2018年12月4日8:00
楽天と神戸市は2018年12月1日、地域活性化や市民サービス向上を目的とした包括連携協定を結んだ。楽天のサービスやノウハウを生かし、電子商取引分野での人材育成や新規ビジネスの創出、訪日外国人客(インバウンド)誘致に向けたキャッシュレス決済の推進などに取り組む。楽天が、こうした協定を政令指定都市と結ぶのは初めて。(ライター・南文枝)
技術研究所で大学生のインターンシップ受け入れ
キャッシュレス決済でレベルの高いサービスを
楽天 代表取締役会長兼社長 三木谷 浩史氏と神戸市 市長 久元 喜造(きぞう)氏が同日、神戸市内で協定書を交わした。協定書によると、⑴神戸の魅力の向上と情報の発信 ⑵インバウンドの推進 ⑶ふるさと納税の推進 ⑷大学などと連携した人材育成支援 ⑸スポーツを通じた地域貢献 ⑹神戸のまちの活性化――の6項目で連携、協力していく。
具体的には、神戸の魅力の向上と情報の発信で、楽天が神戸市内の事業者を対象に電子商取引のセミナーを開催。大学などと連携した人材育成支援では、楽天技術研究所のインターンシップで大学生を受け入れ、インターネット通販やAI(人工知能)を活用したビジネスに長けた人材を育てる。
インバウンドの推進では、神戸を訪れる外国人観光客らの利便性向上のため、市内の商店や観光施設などでキャッシュレス決済を推進する。訪日外国人客の誘致に向けた旅行商品の開発や、観光プロモーションなどでも協力する。
神戸のまちの活性化では、ICT(情報通信技術)を活用した市民サービスの向上を図る。18年6月に開設した電子図書館の利活用促進や、早ければ年内にも北区役所の受付にAIスピーカー(スマートスピーカー)を設置。区役所を訪れる市民の問い合わせに対応する。
久元氏は「グローバルに見ると、キャッシュレスが幅広く展開されているが、日本では遅れている。神戸でキャッシュレス化を進め、インバウンドの観光客に対してレベルの高いサービスを提供したい」と話した。さらに、「神戸のプロモーションや人材育成は非常に大きな課題。グローバルに活躍できる人材を神戸から輩出し、神戸の経済の活性化につなげたい」と協定に期待を寄せた。
神戸の魅力をグローバルに発信
三木谷会長「未来型都市のモデルケースに」
ITを活用して地域の課題を解決しようと、楽天は、高知県や北海道、岐阜県など全国各地の自治体と包括連携協定を結んできた。今回の神戸市を含めると、同社がこれまでに包括連携協定を締結した自治体は11都道府県16市3町の30自治体に上る。
楽天は、2007年に神戸支社を設立。ウェブ物産展「神戸セレクション」や「楽天市場」でのふるさと納税受け付け、電子図書館サービスなどで神戸市と連携してきた。また、同市出身の三木谷会長兼社長は、2004年から同市のサッカーJ1チーム「ヴィッセル神戸」の運営に参画。同チームは2015年、楽天グループに入った。このような経緯を踏まえ、さらに幅広い分野での提携を模索したことが、今回の包括連携協定の締結につながった。
久元氏が「神戸は、インバウンドの分野で大阪、京都などに比べて後れをとっている」と話し、三木谷氏は、「大阪はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)や万博などアイコニックなものがあり、京都には歴史的な資産がある。神戸には総合的な魅力があり、阪神大震災から復興してきているが、少しインパクトが足りないと思う」と指摘。そのうえで「アイデア出しも含めて協力したい」と話した。
三木谷氏は「人材育成、キャッシュレス決済の推進、電子図書館、市民サービスの向上と、ここまで包括的な契約は(他の自治体とは)まだやっていない。楽天グループとして、範囲もそうだが、深さという意味においてもしっかりと進めていかなければならない」と意気込みを語った。
また、「AIやIOT、ブロックチェーンが進化し、世の中がこれから10年、15年で大きく変わっていく。未来型都市のモデルケースを市長や神戸市の皆さんとともに、先駆的に作れたら」と話し、市内でのキャッシュレス化実験などに意欲を示した。