2021年3月19日8:00
市場ニーズに応え9種のQRコード決済手段を導入、利便性を高める
伊藤園では2009年より、交通系電子マネー決済自動販売機を展開し、現在では全国にキャッシュレス決済が可能な自動販売機を2万台設置している。2018年にVisaのタッチ決済に対応する自動販売機の導入を決定したのを皮切りに、Alipay決済対応自動販売機も開始、現在ではPayPay、楽天ペイ(アプリ決済)、d払いなどにも対応する機種を展開しており、合計で9種類のQRコード決済に対応している。まだまだ現金決済が多いというものの、キャッシュレス決済比率は確実に向上。特にこの1年は、QRコード決済の増加が著しい。
ここ1年間でQRコード決済が急拡大
目標はキャッシュレス決済比率40%
伊藤園は、2018年より、QRコードによるキャッシュレス決済が可能なカードリーダ付き自動販売機の設置を進めてきた。2020年の東京オリンピック開催に向けた、欧米およびアジアからのインバウンド需要拡大を見据え、まずVisaのタッチ決済に対応する機種を導入し、これに続いてとAlipay決済対応自動販売機を同年11月より設置開始。2019年10月からは順次、楽天ペイ(アプリ決済)、LINE Pay、PayPay、d払い、WeChat PayといったQRコード決済に対応、2020年8月にはau PAYを追加。現在、合計9種類のキャッシュレス決済手段に対応が可能だ。同社は全国に約15万6,000台の自動販売機を設置しているが、このうち約2万台がカードリーダ付き自動販売機である。
東京オリンピックが延期になり、インバウンド需要もほぼゼロになったばかりでなく、外出自粛、テレワークの拡大で、自動販売機の売上は大きな打撃を受けている。だが、ことキャッシュレス決済にフォーカスしてみると、コロナ禍の環境にあっても着実に売上件数が伸長。非接触のニーズの高まりから交通系電子マネーに加え、特にここ1年はPayPayをはじめとするQRコード決済が大きく伸びて、キャッシュレス化をけん引。国内QRコード決済を導入する以前の4年前と比較すると、決済端末導入機におけるキャッシュレス決済比率は約3割増加している。
その結果として、従来の自動販売機と、キャッシュレス決済に対応しているカードリーダ付き自動販売機の売上動向を比較すると、このコロナ禍での売上高の落ち幅は、後者のほうが明らかに小さいことがわかっている。具体的な数値は非公表だが、伊藤園 自販機部 企画課 課長 高橋穣氏は「キャッシュレス決済導入の効果は明らかです」と断言する。
自動販売機の売上金は営業担当者が回収しているが、キャッシュレス化が進むことで、この現金回収・運搬の負荷も低減できる。
日本政府は2025年までに日本のキャッシュレス決済比率を40%に引き上げるという目標を掲げている。同社の目標も、この数字に準じた40%。
「新型コロナの蔓延という不測の事態に見舞われたため、現時点ではいつまでにという明確なゴールを定めることは難しいですが、できるところから進め、できるだけ早く目標値に近づけるよう努力していきます」(高橋氏)
キャッシュレス決済対応の自動販売機は、大都市圏や観光都市を中心に設置。高橋氏は「全台で対応することは考えていません。市場のニーズとコストのバランスを考慮しながら、適切なロケーションを選んで、増設を図っていきます」と話す。
キャッシュレス化推進の施策としては、ペイメント各社とタッグを組んで行う、ポイント付与などのインセンティブを付けた利用促進キャンペーンの展開が挙げられる。2020年にはPayPayとの協業によるキャンペーンを2回、au PAYとのキャンペーンを1回実施した。
「クリーンネス」「ウェルネス」と並び
「キャッシュレス」が自販機事業の重要な柱
同社では「キャッシュレス(非接触)」のほか、「クリーンネス(衛生)」「ウェルネス(健康)」を3本の柱に、自動販売機事業を展開している。
例えば、クリーンネス自販機は、緑茶飲料を製造した後に残った茶殻を再利用して抗菌シールを製作し、これをユーザーの手が触れる箇所に貼付した自動販売機。ウェルネス自販機は、カテキン豊富なお茶や、ビタミン豊富な野菜飲料など、健康をテーマにした品ぞろえをした自動販売機のことだ。同社が掲げる三本柱のすべてを満たす自動販売機も、すでに少なからず登場している。
伊藤園 自販機部 副部長 杉浦義典氏は「新型コロナは人々の生活環境を一変させました。すべてがコロナ以前に戻ることはたぶんないでしょう。われわれは3本の柱を軸に、これからの新しい社会に貢献するためのチャレンジを続けてまいります」と意気込みを見せた。
※カード決済&リテールサービスの強化書2021より