2013年4月22日8:00
スマートフォンのアプリと位置情報を活用した斬新なサービスを展開
楽しく、便利なサービスの開発に注力し8割の利用率を誇る
価格を気にせずファッションを“自由”に楽しめるファーストリテイリンググループのブランド「ジーユー(GU)」では、スマートフォンのアプリケーションを活用し、顧客に店舗への来店を促している。同社ではスマートフォンのアプリや位置情報機能を活用し、顧客にとって楽しく、便利なサービスの開発に注力。アプリケーションをダウンロードした人やモバイル会員は順調に増加しており、会員のアクティブ率も高いという。
AR機能を活用した「宝探しクーポン」の来店率は約8割
位置情報を活用した「シェイククーポン」のクーポン利用率は95%
ユニクロから生まれたベンチャー企業のジーユーでは、20代を中心とした若年層のユーザーに来店してもらうために、スマートフォン等を活用したコミュニケーションを図っている。
2013年3月末現在、アプリのダウンロード数は約200万、モバイル会員は650万人。月1回以上、アプリを起動した人は約80%と、アクティブ率の高さが強みとなる。また、メールマガジンの配信を希望しているユーザーは82%と高い数字を誇る。
ジーユーでは2012年10月まで、郊外の店舗を中心にチラシを配布して集客を行っていた。そこから1年半で販促の手法ががらりと変わり、紙からモバイルにシフトしている。現在は、スマートフォンを活用した新しいメディアを中心にリアルタイムに時間や場所をセグメントして広告展開を行っている。
メールマガジンの配信を希望するモバイル会員は2011年12月時点で175万人だった。その会員に対し特別価格で商品を購入できるといった訴求を行い、会員増を図ったのがモバイル強化の最初の取り組みとなった。当時は、会員が増えればチラシを削減できるという狙いがあったが、その一方で、スマートフォンのアプリを活用して顧客に新しいサービスを提供したいという思いもあったそうだ。
まずは「おしゃれメーカー」アプリを提供し、新規ダウンロードを促進。アプリをダウンロードしたユーザーは「デジタルチラシ」や「スタイリングカタログ」などを閲覧可能だ。また、「モバイル会員特別価格」で商品を購入でき、近隣の店舗の検索やオンラインでも商品を購入できることを訴求した。アプリをダウンロードした人はモバイル会員にも自動的に登録。そのため、月に1度、モバイル会員向けの企画を展開している。
まず、AR機能を活用した「宝探しクーポン」を2012年6月に展開。ジーユーのシンボルでもあるブランドロゴにスマートフォンをかざすと宝箱が出てくる企画であり、サービスの期間中、新規ダウンロード数は16万あり、会員の来店率は約8割となった。
「サイトやショッピングバック、看板などに貼られたロゴをお客様自身が探していただくことにより、ブランディングにつながりました」(ジーユー ダイレクト事業部 リーダー 萩原将人氏)
また、2013年9月10~9月30日にはAR技術を活用した「ジーユーモンスタークーポン」を実施。チラシ、ポスター、Webサイト、店頭看板など、全国どこからでもジーユーのロゴにジーユーアプリのカメラをかざすとコウモリが出現。そのコウモリをクリックすると、3人に1人に100円OFFクーポンをプレゼントした。
「弊社では新しい技術は積極的に取り入れています。ただし、お客様にとってはどこから宝箱が出てくることが重要であり、新技術を活用しながらも如何にわかりやすく、コミュニケーションを図ることができるかを念頭に置いています」(萩原氏)
また、2012年3月下旬にオープンしたジーユー銀座店の来店顧客数30万名突破を記念し、7月14日~7月16日の期間中、「シェイククーポン」キャンペーンを展開。期間中、銀座店、池袋東口店、心斎橋店のキャンペーン店舗で、ジーユーアプリを5回シェイクすると、5人に1人、1,000円OFFクーポンが当たるものだが、クーポン利用率は95%を超えた。高い利用率の要因は、位置情報機能を活用し、3店舗のエリア内に入った顧客が来店してスマートフォンをシェイクするだけでクーポンが当たる分かりやすさ、楽しさがあったからだという。
同キャンペーンの成果を受け、12月3日~25日には、「クリスマスシェイク」を実施。上記の3店舗でスマートフォンをシェイクすると、3人に1人、ソックス(2足組、3足組、5足組の490円ソックスが対象)をプレゼントするキャンペーンを行った。また、顧客がスマートフォンをシェイクすると鈴を鳴らしている。
「ジーユーの場合、月やシーズンに1度、定期的に来店していただくことが重要であり、ちょっとした楽しみを加えることで、お客様の参加性を促し、当たった時の喜びを高めています。鈴を鳴らせるのは1日一度ですが、外れた場合でも毎日楽しんでいただけます。今後もこういったコミュニケーションを大切にしていきたいです」(萩原氏)
2013年1月には、990円ジーンズをプレゼントするシェイクキャンペーンを展開。会員は、ジーユーアプリを立ち上げ、5回シェイクすると、各日抽選で1,000人に「990円ジーンズ」をプレゼントした。また、年始の企画としておみくじが引ける取り組みも行った。利用者は、店頭でサービスに参加でき、そのままジーンズを手にできるため好評だったそうだ。
シーズン物の企画としては、2月1日~14日まで、ジーユーアプリ特別企画「バレンタインスクラッチ」を開催。ジーユーアプリを利用したスクラッチゲームにより、抽選で5人に1人、ランジェリーの引換券をプレゼントする企画を行った。スクラッチは画面をスクロールすると削れるように楽しみを持たせたのが特徴だ。
