2013年4月26日8:05
CRMサイクル構築に向けて 進化するO2O戦略
総 論:“出会い”を“つながり”に変えていく 戦略的な施策設計が成功のカギ
O2Oというと、とにかく来店してもらうことに主眼が置かれがちだが、マーケティング上のステップとして考えた場合、それだけでは不十分だ。その後、お客さまとの関係性をいかに深めていくかを織り込んだ戦略的な設計の下、最適な“出会い”を演出することが重要なのである。
リアル店舗への集客が難しい時代に注目される施策
昨今、O2O(Online to Offline)施策に注目が集まっている。
元来、店舗小売業およびサービス業のプロモーション施策の第一段階は来店促進であり、伝統的なプロモーション媒体である新聞折込チラシ、ポスティング・チラシ、TVCMなどにおいても、生活者をいかに店舗まで呼び込むかが最大のテーマとなっている。その意味で、オンライン(=インターネット)の活用においても、来店促進が主目的となるのはいわば当然の流れだが、特に最近、その動きに拍車が掛かっている。
その理由として、リアル店舗への集客が難しくなっていることが挙げられる。
最近ではやや明るい兆しが見えつつあるものの、長引く不況は生活者の購買行動を慎重にさせ、「不要なモノはなるべく買わない=不要な買い物には出掛けない」といったスタイルが広く一般化している。また、新聞宅配率が低下したことにより、新聞折込チラシのリーチ率が低下し、加えて都市部のマンションではセキュリティの関係からポスティングを実施することも難しくなるなど、伝統的なプロモーション媒体の効果・効率が低下している。
さらに昨今では、Eコマースが活発化し、特に物販の分野では、インターネット上で手に入らないものはないと言ってもよい。そうした環境下でリアル店舗とEC店舗はボーダレスな競合を繰り広げており、店舗をショールーム代わりに活用する“ショールーミング”という現象も取り沙汰されている。デフレ下で“価格”が最大の差別化ポイントとなる中、リアル店舗で商品の実物を確認した上で、最安値で販売しているEC店舗で購買する生活者も少なくないのが実情なのだ。
このような状況の打開策として注目を集めているのがO2O施策である。
ただし、最近ではO2Oを単なる来店促進施策としてだけではなく、より幅広い目的を包含するマーケティング施策としてとらえる考え方も広まりつつある。
来店促進のみを目的とするO2Oを“狭義”のO2Oとすると、新しい考え方である“広義”のO2Oは、オンラインからオフラインという一方向の流れだけでなく、オフラインからオンラインという流れも包含。さらにはこれらをシームレスに連携させつつコミュニケーションを継続しようとする、いわばCRMサイクルの構築を目指すO2O施策であるということができるだろう。
今回の特集ではO2O施策に積極的に取り組む企業のケーススタディを中心に、将来的なO2O戦略のあり方を探った。