2021年11月27日8:47
カードビジネスに古くから携わってきた、カード戦略研究所 中村敬一氏の連載。今回は、マイナンバーカードのさらなる普及についての見解を述べてもらった。
政府がとるべきさらなる対策
コロナ騒動の影響もあり、漸くマイナンバーカードも40%台の普及率に達した。次に目指すべき比率は60%台であると筆者は考えている。二人集まれば必ず一人は保有している状態である。
自公政権は公式にマイナンバーカード普及にこれまでの保有者、また新たな保有者に向けて、最大2万ポイントを付与することを決めた。具体的には
- 新たにマイナンバーカードを取得した人に最大5,000円相当。
- 健康保険証としてマイナンバーカードに登録した人に7,500円相当
- 預貯金などの口座を登録したい人には7,500円相当
のポイントを付与することを決めた。すでに健康保険証としての登録は始まっており、パソコンではカードリーダーが必要で、スマートフォンからも直接申し込みができる。さらにセブンイレブンのATMでも申し込みができるようになっている。
詳細はマイナポータルサイトを参照されたいが、「簡単に申し込みができます」とあり、そのつもりで、手続きを始めると「簡単に」というほど簡単ではないことがわかる。特に医療機関に罹ることの多い高齢者にとっては「難儀」の何ものでもない。できればサポート専門のスタッフを暫くは増加して、落ちこぼれのないように強化すべきであろう。
預貯金口座や、今後連携が予想される公共サービスの登録を考える上でも、当面はリアルでのサポート機能の質的、量的充実は不可欠な課題である。
ただしポイント付与というプレミアム展開による普及戦術は、いつまでも評価を得られる戦術ではない。普及の2大要素であるカード保有者の数と、カード利用インフラの受け入れ整備が両立して、初めて国民生活に定着する。
一定の普及率に達すると、プレミアムという「お得感」という価値だけでは、国民の意識に偏った認識が生まれてしまう。そのためにも行政サービスの中でもキラーアプリなるものを提供できる環境を早急に整えていかなくてはならない。
新たな行政サービスの検討
なぜ60%達成にこだわるのかと言えば、60%もの国民がマイナンバーカードを持つようになれば、単なるプレミアム感だけで納得するであろうか。この時点になると、本来の行政サービスの提供に関して、より強い要望が、逆に言えば「新たな行政サービス」がなければ、いつまでたってもデジタル社会へのパスポートになりきれないのではないか。
行政側としては、様々な分野との連携も想定しているが、一方で「個人情報を国家が管理するのはどうなのか」との意見に、これまでは躊躇することもあったが、コロナ禍で行政サービスを必要な時にスピード感、確実性をもって提供を受けるには、マイナンバーカード(あるいは、それに相当した)ツールが必要であることが国民側の多くに定着してきた。
その意味で、60%の保有者を基盤に、キラーアプリともいうべき行政サービスの環境を整備すべきで、その施策に入るべきである。
すでに始まっている健康保険証がそうであれば、そこをもっともっと重点的に取り組まなければならないし、預貯金口座との連携(制度)登録)を目指すなら、高齢者を想定した登録制度づくりを念頭に置く必要がある。
むろん保有者側だけではなく、受け入れ側となる医療機関やその他の関連機関での理解度が深まらなければならない。また彼らに対するメリットも明らかにしなくてはならないであろう。
一見丁寧な説明のように見えるが、これらのサービスを受けるには、事前の登録が別途必要である。その登録への手続きも一定のスキルが必要だ。
これら一連のWebサイトの説明は、どのあたりの年齢者、対象者を範囲に考えて掲載しているのだろうか。
マイナンバーカードを健康保険証として使えるとしても、保有者にとって(特に高齢者にとっても)便利なサービスは何か、あれもこれもではなくシンプルに明示することが求められる。
マイナンバーカードの新たな行政サービスの提供に向けて
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