さらに、2013年3月には、ブランドロゴ変更のタイミングを生かし、「キュッキューと叫べ」キャンペーンを実施。ジーユーでは、2013 年春夏シーズンで 990 円の商品群をこれまでの倍以上揃えたため、「990=ジーユー」ということを認知してもらうことを目的として、“990 (キュッキュー)”と話すと、うまく声が認識されれば、タレントのきゃりーぱみゅぱみゅさんのオリジナル壁紙をプレゼントした。また、「ジーユー」や「きゃりー」と叫ぶと、コンテンツが飛び出すこともあるという。
位置情報を活用したプッシュ配信やSNSにも注力
ゲリライベントを開催し、SNSやYou Tubeで拡散
ジーユーでは、位置情報を活用したプッシュ配信にも力を入れる。店舗付近にいる顧客に対してセール情報、新店のオープン告知を県単位や10キロ圏内で実施。これは非常に有効で、顧客の来店への貢献度は高い。また、店舗でイベントを行う際、距離圏内のユーザーに参加を促している。
SNSも情報発信メディアとして活用しており、2012年3月の銀座店のオープンの際、「銀のイスに座れ!ジーユー史上最大のイス取りゲーム」を展開。毎日数回、「銀のイスに座れ!」という号令とともに、リンクURLが発信。SNSのmixi、Facebook、Twitterで毎日椅子取りゲームの号令を行い椅子に座った人に対してクーポンをプレゼントした。
また、同社の夏向け商品「さらっとSUMMER」と冬向け商品「あったかインナー」を活用し、企業連動型のシーズン性のある企画を実施。さらっとSUMMERは、35度を超えた猛暑日にSNSで着心地のいいインナーの無料クーポンを配布。あったかインナーでは、東京の気温が10度を下回った日に無料クーポンを配布した。両企画とも非常に顧客からのリアクションが良く、毎日のコメントやFacebookの「いいね!」の数などが多かった。結果、クーポン1万枚を配布したが30分程度で既定の枚数に達したという。
2012年8月からはLINEへの掲載を開始。主に新規顧客の開拓に活用しており、2013年3月現在、友達の数は150万人となっている。
店頭イベント事例としては、「生着替えファッションショー」を心斎橋と池袋東口店で開催。両店舗付近にいる顧客にゲリライベントの開催を告知し、参加を促した。当日、モデルが店頭で生着替えを行い、Twitterでマネキンの好きなコーディネートを投稿するとプレゼントがもらえる企画も行うことで、リアルタイムに情報を拡散させることに成功した。さらに、翌日にはYou TubeでCMの映像になってインターネットで配信。モバイル会員600万人以上に配信することができた。
「これは、モバイル会員が増えてきたからこそ開催できた企画で、リアルタイムに情報を提供できたため鮮度があり、売り上げ増にも結び付きました。また、さまざまなメディアに取り上げられるといった副次的な効果もありました」(萩原氏)
従来、CMを制作するとなると、数カ月前から準備を行う必要があり、媒体枠を押さえなければならなかったが、リアルタイムな情報を提供することで売り上げの底上げにつながった。
また、ヨドバシカメラ博多店がオープンした際に、日常の風景の中でサプライズ的に仕掛け人がいて、いろいろな人を巻き込んでダンスをするゲリライベント「ジーユー フラッシュモブin博多」を実施。当日の様子は、翌日にYou Tubeで配信している。
直近の取り組みとしては、2013年4月18日に神戸ハーバーランドumie店のオープンを記念し、フラッシュ・モブを行った。テーマはダンスとファッションによるバトル形式で、男性/女性/小学生チームがダンスとファッションを披露した(http://youtu.be/MbVXXXBEWcM)。
情報よりも心理的なつながりを重視
夏までに1,000万会員を目指す
こういった取り組みの成果もあり、以前は毎週末配布していたチラシを、新店オープンと閉店セール、セール時期に絞って配布できるようになった。モバイル会員については、アクティブ率が高いため、販促に結び付けやすく、例えば、セール情報を受信するメッセージの率が80%を超えている。そのため、新規顧客はもちろん、店舗一度来た顧客がリピートする機会も増えているそうだ。
また、キャンペーンなどで提供するクーポンはオンライン上でも利用できるようにしているが、店舗に来店して商品を購入している人の方が圧倒的に多い。
同社では、スマートフォンの活用により、情報のつながりよりも心理的なつながりが築ければと考えている。楽しくクーポンをゲットしてもらい、店舗に来店してもらうシンプルな流れを作る。そのために、詳細な顧客情報の登録やアンケート、Wi-Fiをオンにするといった行為は極力減らすことを意識している。
なお、スマートフォンは新しい技術であり、機種や端末ごとに、アプリを開発する上でのテストは行っているが、特にAndroidについては対応に苦労している部分もあるそうだ。ただ、1人でも多くの利用者に楽しんでもらうため、検証作業を強化している。
「今後はもっと多くのお客様とインターネットやスマートフォンでつながっていきたいです。1,000万、2,000万人と短期間で伸ばしていくためには、さらに多くの方にアプリをダウンロードしていただき、シーズンやキャンペーンと連動してニュース発信していく必要があると考えています。コンテンツが受け入れられれば、必然と共有する方も増えるはずです」(萩原氏)
現在、ジーユーでは、アプリ、メルマガ会員、LINEの友達の三本柱でモバイル向けサービスを展開しているが、夏までに1,000万会員を目指していきたいとしている。