2021年3月9日7:15
NTTデータが決済代行サービスに参入する。日本を代表する国内最大級のキャッシュレス決済総合プラットフォーム「CAFIS」を活用し、決済を軸にした顧客企業・店舗のデジタル化を後押しする。グループ傘下のペイジェントとの統合を本格的に進めこれまでチャネル軸で展開していた決済サービスを顧客軸に再編成し、EC、リアルで決済基盤を融合する計画だ。
顧客のビジネス変化に貢献
NTTデータITサービス・ペイメント事業本部カード&ペイメント事業部 課長代理 福島真季氏は「国内最大級のトランザクション数を誇るCAFISは、月間9億件のトランザクションを処理しています。これらのトランザクションの傾向を分析し、お客様の機会損失の防止等に貢献し、シームレスな購買体験の構築に貢献していきたいです」と話す。
世界はより不確実になっているが、そんな中でもデジタルを駆使しながら、ビジネスを創造していかなければいけないのがリテール経営の現状だ。
そもそも、コロナ禍の以前から、店舗を取り巻く市場動向は大きく変化していた。買い物を行う場所としては、リアル店舗での買い物とECの二種類があり、ECは年10%で増えている。その背景として、国内のキャッシュレスの浸透がある。キャッシュレス比率は、2020年に30%弱、25年に40%弱に到達する見込みだ。
それが、コロナ禍によって変革のスピードが上がっている。コロナ禍におけるキャッシュレスの動向についてみると、1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月と5月には利用額は落ち込んだものの、キャッシュレス動向増加のトレンドは変わっておらず、19年並みに回復する傾向にある。
コロナ禍により、ECの需要が伸びるとともに、EC、リアルの双方で同じ購買体験が得られるニーズが加速度的に増加している。大手コーヒーチェーンの事例では、4人に1人がスマートフォンアプリからコーヒーなどを注文するようになり、客単価も上がっているという。
ITとビジネスの関係性も変わってきており、ITは業務効率のツールではなく、タイムリーに市場や環境に適応しながら、ビジネスをつくる役割になってきている。福島氏は「ITとビジネスの関係は相補的であり、お互いがお互いの存在のきっかけを与えています。
Society5.0は創造社会であり、デジタル革新と多様な人々の想像力(創造力)を掛け合わせ、課題を解決し、価値を創造していく必要があります。NTTデータは顧客とともにビジネスをつくる存在に変わる必要があると認識しています」と説明する。
ECが提供する消費者メリットは、「スムーズな購買体験」「時間的・場所的な制約がない」「すぐ買える」「買いたいものやおすすめがわかる」「在庫有無がわかる」などがある。一方で、リアル店舗にも「消費者を補足しやすい(5W1H)」「購買までの導線が追える」「各種管理がしやすい」など販売促進につなげやすいメリットがある。
ECが増えても、リアル店舗が顧客に届けるべき価値や役割の重要性は変わることがない。リアル店舗の良さとECの良さを伸ばし、それぞれの欠点を改善し、双方をシームレスにつなぐ新たなカスタマージャーニーを実現することがリテール経営に求められている。大切なポイントは、リアル店舗の決済の時に生じてしまう「分断」を取り除き、消費者が自分本位で買い物を楽しめる環境をつくることだ。
そうした動きはすでに始まっている。リアル店舗での接客も、商品の注文や決済をはじめ、デジタル化が進む可能性を示している。リアル店舗では、購買プロセスの短縮やキャッシュレス化が進んでいるほか、検索して来店し、商品を比較検討し、レジ待ちして支払い、商品を持ち帰るという一連の消費者行動の中で、BOPIS(バイ・オンライン・ピックアップ・ストア)の傾向が強まる可能性も指摘されている。その時には、「支払いは、どこでも、どのタイミングでもできる」ことが重要になる。
コロナ禍が招いた「ニューノーマル」の消費行動の中で、消費者を満足させるためには、「3密を避けるなどの顧客への対応スピード」「新しい決済サービスの実現などのビジネススピード」「新しい仕組みをスムーズに使いこなすオペレーションスピード」の3つが大きな柱となる。
EX、CXの向上に貢献し、
顧客のデジタル化を後押しする
「デジタル化の本質とは、不要なやり取りの短縮やフィジカルな世界のギャップを埋めることである」と福島氏は語る。EX(従業員満足)を向上させ、従業員との関係を進化させる一方で、CX(顧客満足)を向上させて、消費者との関係を進化させることが、企業が持続的な成長を加速するカギになる。EXとCXの向上を両輪で回し、事象分析・将来予測や他社との連携を進めるという好循環を生み出せるかが大事だ。
決済代行サービスに乗り出すNTTデータにとっては、デジタル化における決済の位置づけは重要だ。購買体験がデジタル化する中で、決済に求められるものは、「購買体験の邪魔をせず、底上げし、消費者の機会逸失をなくすことだ」と福島氏は言う。つまり、決済は、消費者の都合の良いタイミングでできて、不正取引やエラーが極力発生しないようにすることが求められる。
NTTデータが考えるお客様のデジタル化の全体像を考える時、消費者を取り巻く環境の変化をしっかりと捉える必要がある。消費者の接点がデジタルに変化し、コロナ禍によるニューノーマルな行動が浸透し、支払い手段の乱立などが環境変化の大きな要因だ。この中で、消費者のニーズは「シームレス」「どこでも」「接触を避けた購買体験」「自分の都合に合わせたサービスの享受」などへと移行している。
一方の加盟店側は、フロント部分ではオムニチャネル対応を可能にする接続インターフェースや顧客認識の手段が重要。
さらに、決済をシームレスにする後押しをしながらもマルチチャネルでの不正防止などの課題に直面する。
また、バックオフィス業務の膨大化、複雑化等にも対応しなければいけない。NTTデータは、これまで取り組んできたフロントのゲートウェイソリューションの提供だけではなく、店舗経営のバックヤードの業務のデジタル化にも貢献する必要性を捉え、決済代行サービスへの参入を決意した。
お客様に寄り添い、
継続的な価値提供を目指す
福島氏は「従来のよくあるサービスは、サービス提供後の改良頻度は高くなく、ビジネス環境が変化すると、期待値と乖離していくケースが多かったのではないか。NTTデータが目指すのは、市場変化に合わせて、むしろ先読みをしながら改良を重ねるサービス。バージョンアップや新たなコンテンツを継続的かつスピーディーに提供し、ビジネス価値を向上し続ける姿勢を重視します。私たちは、サービスを提供し、それらがお客様の中でどのように使われているかをウォッチし、お客様からの改善要望等のフィードバックを深ぼっていきます。さらに、市場変化に合わせた企画要素を加え、バージョンアップを繰り返す好循環を、回していく。こういった姿勢で価値を提供し続け、多くのお客様の決済ビジネスをささえていきながら、シェア拡大を狙いたい」と決意を述べた。
■お問い合わせ先
株式会社NTT データ
IT サービス・ペイメント事業本部
カード&ペイメント事業部
〒108-0073 東京都港区三田3-10-1
アーバンネット三田ビル4F
URL:https://solution.cafis.jp/contact/