2023年10月19日9:30
空き家を活用したシェアハウスで若者のU・Iターン活性に取り組む巻組および、シェアリングエコノミーや働き方改革を通じ自律分散型経営に取り組むガイアックスは、DAO型シェアハウス「Roopt神楽坂」の開業から1年を振り返る発表会を、2023年10月11日に「Roopt神楽坂」で開催した。
DAOで人と人をつなげる
売上1.7倍、利益率37.5%に
ガイアックスは、ソーシャルメディア、シェアリングエコノミーに加えてDAO(Decentralized Autonomous Organization)を事業として強化している。DAOは、分散型自律組織となり、中央管理者がおらず、メンバーの投票などによって意思決定がなされ、自律して動く組織となる。同社 代表執行役社長 上田祐司氏は「Web3におけるDAOという組織は人と人をつなげる可能性を持っています」と話す。DAOは「儲かる?」「美味しいのか?」という声もあるが、Web3の世界ではDAOが登場し、組織も自律分散型で信用でき、かつ効率的なものができるとした。
巻組 代表取締役 渡邊享子氏は「DAOの導入によって売り上げが1.7倍に増えたことと、利益率が赤字の状態から37.5%まで向上しました」と成果を述べる。巻組は資産価値が低い空き家をビジネスにつなげるための取り組みを行ってきた。現在のライフスタイルに合わせ、1日から入居可能なシェアハウスシリーズの事業を進めている。
シェアハウスは巡回や清掃要因、内見対応、コミュニティなどの維持管理コストがかかるが、「Roopt神楽坂」ではDAOを導入することで改善することが狙いだった。ルールや決定プロセスを明確にして自律的に運営できるようにすることと、古い空き家で融資が付きづらいこともあり、“資金調達手法として有効”という仮説を持って仕組みづくりを進めた。また、市場環境が変化する中、どういう家が若い人に求められるのかを考えた際、住民参加型で好きなシェアハウスを作れる形が時代になっているため、DAOを導入したという。
今回の仕組みである「RooptDAO」では、巻組運営のシェアハウスをDAOが自律的に運営する。シェアハウスの利用料・賃料の一部を予算として積み上げ、運営ルールや予算の使用方法をDAOメンバーで議論し、決定している。
NFT購入で先に100万の売り上げを確保
予算や使用方法をDAOメンバーで議論・決定
渡邊氏は「今まではルールを大家が決めて、クレームとして受け付けて解消していましたが、その対応コストもかかっていました。そのため、責任を分散しながらアイデアも資金も持ち寄って事業を進める狙いでDAOを導入しました。物件の仕分けから運用、集客、発信までDAOのメンバーに入ってもらい、売上の中から使う権限をDAOに渡し、使い方を投票によって決めていきます。住人はトークンを購入して、トークンを巻組に戻してもらい、消化しながら住んでいただきます」と説明する。
住居者は起業を志す20代がボリュームゾーンで、学生など10代の入居も目立つ。巻組では、立ち上げのタイミングでNFTを購入してもらう仕組みを構築し、100万円程の売上を確保。その後もNFTを先に購入してもらうため、回転差資金が生まれるという。
オンラインコミュニティメンバーは、10人の定員のところ430人が参加して運営や入居待ちをしてもらっている。また、1年間で205時間分(掃除外注依頼時の4年分に相当)の仕事をDAOの住人が行い、広報や集客もコミットした。通常、スタッフは月に2回はシェアハウスに行かなければいけないところ、住人などが積極的に掃除などをしているため、行く回数が減少したそうだ。
自律的なコミュニティ風土の醸成として、コミュニティを運用するコミュニティモデレーターが重要であるとし、仕事内容や報酬についても住人が発案・議決して、シェアハウスの仕事をこなす役割をセッティングした。また、設計にかかわる部分も住人の発案・議決があった。
住人同士が協力して事業を立ち上げたケースもある。地域貢献や環境維持に住人が貢献したり、巻組の新しいシェアハウスの設計にも参加したケースもあったそうだ。
住居者は責任感が強く、責任がある
自律的なコミュニティ醸成
Roopt神楽坂入居者のKai(司東 海秀)氏は、「フラットな関係で年齢もバラバラ。意見を出し合える環境があります」と話す。コミュニケーションはDiscordを使用して、意見交換、雑談を交わすことで進んでいく。「居住者、居住者外のチャンネルが区別されており、それがあることでプライバシーを保った中で会話もできる。さらにトークン保有者からの意見ももらいながら活用しています」(Kai氏)。責任を分散してみんなで良い場所をつくる気持ちが生まれており、「DAOに率先してダイブしてくるのでみんな好奇心が強く、責任があります」とKai氏は述べる。
結果として、自律的なコミュニティ醸成につながっており、満足度高く使われているので、2022年12月以降、8割以上、ほぼ満室の状態だ。渡邊氏は「当初は6割くらい埋まればいいか、4%の利益が出ればと考えていたが、今は37%と高い収益率となっており、この差分は予算として使っていただければと思っています」と語った。
ガイアックス web3事業本部 DAOコンサルティング責任者 廣渡裕介氏は巻組との取り組みは「すばらしいベンチマークになる」とした。「RooptDAO」はシェアハウスの価値向上を目指す分かりやすい目的によって、参加者のモチベーションの低下なく利用されている。また、起業したい人が集まり、生活をより良くするために投票するタスクが生まれているとした。
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