2011年12月1日8:30
セグメント戦略で拡大する欧州プリペイド市場
☆☆☆ ベンチャー企業が参画できる環境がある ☆☆☆
Diversification of European Prepaid Market
日本カードビジネス研究会 代表 佐藤 元則
米国ではじまった国際ブランドつきオープンループ(汎用型)のプリペイド決済。その利便性がうけて、世界各地に広がり急成長している。特に欧州での成長は年率20%を超える勢い。2017年には取扱高が約13兆円。2010年比7倍の市場になるとみられている。
同じプリペイドでも、米国と欧州では進化の仕方が違うようだ。米国プリペイドの牽引役はサブプライム。クレジット審査に通らず、銀行口座をもてない人たちを主軸に成長している。
対する欧州はターゲットのセグメント(細分化)戦略が成長要因。それぞれのセグメントニーズにあったプリペイド商品の投入が功を奏している。よって、実に多様なプリペイドカードが存在する。
消費者向けのプリペイド、企業向けプリペイド、公共機関向けのプリペイド。さらに、消費者向けでは、ギフトカード、オンライン専用カード、送金カード、旅行用のトラベルカード、学生カード、保険金給付カードなどに細分化される。
企業向けでは、給与支払いのペイロールカード、経費支払いのためのカード、出張専用カード、モチベーションを高めるインセンティブカードなど。
公共機関では、生活保護費や年金を給付するベネフィットカード、購買調達カード、公務員の給与支払いのためのペイロールカードなど多様だ。
米国はターゲットを特定し規模の経済を追求。欧州はきめ細かなセグメント戦略を推進する。文化や風土の違いがプリペイド決済にも如実にあらわれている。
日本でもようやく数社が汎用型プリペイドを立ちあげたが、まだ市場としては揺籃期だ。今後この市場を拡大するためのベンチマークは米国型なのか、はたまた欧州型なのか。今回は欧州プリペイド市場の成長要因を探ることにしよう。
●プリペイド時代に突入した欧州
欧州は地域が一体になって、現金依存からプリペイドによる経済効率を高めようとしている。特に昨今は景気の低迷で、個人も企業も、そして政府も、現金のありかたを見直す気運が高まっている。
プリペイドは現金と同じようにだれでも利用できる。年齢制限がない。銀行口座は不要。審査も必要ない。それでいて、現金より便利で安全。現金流通のコストを大幅に削減できるのもうれしい。
現金の製造コスト、移送コスト、管理コスト、再生コストなど、リアルマネーには多くのコストがかかっている。これをプリペイドに置き換えれば、各国政府は社会コストを大幅に圧縮できる。企業は現金管理コストを削減でき、消費者は現金を使い、管理する時間コストを下げることができる。
すでにデビットカードやクレジットカードが浸透している英国では、残る現金市場をキャッシュレス化するための手段として、プリペイドカードと非接触NFC決済を積極推進している。このムーブメントに乗って、英国政府をはじめとする公共機関は、各種決済をプリペイドカードに転換中。プリペイドは期待の星なのである。
●年率26%成長の欧州プリペイド市場
欧州のオープンループ(汎用型)プリペイドカード市場規模は、2010年から2017年までに年率26%で成長し、1,560億ドル(約13兆円)になる。