるサービスは一番に、先行して入れていきたいと考えています。例えば、伊藤園の自動販売機は、WeChat PayとLINE Payでの支払いが可能で、全国の空港で初めて導入しました。各決済手段の比率は空港として把握できませんが、購買額自体が伸びているため、一定の効果はあると感じています」(田倉氏)

伊藤園の自動販売機はWeChat PayとLINE Payに対応

国内のモバイルQR・バーコード支払いに注目
新テナントにもAlipayとWeChat Payを勧める

なお、韓国や台湾からの旅行者、国内の利用者についてはクレジットカードが利用されるケースが多い。また、国内の利用者は「iD」など非接触決済の利用者も増えている。現在は、モバイルQR・バーコード支払いの「d払い」や「LINE Pay」、「楽天ペイ(アプリ決済)」の動向に注目している。田倉氏は、「一般のお客様の要望があれば、できる限り応えていきたいですが、テナントの利益を圧迫せず、導入後のリスクが少ないことが条件です」とした。

富士山静岡空港では現在、2018年10月を目標に旅客ターミナルビルの増改築を進めており、テナントが14店舗(直営店含む)に増える予定だ。当然、入居する店舗にも売上への貢献が期待できる中国人向けモバイル決済サービスの導入を勧めていきたいとした。また、2019年4月からは空港の運営主体が三菱地所および東急電鉄グループに移行する予定だが2026(平成38年度)年の利用者は135万人という目標を掲げている。

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