2023年7月21日8:30
世界の多くの大手企業向けにグローバル決済プラットフォームを提供するAdyen日本カントリーマネージャーのジョナサン・エプスタイン氏は2023年7月19日、都内で記者会見し、全世界で3万6,000人の消費者と1万2,000社の企業(日本では2,000人の消費者と500以上の企業を含む)を対象にした顧客体験とデジタルテクノロジー投資に関する国際調査である「2023リテールリポート」を公表した。世界的なインフレが日本の消費者にも生活費の高騰という形で影響を及ぼしている中で、小売業者にとっては、テクノロジーを活用したパーソナライゼーションとロイヤルティの向上がますます重要になっていることが明らかになった。(ライター:小島清利)
ロイヤルティの見返りに多くを期待する消費者
CRM導入は日本の小売企業で17%にとどまる
この調査は、インフレが消費者の行動変化にどのような影響を及ぼしているのか、また、企業はこの変化にどのように対応しているのかを明らかにするため、2023年2月から3月にかけて実施した。調査対象国・地域は、香港、日本、マレーシア、シンガポール、オーストラリア、UAE、英国、インド、アイルランド、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、カナダ、米国、ブラジル、メキシコ。
調査結果にそれによると、顧客の59%が、より価値のあるエクスペリエンスを望んでいることが分かった。具体的には、「小売企業は買い物に対する特典のあり方を改善するべきだ」と考えており、こうしたニーズは昨年より31%増加した。40%の顧客が、自分の好みや以前の購買行動を記憶し、カスタマイズされた購買エクスペリエンスを提供してくれる小売業者を好み、36%の顧客が、ロイヤルティプログラムは自分が欲しいものや使用したいものを提供していないと回答している。
一方で、消費者との関係を構築するためにCRM(Customer Relationship Management)を導入している日本の小売企業17%に過ぎず、世界平均の27%よりかなり低い。また、15%の小売業者のみが、ビジネス全体のデータを収集・分析するツールを保持している。エプスタイン氏は「顧客はロイヤルティの見返りに、より多くを期待していることがわかります。それに対し、小売業者は顧客のニーズにこたえるケイパビリティ(能力)を十分に備えていません」と分析した。
消費者のニーズが増加…
OMOトレンドは今後も成長
OMO(Online Merges with Offline)のトレンドは世界的に成長を続けており、オンラインとオフラインのチャネルをシームレスに切り替えられるようにしたいという消費者のニーズは昨年だけで36%増加した。
57%の顧客が、店頭で在庫切れの商品をその場で購入し、在庫が可能になったときに自宅に発送してくれる小売業者をより頻繁に利用すると回答したほか、48%の顧客が、オンラインで商品を購入し、店舗で返品できる小売店をより利用すると回答している。
これに対し、日本企業は、OMO体験の実現に関して、今回調査対象となった市場の中で最も低い水準にあるという。オンラインとオフラインのデータを結びつけ、どこで買い物をしても顧客を認識できる日本の小売業者は14%だった。世界平均が29%であるのに対し、オンラインストアと実店舗のチャネル間で決済取引を完了できるようにしている日本の小売企業は13%だった。オンラインで購入した商品を店舗で返品できる小売業者は10%にとどまった。
ニーズとケイパビリティのギャップを「伸びしろ」に
小売業者に求められることとは?
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