2023年3月22日8:00
継続的なキャンペーン展開により利用促進を図る
風光明媚な観光地、静岡県西伊豆町では、コロナ禍による観光客の激減などにより経済が停滞。内需を喚起するため、2020年に、電子地域通貨「サンセットコイン」の運用を開始した。加盟店に対し、決済端末となるスマホを無償貸与。また、ポイント還元などのキャンペーンを継続的に展開することによって、「サンセットコイン」の浸透を図り、2022年度の利用金額は、12月末時点で、8億3,535万8,000円を達成。今後はさらに観光客、釣り客などの利用を拡大し、2023年3月末までに13億円の利用を見込んでいる。
内需拡大策として地域通貨を導入
キャンペーン展開により利用を促進
静岡県の伊豆半島西岸に位置し、多くの観光名所を擁する西伊豆町は、2020年5月、電子地域通貨「サンセットコイン」を導入した。導入にあたって、全町民に対し、1万ユーヒ(1ユーヒ=1円)を付与したQRコード決済用カードを配布。同時期に実施した新型コロナウイルス感染症の定額給付金申請に併せて受付を開始することで、効率的に配布を進めた。
西伊豆町は風光明媚な土地柄。国内外の観光客の消費活動によって町の経済が潤っていたが、新型コロナ感染拡大の影響で観光客が激減し、経済が停滞。「サンセットコイン」は内需拡大の特効薬として期待された。
「サンセットコイン」はトラストバンクが提供する地域通貨プラットフォーム「chiica(チーカ)」の仕組みを活用。利用者はカードもしくはアプリを用いてQRコードを表示、これを店舗側がスマホで読み取り、決済する。西伊豆町では店舗用に190台のスマホを確保、無償で貸与している。
利用促進のため、西伊豆町では数々のキャンペーンを実施している。2021年4月25日から6月30日にかけては5%還元キャンペーンを、同年11月1日から12月12日までは10%還元キャンペーンを実施。2022年4月には1%還元キャンペーンを、5月から2023年3月までは10%還元キャンペーンを継続中だ。
2022年4月の1%還元キャンペーン中の利用額は、1,408万3,000円で、還元額は13万8,000円。同年5月からの10%還元キャンペーン中の利用額は、12月末時点で9億1,930万円となり、還元額は9,165万9,000円だった。
また、「健幸マイレージ事業」として、毎日の食生活や運動など、健康づくりに関する取り組みに対してポイントを付与する施策を実施。2022年度は12月末までに901件の利用があり、ポイント付与額は45万500円。そのうち利用額は42万2,956円だった。
「ツッテ西伊豆」キャンペーンでは、町内の遊漁船で釣った魚を西伊豆産地直売所「はんばた市場」で「サンセットコイン」と交換。2022年度は12月末までに166件の利用があり、ポイント付与額は52万9,247円、そのうち利用額は36万7,444円だった。
2023年5月まで受付中のマイナポイント事業では、申請者が「サンセットコイン」に2万円をチャージした場合、国からの5,000円の給付に加え、町から5,000円が給付される。
また2021年度の取り組みとして、静岡県民と山梨県民を対象に、西伊豆町に宿泊した場合、宿泊料金に応じて「サンセットコイン」をプレゼントする「富士山キャンペーン」を実施。5.000円から9,999円の場合は1,000ユーヒ、1万5,000円以上の場合は3,000ユーヒを付与。7,620件の利用があり、ポイント付与額は128億4,900万円、利用額は117億1,745万1,000円となった。
65歳以上で前年度に介護保険サービスを利用しなかった人に1万ユーヒを付与する2021年度の健幸づくり給付金事業では、2,991件にポイントを付与。年度中に2,448万1,000円分の利用があった。
2022年度の利用金額は、12月末時点で8億3,535万8,000円。2023年3月末までに13億円の利用を見込んでいる。
加盟店は町内商店数の3割を網羅
町内で「サンセットコイン」が使える加盟店は、飲食店38件、商店34件、宿泊施設21件、建設業等10件、ドラッグストア・薬局7件、スーパー5件、コンビニ3件、家電量販店1件、その他31件の計150件。町内にある商店約500件のうち、約3割に達している。西伊豆町役場 まちづくり課商工係 名倉勇太氏は「役場の職員が足で開拓し、商店間の口コミで広がりました」と説明する。
今後の課題は、いかに町外から収入を取り込むか。観光客が使いやすいように、チャージスポットを増やしたり、宿泊施設などでのメリットを拡充することが重要と考えている。同課商工係長 山本友也氏は「アプリ化やクレジットカードのチャージなどを検討していきたい」と話す。
「サンセットコイン」は現状、カードとアプリの2つで展開しているが、カードは紛失や劣化による再発行の要望が多く、町としてはアプリに統合していきたい考え。そのための施策を検討中とのことだ。