2010年12月3日8:00
「注目のペイメントビジネス」~楽天銀行(1)
Visaブランドのデビットカードをいち早く発行
全面有料化で優良会員に特化した展開を目指す
ブランドデビット(関連記事)はペイメントカードの国際ブランドが運営するインフラをそのまま利用できるシステムである。端末、与信システムなど、既存の国際ブランドのインフラがそのまま利用できる、カード発行時は、原則として審査・与信がなく、クレジットカードを持てない若年層、高齢者なども所有できるといったメリットがある。今回はVisaブランドが付帯されたデビットカードを国内でいち早く発行した楽天銀行に話を聞いた。
ポイントの還元率を下げる代わりに
ロイヤルティプログラムを導入
国際ブランドのVisaが付帯されたデビットカードを発行する楽天銀行。同行では現在、年会費1,000円の楽天銀行デビットカード(旧クラシックプレミアム)、年会費3,000円の「ゴールドカード」の2種類を発行している。
2007年の発行当時は「イーバンクマネーカード」の名称で展開。ネットだけではなくリアル加盟店での利用シーンを増やす足がかかりとして会員獲得を図った。
当時は年会費無料の「イーバンクマネーカード(クラシック)」、年会費1,000円の「クラシックプレミアム」(2008年から追加)、年会費3,000円の「ゴールド」の3種類を発行。クラシックは年会費無料で誰でも持つことができたことから、開始10カ月で100万人の会員を突破。多くの利用者を獲得した。
「イーバンクマネーカードを発行していた当初は、審査のないVisaカードとしての特性を活かし、原則すべての人にお配りしていました。また、デビットカードを目的に口座開設される方も増え、すぐに100万枚を突破するなど会員数は急拡大しました。ただし、その一方で発行枚数の増加に伴い、国内の決済環境の問題が看過できない状態になりました。また、デビットカードを必要としない方にお配りしても、収益に貢献するまでには時間がかかるという実情から、商品性の改定を図りました」(楽天銀行 営業推進部 カードチーム リーダー 加藤 総氏)
同行では2010年3月末でイーバンクマネーカード(クラシック)のVisaデビット機能の利用を中止。現在は楽天銀行デビットカードとしてゴールドカード(年会費3,000円)と一般カード(年会費1,000円)のみ発行している。また、7月からポイントプログラムも独自のポイント制度から、グループ共通の「楽天スーパーポイント」が貯まる形に変更した。還元率についてはゴールドカードが100円で1ポイントから1,000円で5ポイント、クラシックプレミアムが200円で1ポイントだったのを1,000円で2ポイントに制度改訂している。
「結果的に無料カード廃止とポイントの還元率を下げましたが、その一方で、当行には『楽天ハッピープログラム』というロイヤリティプログラムがあり、カードを利用することで会員ステージが上がり、手厚い金融サービスを受けられるように変更しています」(加藤氏)
ゴールド会員の人数や決済金額はそれほど減らず
1人あたりの稼働率や平均単価も大幅に増加
同行では2009年12月に改定の告知を実施。2010年5月に旧カードを完全に廃止し、「楽天銀行ゴールドカード」と「プレミアム」の2種類に切り替えた。制度改訂前には、会員数のシミュレーションを実施したが、ほぼ想定した通りの会員数になったという。特に収穫だったのは同行にとってもっとも収益性の高い、ゴールド会員の人数がそれほど減らなかったことだ。
結果的に、カードの発行枚数自体は大幅に減ったが、「新規入会者数は大きく変わらず、むしろ最近では、月を追うごとに増加を続けています。このことから、私はブランドデビットのニーズや底力は必ずあると信じています」と加藤氏は語気を強める。会員制度が完全に切り替わった後は有料会員のみとなったため、1人あたりの稼働率や平均単価も大幅に増えているそうだ。
「少し前の話しですが、あるカード会社がメインカード(1番利用するカード)の月間利用金額は3万6,000円という数字を発表されましたが、ゴールドカード平均利用金額は、このメインカードの水準を大きく上回っています」(加藤氏)
また、同行にとって驚きだったのは、既存会員がポイントシステム改定後も利用する金額はそれほど変わらなかったことだ。加藤氏はその理由として、「あくまでもポイントは理由の1つでしかなく、即時決済というデビットカードの商品性そのものにメリット感じていただいているからではないでしょうか」と説明する。