2012年2月28日8:00
目指せ!“感動”コールセンター
コールセンターが顧客起点マーケティング実現の牽引役に
従来、コールセンターにおいては、いかに正確で迅速な対応を効率的に行うかが大きなテーマであった。しかし昨今、多くの企業で顧客起点経営が志向されつつある中で、顧客とのコンタクトポイントとして年々その役割が増大するコールセンターには、コミュニケーションの質のさらなる向上が求められている。今回の特集では、顧客の“感動”を誘うコールセンターのあり方を探った。
コールセンターはお客さまに
“感動”や“驚き”を与える存在になり得るか
お客さまの“感動”を誘うコー ルセンターを実現するのは容易 なことではないが、適切な教育、 モチベーションの維持・向上、 現場への権限移譲など、必要な 要件を満たせば、決して不可能 なことではない。その実現に よって、コールセンターが顧客 起点マーケティングの牽引役と なることも期待されよう。
お客さまが求めている商品が自社になければ、競合 であろうとも連絡先を教える。お客さまが夜中に滞在 先のホテルにピザを宅配してくれるお店の電話番号を 聞いてくれば喜んで答える…。
これは近年注目を集めている米国の靴のインター ネット通販事業者・ザッポスのコールセンターに関す るエピソードである。自らを「たまたま靴の販売から スタートした“サービスカンパニー”」と位置付ける 同社では、コールセンターにおいても一人ひとりのお 客さまのニーズを徹底的に充たす“コンシェルジュ” 的な対応を実践しているのだ。
もちろん、コールセンターは企業の一部署であり、 その取り組みに採算性が求められるのは当然のこと だ。これまで多くのコールセンターは、さまざまな定 量的指標を用いることで、それぞれの目的に応じた最 適化を図りながら、品質と生産性の両立を目指してき た。その観点から見ると、ザッポスのコールセンター の姿勢には、採算性、ひいては企業収益への貢献度と いう部分で疑問を持つ向きもあるだろう。
しかし、昨今、生活者ニーズの多様化・複雑化が進 展したことを受け、多くの企業で「顧客起点経営」へ の取り組みが定着している中で、お客さまとの数少な い直接的なコンタクトポイントであるコールセンターの 役割は年々拡大している。単にお客さまからの注文や 問い合わせ、苦情などに対応するだけでなく、お客さ まの期待を超えるサービスを提供することによって“感 動”や“驚き”を与え、ロイヤルティを高めて、自社のファ ンにしていくことが求められているのだ。その意味で、 お客さま一人ひとりの“コンシェルジュ”的な役割を 果たすザッポスのコールセンターは、確かにお客さま に“感動”や“驚き”を与え得るコールセンターである。
もちろん、コールセンターの将来像を考える上で、 ザッポスのコールセンターが絶対的な正解というわけ ではない。しかし、コールセンターが従来からの正確 性や迅速性という枠を超えて、より質の高いコミュニ ケーションを目指すべき段階に入っていることは明ら かだ。今回の特集では、コミュニケーションの質の向 上に積極的に取り組むコールセンターのケーススタ ディを中心に、お客さまの“感動”を誘うコールセン ターのあり方を探った。