「スマートシティ会津若松」8年の成果と今後の行方、デジタル通貨の展開は?

2021年3月19日8:53

8割の市民が“個人情報を共有してもかまわない”と支持

東日本大震災で大きな被害を受けた福島県・会津若松市で、2013年2月に「スマートシティ会津若松」がスタートしてから8年が経過した。移動、決済、エネルギー消費などさまざまな情報をIDと紐づけて収集。これらのデータをもとに政策を決定して実行し、市民、産業、地域がともにメリットを享受する“三方良しの地域社会”を標榜する。ポータルサイトでの生活に役立つ情報の提供や、電力消費をリアルタイムで見える化したことによる省エネの実現などを通して、市民もメリットを実感しており、アンケート調査結果によると約8割が「より良いサービスを受けられるのであれば、個人情報を共有してもかまわない」と回答。会津若松市はこれまでのスマートシティ運営の経験を踏まえ、スーパーシティ特区申請を行う予定であり、この計画に手数料ゼロ・即時現金化可能なデジタル地域通貨を盛り込む意向だ。

アクセンチュアイノベーションセンター福島 センター共同統括 マネジング・ディレクター 中村彰二朗氏。2021年2月17日行われた記者向けの説明会より

日本の福島・会津から機能分散モデルを広く世界に発信

アクセンチュアは、東日本大震災直後の2011年7月、福島県・会津若松市、会津大学と連携し、復興プロジェクトを立ち上げた。同12月には「デジタル」「オープン」「市民中心」を柱に据えた、会津創生8策を発表。2013年2月には「スマートシティ会津若松」を立ち上げている。

福島県会津地方の面積は、千葉県よりやや広い。人口約12万人の会津若松市を含め、17市町村に、合わせて約28万人が暮らしている。広大な土地に集落地が点在しており、病院や大学などの大きな施設は会津若松市に集中しているといった状況。デジタルのネットワークをつなぐことによって、特に山間部などに居住している住民にとってはメリットが大きいと考えられ、「デジタルの実証実験に向いている立地」とアクセンチュアイノベーションセンター福島 センター共同統括 マネジング・ディレクター 中村彰二朗氏は指摘する。

この実証実験が目指すゴールのひとつは、機能分散社会モデルを確立し、福島から日本全国、さらには世界に発信していくことだ。2019年4月には会津若松市の中心部にオフィスビル、スマートシティAiCT(アイクト)が竣工、国内外の大企業やIT企業、32社400名が入居し、本社機能の一部を稼働させている。入室希望者が絶えないため、廃校した学校や古民家などを利用して2号館、3号館をオープンさせることも検討中という。

 

日本のデジタル化が進まないのは提供側にも問題?

日本が抱える根源的な課題は、超少子高齢化。これにより、消費の減少、生産性の低下、医療費の拡大などさまざまな問題が噴出している。これらの課題を解決するために必要なのがデジタルツールであり、スマートシティの実現だ。アクセンチュアではデジタル化による地域自立8策を掲げているが、中でも重要視しているのが、データに基づく政策決定への移行。ビッグデータの有効活用により地域、産業の的確な判断を促し、地域、産業、そして市民の三者がともにメリットを享受できる“三方良しの地域社会”の実現を標榜する。判断の根拠となったデータを市民と共有することで、市民が自ら積極的に行動を変容させることも期待する。実際に、電力消費量をリアルタイムで見える化することによって27%の省電力化につながった例もある。

2020年時点の会津若松市民のスマートシティ認知度は95%。市民ポータルサイトの年間ユニークユーザー数は市の人口12万人を上回る14万人だった。スマートシティは、市民のID登録と、移動、決済、エネルギー消費などさまざまな行動データの提供があってはじめて成立する。「スマートシティ会津若松」では市民が前もって自分のデータを提供することに同意する“オプトイン”モデルを採用。特に日本人は個人情報の提供にナーバスだと言われるが、「スマートシティ会津若松」では今のところ問題が持ち上がっていないどころか、市民の反応は良好だ。

2019年秋にアクセンチュアが実施した調査によると、「パーソナライズされたより良いサービスを受けられるのであれば、個人情報を行政等と共有してもかまわないか」という問いに、79%が「YES」と回答。これについて中村氏は、「ひとつは“より良いサービス”というところがポイント。ユーザーにとってあまり必要のないサービスを提供しても、利用率は上がりません。日本のデジタル化が遅れているのは、決して日本人がデジタルに疎いからではなく、サービス提供側の問題が大きいのではないかと思います」と指摘。さらに、「“行政等と共有”というところがもうひとつのポイント。『スマートシティ会津若松』も、一企業であるアクセンチュアが情報提供を求めたら、成功していなかったかもしれません」(中村氏)。

「スマートシティ会津若松」ではプロジェクト推進体制として、産官共同の会津地域スマートシティ推進協議会を設立して事業内容を協議。データの収集・保管を担うのは産官学が集って設置した一般社団法人スマートシティ会津という建て付けになっている。

スーパーシティで実現する手数料ゼロ・当日現金化の地域デジタル通貨とは?

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