2023年3月30日23:00
リクルートは、飲食業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマに、記者向けオンライン勉強会を2023年3月22日に開催した。当日は、「ホットペッパーグルメ」「RestaurantBOARD(レストランボード)」「Air ビジネスツールズ」による販促支援と業務支援の両面から見えた飲食業界の課題を明らかにし、今後の展望について語った。
飲食店の予約人数は小規模化
アルバイト・パートのシフト充足率が課題
当日はまず、リクルート 飲食ディビジョン ディビジョン長 徳重 浩介氏が飲食業界の課題について説明した。
2023年1月の外食市場は前年比でみると約3年ぶりに増加傾向になっている。ただ新型コロナウィルス感染拡大前と比べると、客単価は伸びているが外食の頻度は戻ってきていない。そのため、外食市場規模はコロナ前の水準までは戻っていない状況だ。
コロナ禍による変化として、外食市場の小規模化が進み2019年コロナ禍前と比較すると、会社の宴会や大型宴会が減る一方で、4人以下での来店が大きく伸びている。
そんな中、外食意向の推移として、「変わらない頻度で行く/行っている」が34.5%で過去最多となり、「当分様子見」は10.3%で過去最少となったように、「外食マインドが急激に上がってくるポジティブなマーケット状況となっています」と徳重氏は説明する。
ホットペッパーグルメのネット予約状況として、2019年3月を100%とした場合の2023年3月の店舗当たりの予約件数は164%と伸びている。予約人数は110.3%となったが、これは組当たりの人数が減っている影響だという。
昨今の飲食店を取り巻く課題として、まずは人材不足が挙げられる。「Airシフト」の充足率は、48.9%と他業種と比べ低い比率となった。その理由として、体力面や給与面での不安、雇用機会や待遇が景況感に左右されやすいといった点が、コロナ禍を経て、他の業種と比較され、難易度が高いと思われているとした。もう1つは、物価高が続いており、消費マインドが低下する中で外食を控える人が出てきている。
リクルートでは、デジタルツールの関心度についてのアンケートを実施したが、飲食店経営者の関心は42.8%と半数以下となった。一方で、何らかのデジタルツールを導入した飲食店の80%が導入による効果を実感している。導入するデジタルツールについては、キャッシュレス決済が圧倒的に多く、4割弱となった。一方で、経営管理システムは16%、セルフオーダーは5%とまだまだ伸びしろがある。
DXが進まない理由として、初期コスト、ランニングコストに加え、店舗のオペレーションを見直したり、定着するまで時間がかかる点などが挙がった。
デジタルツールで店舗業務や管理の効率化へ
活用事例のデータをもとに後方支援
リクルートでは、DXはあくまで手段であり、目的はオペレーションを見直し、生産性を高めることであると考えている。日々の予約・注文・売り上げデータなどをデジタル化し、情報を蓄積することで、経営状況を可視化・数値化し、デジタルデータをもとに店舗経営を進化できると考えている。徳重氏は「飲食店で働く方々が、接客・調理など本来やりたい業務・付加価値がつけられる業務に集中できる環境を作り出すために、それ以外は全てお手伝いをさせていただいているという世界を作っていきたいと思っています」と話す。集客・予約管理・来店席管理が「ホットペッパーグルメ」によるネット予約の促進で可能になるが、それに加え、注文管理の「Airレジオーダー」、顧客自身のスマートフォンで注文を行うセルフオーダー、決済の「Airペイ」を通じてデジタル化してもらう。そこで蓄積されたデータを経営管理で「AirMATE」を使い、採用管理の「AirWORK」、シフト管理の「AirSHIFT」で人材管理を行う。
リクルートの強みは、全国で20年間以上ホットペッパーグルメを展開しており、1,000名以上の顧客接点プレイヤー、営業の人員がいる点だという。そこで蓄積されたノウハウと導入事例により、店舗支援が可能だ。従来、手作業だったものをデジタル化することで、店舗業務の削減、集計作業の効率化により、接客など必要な業務に時間を割くことができるとした。
続いて、プロダクト統括本部 飲食プロダクトマネジメントユニット ユニット長 久保田 達也氏が「RestaurantBOARD」と「Airビジネスツールズ」について紹介した。「RestaurantBOARD」は0円で利用できる予約台帳だ。基本機能は予約管理・席管理・顧客管理機能などがあり、ネット予約にも対応している。顧客の予約状況、来店状況を管理することが可能だ。また、顧客管理機能を使えば顧客情報を登録できるので、接客にも生かすことができる。さらにリピート集客に使えるメッセージ配信機能もある。従業員の業務軽減に加え、接客や集客にも活用できるという。
