2023年4月19日8:00

ルールベースとスコアリングの併用で検知の精度と効率を向上

三菱UFJニコスでは、従来から運用してきたSCSKのルールベースの不正検知システムに加えて、PKSHA TechnologyのAIによるスコアリングの活用を2023年2月から本格的にスタートさせた。同社ではシステムで検知した不正の可能性がある取引について、取引を保留するかしないかの最終判断を24時間365日、人の目で行っている。このオペレーションは変更しないが、AIの導入によって不正検知の精度と効率を上げ、人の目を通すべき取引の件数をある程度コントロールするのが狙いだ。巧妙化し、増え続けるクレジットカード不正利用への対抗措置としてAIの活用が必須と判断。入念なPoCを経て、システム開発を行い、AIがすでに約7カ月分のデータを学習した状態で、今回のスタートに至った。(「決済セキュリティ2.0」より)

左から三菱UFJニコス 上席調査役 山﨑 翔氏、オーソリ統括部 オーソリ企画グループ 主任 松清 美歩氏、オーソリ統括部長 瀬脇 計志氏

人とAIがタッグを組んで
不正利用検知の精度を最大化

三菱UFJニコスでは、SCSKが提供する既存の不正検知システムに、PKSHA Technology(以下、PKSHA)のAIソリューションを導入した。従来からのルールベースによる不正検知に加えて、AIによるスコアリングを実施することにより、精度向上と効率化を目指す。

クレジットカード不正利用の手口は日に日に巧妙化し、件数も増加。三菱UFJニコス 上席調査役 山﨑翔氏は「これに対抗するためにはAIの活用が必須と考えていました」と話す。2年半ほど前から過去の実データを用い、数社の製品でPoC(概念実証)を行ってきた結果、PKSHAのソリューションの精度が際立って高いことが分かった。もうひとつ、同社が重視した点は、既存のSCSKのシステムとスムーズに連携できるかどうか。不正検知の精度を上げつつ、真正取引には少しの悪影響も出ないように、SCSK、PKSHA、同社のシステム開発部門が協議を重ねながら慎重に準備を進めた。そして、AIが約7カ月分のデータを学習した状態で、満を持してこの2月、本格稼働を開始する運びとなった。

不正の可能性がある取引に関し、同社ではシステムで検知した不正懸念有りの取引について保留するか否かを、24時間365日、人の目によって確認し判断を行っている。しかし人的リソースには限界があるため、人の目を通すトランザクションの件数を効率的に絞り込む必要がある。AI導入の狙いはまさにそこにある。「あくまで最終判断は人が行い、責任と誠意を持ってお客さまに応対するという弊社のポリシーは変えるつもりはありません」と三菱UFJニコス オーソリ統括部長 瀬脇計志氏は強調する。

増加するクレジットカードの不正利用への対策としてAIを活用

同社はこれまで培ってきた不正検知のノウハウを掛け合わせることによって、AI導入の効果はより高まると考えている。

「たとえば仮に、2枚のカードの取引のスコアがまったく同じだった場合、カードの種類等に応じてなんらかの差を付けるのか否かなど、どこで線を引くか、どのレベルまでAIにジャッジを委ねるかといったルールを調整していきたい。数カ月先には、ある程度、答えが見えているだろうと思います」(瀬脇氏)

業界全体で取り組む不正利用対策として
データの共同利用に期待

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