熊本市電が路面電車国内初、Visaのタッチ決済の実証実験開始 投資負担軽減と拡張性に期待

2022年7月7日9:30

熊本市交通局は、 熊本市電において、Visaのタッチ決済による実証実験を2022年7月7日から2023年3月31日まで実施する。路面電車としては国内初のタッチ決済の導入事例となった。6日には記者向けに実証実験の概要を紹介した。

決済はVisaのタッチ決済対応カードやモバイルをリーダ「BOSS・BOM」にかざす

交通系ICカードは便利な一方、維持コスト等が負担に
決済手段の多様化とシームレス化に向けた実証実験

熊本市電の実証実験では、熊本市電の超低床車両6編成および普通車両10編成の計16編成にVisaのタッチ決済対応読取機を設置。利用者は、 降車時のワンタッチのみで決済が完了する。コロナ禍で、リモート化が進む中で、移動の質を高めるとともに、利用者のパイを増やすことが大切となるが、その目的達成に向けた実証実験となる。

熊本市 交通事業管理者 古庄修治氏

熊本市電では、西日本鉄道グループの交通系ICカード「nimoca」のシステムを導入し、相互利用する全国の交通系ICカードも含めて利用可能だ。また、熊本市のバスなどで利用できる「くまもんのICカード」のような地域ICカード、モバイル定期券、現金などが利用できる。

交通系ICカードの発行数は2021年9月に2億枚を超えており、全国でかざすだけで便利に利用可能だ。現状、熊本市電でも6割の利用者がnimocaなどの交通系ICカードとなっている。その利便性は認識しているものの、「新宿で(1日)350万人が乗り降りするような決済手段に必要なスペックと比べ、市電は多くても1日5,000人のスペックで過剰でもあります。コストパフォーマンスは我々にとって重いものです」と熊本市 交通事業管理者 古庄修治氏は語るように、維持コストなどの負担がある。今回の実証実験でVisaのタッチ決済のパフォーマンスを確かめ、決済手段の多様化とシームレス化を進めていきたいとした。

nimocaなど全国相互利用ICカードでの決済が約6割を占める

降車時のワンタッチで利用可能に
データとタッチの在り方を検証

また、熊本市電では、大人普通運賃で170円均一となるが、サイバネ規格(CJRC規格)により、乗車時と降車時にそれぞれリーダ(乗車、降車用リーダ)にタッチする仕様となっている。OD(起終点)データは利便性向上のために必要であるが、降車時のワンタッチで対応可能な仕組みを導入することで、「データとタッチの在り方を考えていきたい」と古庄氏は説明する。

現在、Visaのタッチ決済は、 日本を含む世界約200の国と地域で展開されているが、三井住友カードではVisaと協力し、国内の交通事業者に積極的に同社が開発した交通乗車向けシステム「stera transit」の導入を勧めている。今回の熊本市電への導入も三井住友カードからの働きかけだ。交通系ICカードの場合は現金からのチャージが多くあるが、「現金が減っていくと利便性向上につながります」(三井住友カード Transit事業推進部長 石塚雅敏氏)。今回の実証実験では、乗務員からの意見を収集し、今後の展開に生かしていきたいとした。世界では500の公共交通機関でVisaをはじめとするタッチ決済が導入され、国内においても約30のプロジェクトが進行中だ。海外では、普段の買い物で利用するクレジットカードやデビットカードで、そのまま鉄道で移動が可能なため、より消費者の利便性が高まっているとした。また、タッチ決済ではクレジットカード会社のポイントも付与されるメリットもある。

三井住友カード Transit事業推進部長 石塚雅敏氏

今回、小田原機器がタッチ決済端末の開発・提供を行った。同社では、一貫してバスの決済システム、運賃箱、整理券を手掛けており、タッチ決済対応の端末も複数の交通事業者に提供している。小田原機器 執行役員 営業部長 金子義浩氏によると、「運賃箱にはまるようなイメージで取り付けができ、車載端末だけで独立して動く」ことを意識して端末を開発したそうだ。熊本市電では、今回のタッチ決済端末を採用した理由として、運賃箱にはまり、乗務員から見える位置に設置できる点が大きかったという。

小田原機器 執行役員 営業部長 金子義浩氏

QRや他のICも含めた将来的な拡張性も期待
実証実験での利用者の想定は?

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