「Airビジネスツールズ」は業務支援経営支援サービスの総称となり、「Airレジ」や「Airペイ」といったような会計決済・シフト管理などさまざまな業務を支援するサービスを展開している。
「Airレジ」は70.9万アカウントが利用する無料のPOSレジアプリだ。会計、商品管理、顧客管理、売上分析まで会計にまつわる業務をひとつで完結できる。
「Airレジオーダー」は、飲食店の注文、調理、配膳、提供と一連の業務を簡易にするオーダーシステムだ。主にホールスタッフが注文をとるハンディ機能、顧客のスマートフォンから直接注文できるセルフオーダー機能、注文をとったオーダーを表示して調理の支援ができるキッチンモニター機能がある。セルフオーダーはホールスタッフの業務軽減に加え、顧客の注文を待たせることがなく注文機会のロスに繋がり、注文数が増える効果もあるとした。久保田氏は「キッチンモニターも提供が遅れそうなオーダーを自動で最適な順番に表示してくれますので、提供が遅れることによるお客様の満足度が下がるような事も防止に繋がります」と話す。
「AirMATE」は、店舗経営の改善の仕組みを提供する経営アシスタントとなるそうだ。「AirMATE」を使うことにより、データに基づいた店舗経営が可能になる。飲食店の中にはExcelを使って店舗の経営数値を管理している人もいるが「AirMATE」を使うことにより「Airレジ」や「Airレジオーダー」、「AirSHIFT」といった「Airビジネスツールズ」を利用するだけでデータが「AirMATE」に自動的に蓄積されていく。蓄積されたデータを分析したり、振り返りのレポートも自動で作成できる。データ入力や加工の手間を削減し、データを店舗の改善に生かせるサービスとなるそうだ。これらのツールは「AirID」という共通IDで使えることも特徴の1つだ。
飲食ディビジョン 営業1部 マネージャー 内海雄太郎氏は店舗の活用事例を紹介。練馬、荻窪、吉祥寺に店舗を構える「八百屋バル」では、「ホットペッパーグルメ」「RestaurantBOARD」「Airレジ」「Airレジオーダー」のセルフオーダー、「Airペイ」「AirSHIFT」「AirMATE」を活用している。集客は「ホットペッパーグルメ」のネット予約を中心に、予約管理は「RestaurantBOARD」、注文に関しては「Airレジオーダー」のセルフオーダー、会計に関しては「Airレジ」「Airペイ」を利用している。これらのデータの連携により「AirMATE」で経営分析を行っている。
以前はすべて電話予約であり、限られたスタッフで営業を行っているため、忙しい時間帯に予約の電話が鳴り、来店客を待たせてしまい店舗の効率が落ちてしまうことがあったが、「RestaurantBOARD」導入後は、ホットペッパーグルメからのネット予約を自動で配席してくれるようになった。また、「Airレジオーダー」のセルフオーダーを導入後は来店客が自分のペースで注文できて注文機会のロスがなくなった事により客単価アップにも成功している。「Airペイ」は「Airレジ」との連携により、レジ締め時間の短縮、レジまわりの業務がスムーズになったことで新人スタッフもすぐに操作を覚えることができ研修時間の短縮にも繋がった。
さらに、スタッフの業務負荷軽減を目的に「Airレジ」を導入後は「RestaurantBOARD」に登録した予約や来店情報は「Airレジ」でも確認でき、そのまま会計、売上管理、決済機能までスムーズに行えるようになった。クラウド会計ソフトの「freee」とも連携しており、自動で日々の売上を反映してくれるので、会計業務が簡素化された。
「AirMATE」導入後は視覚的なデータでスタッフの目線を正確に合わせられるため、意思決定が早くなった。また週の半ばに目標の達成が厳しくなったとしても、明確な数字に基づいて効果的な打ち手を考えられるようになり、現場の店長が考える力をつけたというメリットもあった。
「本来の目的である顧客&従業員の満足度向上、その結果として売上・利益の向上にもつながりましたと伺っております」(内海氏)
飲食店から「セルフオーダー」で顧客接点が減るとの懸念も
決済手段の多様化にも積極的に取り組む
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