2020年10月30日13:19
NTTデータは、世界的な移動通信関連の業界団体GSMAから委託を受け、英国のコンサルティング会社Accourtと共同でQRコード決済のグローバルトレンドについて2020年4月より調査を実施し、“QR Code Merchant Payments: A growth opportunity for mobile money providers”を公表した。
同レポートは、QRコード決済についての包括的な考察を示し、QRコード決済のエコシステムを築きたい、もしくは拡大させたいというモバイルマネー事業者にとって有益な情報を提供することを目指したという。同レポートでは、QRコードをめぐる各国のトレンド、QRコードのカテゴリー、QRコードのインターオペラビリティー(相互運用性)などについて重要な視点を明らかにした。
同調査では、世界のQRコード決済事業者(移動体通信事業者・Fintech事業者)/中央銀行/業界団体/クレジットカードブランドといった重要アクターへのインタビューによる質的調査を実施。また各種データの分析に加え、世界の主要なQRコードサービス(Alipay、WeChat Pay、EMV、JPQR、Bharat QR、HKQR、SGQR、QRIS、Prompt Pay、Mercado Pago、Pix)の比較調査を実施した。
その結果、モバイルマネー事業者は、QRコード商業決済(QR code merchant payment)の潮流を、自社サービスを成長させる好機と捉えているそうだ。
2020年には、世界のデジタル決済市場は年間トランザクション4.4兆USドルに達し、2024年まで年平均17%の成長を見せると予想される。また、QRコード決済は、クレジットカードといった老舗の決済手段と競合しながら、地域的に偏りつつも、大きく成長を続けている。
さらに、QRコード決済のスキームは世界中に存在するが、中国の2大事業者AlipayとWechat Payが突出して成功しているという。両社の決済サービスは、大躍進を遂げた自社のEコマースとソーシャルメディアプラットフォームをマネタイズ化するための副産物として進化したものであり、決済サービスそれ自体を目的として、単体で生み出されたものではないとした。この2つのエコシステムは、もともと高い顧客エンゲージメントを有していた。例えば、Alibabaグループのエコシステムにおいて、2つ以上の商品・サービスを定期的に利用している顧客は6.4億人。5つ以上の商品・サービスを定期的に利用している人は1.9億人いるという。
重要ポイントとして、アフリカなどの地域ではQRコード決済に対応していないフィーチャーフォンが主流となっているが、APAC諸国ではQRコード決済に対応可能なスマートフォンが主流となる。高い顧客エンゲージメントを生み出す商品やサービス、そのコアとなるエコシステムを築くことが重要だとしている(ペイメントはエコシステムを支えるものであり、ペイメントそれ自体はエコシステムではない)。
QRコード決済の普及には、手頃な価格のデバイス、インターネットへの接続性、銀行・ウォレット口座の普及および商業者への展開などが重要となっている。
インターオペラビリティー(相互運用性)の重要性は、サービス展開の初期段階ではあまり意識されないことが多い。まずは国内取引におけるインターオペラビリティーが優先される。しかし、事業者がQRコード決済のエコシステムを、国境を越えて広げていくためには、インターオペラビリティーを確保することが重要となってくる。
顧客がエコシステムへのエンゲージメント(関わり)を高めたいと思うようにする必要があるが、全てのエコシステムにおいて、顧客への教育と信頼構築が重要になるそうだ。
また、QRコード決済の普及には、地域ごとに全く異なるアプローチが必要となる(例えば、地域ごとにスマートフォン普及率とインターネット接続性は異なる)。政府・行政のアプローチと介入のレベルは地域によって異なる。例えば、今は状況が変わってきているが、過去アフリカと中国では政府はあまり介入していなかった。一方で、東南アジアやインドでは、初期段階から、政府が積極的に介入している。
QRコード決済は、。例えば信用情報や、顧客・商業者のマイクロファイナンスなど、他の商品やサービスをサポートする中でとれたデータから価値を生み出すそうだ。
NTTデータでは、調査の結果、QRコード決済は、モバイルマネー事業者にとって複雑かつ重大な好機であり、慎重に戦略を立てる必要があるといえるとした。QRコード決済において顧客を一貫してサポートしていき、顧客登録者数を増やし、トランザクションを生み、収益を上げていくためには、インターオペラビリティーが特に重要になってくることが調査で明らかとなったそうだ。