2023年6月14日9:00
髙島屋は、2023年7月1日から、「高島屋ネオバンク」のバーコード決済サービス「銀行口座払い」と「スゴ積み払い」を開始すると発表した。国内の高島屋各店、高島屋オンラインストア、タカシマヤファッションスクエアで利用できる。髙島屋では、「高島屋ネオバンク」の1年間の取り組みで若い世代や男性顧客の開拓、平均積立額のアップなどの成果があった。新たに積み立てた金額を利用する「スゴ積み払い」に加え、中間コストを省くことが可能な「銀行口座払い」を提供することで、キャッシュレス決済での収益確保でもプラスになるそうだ。
「スゴ積み」の買い物残高が利用可能に
「銀行口座払い」では1%のポイント付与
髙島屋で開始する「スゴ積み払い」は、2022年6月8日に開始した「スゴ積み」で12カ月の満期を迎えた人の「お買物残高」がアプリにチャージされることで利用できる。利用者はアプリ上で「スゴ積み払い」を選択後、レジでバーコードを提示し、店舗スタッフがレジ端末で読み取り利用可能だ。
「銀行口座払い」は、決済時に「高島屋ネオバンク」で開設した銀行口座から利用代金が即時に引き落とされ、支払いが完了する決済方法だ。「銀行口座払い」利用時には、決済金額の1%分が「タカシマヤネオバンクポイント」として付与される特徴もある。髙島屋と住信SBIネット銀行では、7月1日~31日まで、期間限定で「タカネオポイント」ポイントアップキャンペーンを実施。同期間中に買い物すると、5%(通常ポイント付与率:1%)のポイントを付与する。
NEOBANKは住信SBIネット銀行が提供するサービスで、髙島屋はそれを利用して銀行サービス「高島屋ネオバンク」を提供している。BaaS(Banking as a Service)やオープンバンキングが進んだことにより実現した新しい銀行サービスの潮流だという。
買い物と金融サービスでエコシステムを形成
より幅広い層にサービスを提供へ
なぜ髙島屋が銀行サービスを始めたのか?「それを考えた時に一番最初に考えるのはお客様のお声です」( 髙島屋 執行役員 金融事業推進プロジェクトリーダー 平野泰範氏)。髙島屋ではこれまで12回買い物をすると1年後には1カ月分のボーナスを提供し、13カ月分の買い物ができる友の会「ローズサークル」を運営してきた。年率15%相当となり、低金利が進む中で貴重な商品となっている。課題としては、プラスチックカードで店頭に来ないと申し込みができず、顧客から家から申し込みをしたいという声もあった。その課題をNEOBANKであれば解決可能だった。また、高島屋ではカード以外の金融事業を提供しており、銀行サービスを直接提供したいと考えた。
現在、住信SBIネット銀行のNEOBANKは約10社(2023年3月末時点)で活用されており、今後も20社程で導入が予定されている。アプリを申し込んだ人も百貨店が提供する金融サービスであることを違和感なく感じてもらえるそうだ。
百貨店は数十年、買い物を便利にする決済事業を手掛けてきた。また、2年前から金融商品を案内・販売するライフパートナー事業をスタート。大阪、横浜、日本橋の3店舗の金融カウンターで金融商品を販売している。保険商品の提供では、店頭で説明を求める声も多く、セミナーの開催時は数多くの人が訪れ、契約する流れができている。保険だけではなく、投資商品などさまざまなお金にまつわる相談ができる場となっている。現在、対面や非対面で無料セミナーを毎日のように開催しており、「銀行よりも気軽に相談できる場となっています」と平野氏は話す。
ソーシャルレンディングはFUEL (フエル)と組んでスタートしたが、5回の募集が完売になるほど好評を得ている。金融資産1億円以上の人もいるなど、髙島屋と顧客との接点の入り口にもなっているそうだ。
顧客が髙島屋に求めるものとして、「お得」「利便性」「いい物」「安心」といったキーワードは以前から変わらない。それを体現するために、ポイント投資ができたり、投資で貯まったポイントを買い物で使えるなどの仕組みを設けている。髙島屋自体も新たな市場や顧客を開拓できているそうだ。
NEOBANK事業はアプリ1つで、一気通貫に完結する。新たに「スゴ積み払い」や「銀行口座払い」でアプリ決済ができるとともに、便利だと感じて口座を開設した人に住宅ローンや外貨預金などを提案できる。平野氏は「まさに、当社の考える金融サービスに沿ったものということで導入しました」と説明する。
実際、過去1年は「スゴ積み」の販促を中心に行ってきたが、住宅ローン、外貨預金などを自ら調べて申し込む人がいる。NEOBANKはATMが月5回まで入出金無料、他行宛振込も月5回まで無料なため、毎月数千件単位で利用されている。銀行機能の利用に慣れてきた人に対し、外貨預金、ハイブリッド預金、住宅ローンなども案内していく方針だ。
ネクストステップとして、より幅広い層にサービスを提供していきたいという。金融商品が増えてくると、よりハイレベルで専門性の高いアドバイスが必要となるが、そういった対応も強化する。アプリで店舗に行かなくても百貨店のサービスを利用したい人に合わせ、カードの申し込みや金融サービスの相談、申し込みなどをデジタルで提供できるようにしていく。
「スゴ積み」で若い世代や男性を取り込み、平均積立金もアップ
「銀行口座払い」で中間コスト削減、NEOBANK3社目の利用
「スゴ積み」の概要に関しては、友の会 代表取締役社長 高久充氏が紹介した。百貨店の友の会はもともと1950年代に鹿児島の山形屋が発祥のサービスであり、月々の積み立てを行うことで特典が受けられるサービスだ。髙島屋でも重要なサービスとして展開しているが、スゴ積み提供の一番の理由は「お客様の若返りです」と高久氏は話す。年々、利用者の年齢層が高まっており、新たな顧客にアプローチする目的があった。また、コロナ禍は対面での友の会の申し込みに大きな影響を及ぼしたが、すべてオンラインでサービスを提供することが可能だ。さらに、30代、40代などの若い層に百貨店に足を運んでもらうための接点となるサービスだとした。
「スゴ積み」の特徴として、入会手続き、積立、店頭の利用までスマホで一気通貫に完結する。また、リアルの友の会は月5万円が最高額だったが10万円まで積み立てが可能だ。さらに、残高の有効期限を設定し、積み立てた金額を利用してもらいやすくした。「ローズサークル」では、残高だけになった場合、会員でなくなってしまうが、スゴ積みでは仮に積み立てをしなくても残高があれば会員としてのステータスを維持できる(残高には有効期限あり)。
この1年間の会員獲得の状況として、「目標数には届きませんでしたが、お客様1人当たりの積立額は想定以上に大きく、金額的にはほぼ目標通りの数字を達成できました」と高久氏は成果を述べる。
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