リクルートの「Air ビジネスツールズ」エコシステムの状況は? FinTechサービス拡充へ

2023年12月15日8:20

リクルートの「Air ビジネスツールズ」はサービス事業者の業務・経営支援サービスであり、予約・受付管理、会計、決済から人材採用、シフト管理、資金調達や請求書管理まで事業運営のアナログな業務にかかる、手間、時間、コストを軽減することを目的としている。リクルート プロダクト統括本部 SaaSプロダクトマネジメント室 Airプロダクトマネジメント ユニット長「Airレジ」サービス担当者 林 裕大氏にサービスの現状と今後のエコシステム拡大に向けた取り組みについて話を聞いた。

リクルート プロダクト統括本部 SaaSプロダクトマネジメント室 Airプロダクトマネジメント ユニット長「Airレジ」サービス担当者 林 裕大氏

Airビジネスツールズのサービス拡大
延べアカウント、ユニークアカウント数も年々増加

――まずはAirビジネスツールズの現在の状況についてお聞かせください。
林:Airビジネスツールズは、POSレジアプリ「Airレジ」、お店の決済サービス「Airペイ」、シフト管理サービス「Airシフト」などリクルートの業務・経営支援のサービスを総称したものです。2023年6月末時点で、「Airレジ」は76.3万アカウント、「Airペイ」は41.7万アカウントと56種の決済サービスブランドに対応しています。それ以外にもさまざまな業務支援・経営支援のサービスをリリースしています。「Airレジ」は2013年11月にリリースした当初は飲食店での利用が多かったですが、現在は小売、サービス等を含む幅広い業種で利用されています。また、年齢層も10代から80代までと幅広いです。

Airレジ周辺機器セット

特徴として、1つのIDですべてのAirビジネスツールズのサービスを使うことができ、別々のサービスをまるで1つのサービスであるかのようにスムーズに使えます。またアクションボタンの配置や色の使い方意味の持たせ方を含めて、すべてのプロダクトで統一されたUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)で提供しているため、使い方を1から学びなおす必要なく他のAirビジネスツールズのサービスが利用可能です。

現在、Airビジネスツールズには17サービスがあり、一緒に使うと便利になるサービスとして、予約台帳をオンライン化した「レストランボード」、シフトを登録できる「シフトボード」、「COIN+」を利用してチャージ・支払い・送金・出金ができる「エアウォレット」があります。振り返ってみると1年に新規サービスを2つ程リリースしており、今年も「Airワーク給与支払い」を発表しています。

――現在のAirビジネスツールズの成長についてはいかがでしょうか?
林:延べアカウント、ユニークアカウント数は右肩上がりに増えています。サービスは年々増えていますが、成長率は加速しています。最もプロダクトとして伸びているのは「Airペイ」で、「Airペイ」と他のAirビジネスツールズを一緒に使っている併用店舗数も年々伸びています。

カード・電子マネー・QR・ポイントも使える「Airペイ」

――「Airペイ」も含め、Airビジネスツールズは順調に拡大してきたということですね。
林:「Airレジ」は2013年11月にリリースしましたが、開始当初から上手く進んだわけではありません。市場の拡大のためさまざまな施策を打って利用店舗を増やしましたが、その後のアクティブ率がとても低かったです。リリース後、半年から1年はアクティブ率が数%程度での推移が続いていました。当初はアカウントさえ獲得できれば使ってくれるだろうと考えていましたが、全然違うことを目の当たりにしました。お店に導入されても、オペレーションが回らないと導入が継続しない事実に気づきました。そこで徹底的に躓いているポイントを洗い出して改善する活動をスタートさせました。

例えば一例として、実際に店舗のオペレーション上の課題をメンバーに体感してもらうために、実際の飲食店に協力をお願いして、Airビジネスツールズに関わるメンバーが業務体験する場も設けました。実際に体験した業務の中で課題を見つけ、精査してさらなるヒアリングし、開発のロードマップに入れ込んでいます。

また、今ではタブレットPOSは一般的ですが、10年前はモバイルPOSレジの認知や利用イメージが浸透していませんでしたので、「何ができるかわからない」「本当に使えそうなのかがわからない」という理由で利用が進みませんでした。そこで、大手家電量販店のビックカメラと連携してサービスカウンターを常設し、サービスについて見て、試して、相談できるようにしました。店舗のオペレーションや形態によってどんな機器を導入したらいいかが相談でき、実際にサービスを体験できるようになりました。

人材と販促で相互にシナジーを生み出す
来店前決済で会計をスムーズに

――現状のエコシステムの拡大に向けての取り組みについてお聞かせください。
林:業務支援SaaSであるAirビジネスツールズと、人材マッチングサービス&販促マッチングプラットフォームと相互にシナジーを生み出す取り組みを進めています。

販促意欲や求人意欲が現時点では低いクライアントであっても業務支援系のニーズは存在するためAirビジネスツールズが新規顧客獲得に貢献し、その後の事業運営に伴走させていただく中で、必要に応じて上述の人材サービスや販促サービスを利用していただくことでシナジーが生まれ始めています。

では、実際にどのような取り組みがあるかを簡単に紹介したいと思います。1つ目として、既存のサービスにAirビジネスツールズのサービスを組み込むことを進めています。例えば、「SUUMO(スーモ)」には新築のマンションを販売する事業があります。これまでモデルルームの見学は資料請求、電話などでしたが、Airリザーブを組むことでオンライン予約を実現できました。日常消費領域は10年前からネット予約が主流となっていますが、業界によっては進んでいなかったのです。1つ1つシステムをつくるとコストがかさみますが、予約機能を組込型で提供することで便利に提供ができます。

もう1つの事例としてはスマート支払いがあります。「ホットペッパーグルメ」、「ホットペッパービューティー」等において予約時や来店前に支払いを済ませることができる機能です。予め支払いを済ませておくことで来店当日に会計をする必要がなく、会計がスムーズになります。これは、Airペイのオンライン決済を組み込んで実現しました。

これ以外でも、Airビジネスツールズのサービスをクライアントのニーズに合わせて組み込んだり、クライアントにより良いサービスを提供できる検討が進められています。

2つ目は、既存顧客への複合案内による付加価値の向上です。例えば、練馬、荻窪、吉祥寺に店舗を構える「八百屋バル」様では、「ホットペッパーグルメ」と「Airビジネスツールズ」のサービスを合わせてご活用いただいています。

具体的には注文に関しては「Airレジオーダー」のセルフオーダーを、会計や決済に関しては「Airレジ」「Airペイ」を利用していただいています。これらのサービスを通して得た経営情報を「Airメイト」に取り込んで分析しています。

飲食店の業務を支援する「Airレジ-オーダー」

セルフオーダーで700円~1,000円客単価アップ
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