2011年6月24日7:30
月刊「アイ・エム・プレス」Vol.182 アジアで輝け!日本の小売り・サービス業
アジアで輝け! 日本の小売・サービス業
提供価値を堅持しつつ“現地の流儀”を取り入れる柔軟さが成功につながる
昨今、小売・サービス業のアジア進出の動きが目立っている。国内景気が停滞する中で、経済発展が進むアジアに注目が集まるのは当然であろう。しかし、アジアでの成功は日本での成功ストーリーをなぞるだけで達成できるものではない。小売・サービス業がアジアで成功するための条件を探った。
経済発展を遂げるアジア市場への関心の高まり
生活に密着する小売・サービス業の海外進出においては、製造業などよりも一層、現地の生活者に受け入れられることが重要となる。その中で求められるのは、提供するベネフィットの中核的要素は堅持しつつ、それ以外については柔軟にローカライズを行い、現地になじもうとする姿勢であろう。
近年、小売・サービス業におけるアジア進出の動きが活発化している。景気が停滞し、また少子化の影響から人口減少局面に入り、これが継続することが確実視されている国内市場に対して、国や地域により差はあるものの、総じて経済発展が続いているアジア市場に関心が集まるのは当然のことであろう。アジアはもはや工業製品の製造を担う「世界の工場」としてだけでなく、「将来性の高い有望マーケット」として注目されるエリアなのである。
また、インターネットの普及によって情報流通のスピードが増し、さらに、格安航空会社(LCC)の増加などで、物理的な移動に対する障壁が低くなっていることも見逃せない。例えば、韓国のいわゆるK-POPアーティストが日本で活動して大人気となる一方で、日本のアイドルグループが韓国や台湾、香港、タイなどで高い人気を獲得するなど、すでに一部の分野では、アジアは“ひとつのマーケット”になっているのだ。
特に小売・サービス業においては、きめ細かい品質管理、システマティックなオペレーション、ホスピタリティの徹底など、さまざまな部分で日本はアジア各国と比べて一日の長がある。そこで、日本が明治以来、特に工業生産の分野で、欧米先進国のやり方を学び、模倣し、さらに自国にフィットするようにアレンジすることによって発展してきたのと同じように、アジア各国では近年、小売・サービス業において“日本式”を取り入れることで発展を目指そうという動きもある。従って、小売・サービス業のアジア進出は、日本の企業と進出先となるアジア各国の双方にメリットをもたらすことのできる取り組みであるとも言えよう。
しかし、これまでの例を見ると、日本の小売・サービス業のアジア進出は、必ずしも成功しているわけではなく、現地の生活者に受け入れられず、数年で撤退に追い込まれたケースも珍しくない。また、進出国の法規制の変化などにより、店舗運営が困難になったケースも散見される。小売・サービス業のアジア進出においては、確立された成功へのステップは存在しないのが実情なのだ。
そこで今回の特集では、アジア展開に積極的に取り組む企業のケーススタディなどを通じて、日本の小売・サービス業がアジアで成功するための条件を探った。