2021年10月18日8:30
KDDI、JR四国、徳島バス、全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)、一般社団法人イーストとくしま観光推進機構、公益財団法人徳島経済研究所は、2021年10月15日~2022年1月31日まで、スマートフォン1つで鳴門公園周辺エリアを周遊できる観光地づくりを促進する観光型MaaSの実証実験を実施する。徳島県は鉄道やバス等での非現金化が遅れているが、鉄道の改札、バス、施設にはNFCタグ等がついたプレートを設置。利用者はスマートフォンをプレートにタッチすることで、交通や観光をシームレスに、現金不要で楽しむ世界を目指す。
2004年から変わらない鳴門の観光における課題
徳島県鳴門市は、鳴門海峡の渦潮や大塚国際美術館などがあり、数多くの観光客が訪れるが、課題として「観光地へのアクセスが悪い」「公共交通の接続が悪い」「バスの便が少ない」といった点が挙げられる。これは、「2004年から変わらない課題」だと鳴門観光興業株式会社 常務取締役 森下麻実子氏は話す。現状、多くの観光客が自動車やレンタカーを使って鳴門地域での観光を楽しんでいるそうだ。
新たに開始した「くるくるなるとデジタル周遊チケット」は、7団体が協働で鳴門観光の課題解決を目指した取り組みだ。同実証実験は、観光庁令和2年度3次補正予算事業「既存観光拠点の再生・高付加価値化推進事業」の認定を受け、2,000万円の予算で行われている。
KDDI 理事 経営戦略本部 副本部長 宇佐見 典正氏は、「くるくるなるとデジタル周遊チケット」の特徴として「アプリ不要」「現金支払い不要」「アカウント不要」の3つの特徴を挙げた。利用者は専用アプリをダウンロードすることなく、スマホをかざすだけでサービスを受けられる。また、初回に決済方法を設定すれば、現地において、毎回の支払い操作は不要だ。さらに、個人情報の入力や会員登録は不要で利用できる。
実証実験では、利用者がスマートフォンで購入や利用ができる「JR徳島バス フリーパス」「なると観光チケット」「バス スマホタッチ決済」の3つの取り組みを行う。
「JR徳島バス フリーパス」は、実証実験の期間中、JR四国線「徳島駅~鳴門駅」間の普通列車と徳島バス・徳島市バスの路線バスが、利用可能区間で乗り放題となるデジタルフリーパスだ。「なると観光チケット」は、うずしお汽船、うずしお観潮船、大鳴門橋遊歩道 渦の道、大鳴門橋架橋記念館 エディ、エスカヒル鳴門、門前一番街、大塚国際美術館、鳴門天然温泉あらたえの湯、鳴門市ドイツ館、鳴門市賀川豊彦記念館、アオアヲ ナルト リゾートの11施設のチケットをスマホ上で発売し、周遊を促進させる(エスカヒル鳴門は12月開始予定)。「バス スマホタッチ決済」は、高精度位置情報を活用したバスの距離別運賃を精算する実証実験となっている。
交通分野でのキャッシュレス決済導入の選択肢として期待
JR四国 常務取締役 鉄道事業本部長 長戸正二氏によると、地元の交通機関である同社と徳島バスでは、四国において最適で持続可能な公共交通ネットワークを追求しているという。例えば、両社は協力して、牟岐線に並行する阿南~阿波海南・甲浦間の高速バス停留所において途中下車が可能な取り組みを実施。また、牟岐線(阿南~牟岐間)の4駅を対象に、鉄道バスの発車時刻表を一緒にした「共通時刻表」を掲示している。徳島バスでは、今回の実証実験がJR四国との運賃連携の足掛かりになるとした。また、徳島バス 取締役社長 金原克也氏は「徳島県は全国で唯一、車内でICカードが利用できないので、新しい取り組みとしてキャッシュレス決済導入の選択肢になると期待しています」と話す。
さらに、ANAでは、徳島阿波おどり空港を発着する航空券を保有する人が、ANAアプリ/ANA Webサイト上の「空港アクセスナビ」を開いた時、条件選択画面および検索結果画面に表示されたリンクから「くるくるなるとデジタル周遊チケット」にアクセスし、各種チケットを購入できる取り組みを行う。
観光施設ではNFC等で購入済みのチケットを呼び出して利用
今回の実証実験では、事前に決済方法を登録し、NFCタグ(もしくはQRコード)にスマートフォンをかざして交通や観光をシームレスに利用できる仕組みを開発した。NFCタグはアクアビットスパイラルズのスマートプレートを設置。また、決済システムは、同社の「PayChoiice(ペイチョイス)」を利用している。
「JR・徳島バス フリーパス」と「なると観光チケット」では、Apple Pay、Google Pay、クレジットカード、デビットカード、各種プリペイドカードを使用して支払いが可能だ。利用者は購入したいチケットを選択し、券種・人数・利用日を指定する。初回登録時は、スマホに登録済みのアカウントでサインインし、支払いが可能だ。「JR・徳島バス フリーパス」では、駅にあるプレートにスマートフォンをかざし、表示されたチケットを駅員や乗務員に提示して乗車・下車が可能だ。また、バスでは、乗車、降車時にそれぞれ、プレートにスマートフォンをかざし、不正防止のためバスの乗務員がチケットを確認して下車できる。
「なると観光チケット」では、入場口にスマートフォンをかざして、購入済みのチケットを表示し、係員に見せることで利用可能だ。エスカヒル鳴門では、プレートにスマートフォンをかざすとQRコードが表示されるが、それをゲートにかざして入場できる予定だ。
高精度なGNSS測位で運賃を自動精算
将来はコスト負担を抑えて変動運賃を導入可能に?
徳島バスの鳴門郵便局前バス停から鳴門公園バス停までの区間で実施する「バス スマホタッチ支払い」は、日本で初めて、高精度位置情報でバス運賃を自動計算する仕組みを採用した。現在、徳島県内の距離区間制を採用するバスでは、整理券方式による支払いは現金および回数券を利用している。「Suica」や「ICOCA」のような交通系電子マネーも利用できない。
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