2013年11月1日8:30
東京オリンピックの経済効果
☆☆☆ 決済インフラ整備で大きな効果を期待 ☆☆☆
Economic Impact of Tokyo Olympic
日本カードビジネス研究会代表 佐藤 元則
2013年9月8日、2020年のオリンピック・パラリンピック競技大会を東京で開催することが決定し、日本中が沸きたった。自然災害とデフレに苦しむ日本にとって、ひさびさの明るい話題になった。
オリンピックの経済波及効果は大きい。施設建設や交通機関などのインフラ整備、旅行客受入れ、大会運営など、直接的な効果に加え、消費者の景気マインドを引上げる効果がある。われわれカード・決済業界も恩恵をこうむるチャンスがある。
2000年開催のシドニーオリンピックでは、期間中だけで21億ドル、約2,100億円の効果があった。2012年のロンドンオリンピックでは、99億ポンド、約1.5兆円のビジネスと投資をうみだしたという。そのうち海外からの観光客は、2012年だけで6億ポンド、900億円もの消費に貢献している。
東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、2013年から2020年までの7年間に3兆円弱、約15万人の雇用をうみだすと試算した。内訳は、東京都だけで1兆6,800億円、その他の地域で1兆2,900億円の経済効果があるとしている。
この試算で最も多く見積もったのが家計消費支出で5,580億円。ついで、競技場や選手村などの施設整備費で3,560億円。大会運営費用が3,100億円でつづく。
オリンピック開催に向けて、カード・決済業界はどう対処すれば、最大の恩恵にあずかることができるのだろうか。ロンドンオリンピックを下敷きに、課題とチャンスを明らかにしていくことにしよう。
●開催時まで1.5兆円、開催後6兆円の経済効果
本号では、ロンドンオリンピックの経済波及効果の予測と実績の両方を下敷きにする。予測と実績には乖離がある。だからといって、予測は参考にならないと切り捨てるのは乱暴だ。予測レポートはポジティブなものが多いが、どんな視点から予測したのかを知ることができる。
予測をみる前に、まず実績を報告しよう。2013年7月、英国政府は2012年のオリンピックの成果を発表した。それによると、英国はオリンピックによって99億ポンド、約1.5兆円の経済効果があったという。海外観光客の消費は、2012年だけで6億ポンド、900億円あった。
英国貿易投資総省(UKTI)によると、99億ポンドの内訳は以下のとおり。海外からの投資が25億ポンド、3,750億円だった。そのうち58%はロンドン以外の地域への投資だ。UKTIと外務省のオリンピック関連プロモーションによる売上増は59億ポンド、8,850億円だった。オリンピック関連のカンファレンス売上だ。
残り15億ポンド、2,400億円は海外イベントの契約関連だ。ロシアの冬季オリンピックのスタジアムや公園設計、ブラジルのワールドカップ施設の設計での契約を獲得している。
当初英国政府は130億ポンド、2兆円弱の経済効果をかかげていた。が、実際には予測値の76%で、目標より30億ポンド少なかった。
では収支はあっているのだろうか。英国政府によると、ロンドンオリンピック開催にかかったコストは、89億ポンド。10億ポンドの黒字だった。経済的な効果だけでなく、英国民にスポーツ意識が高まった。2005年の開催発表後、毎週スポーツする人が140万人増えたという。
オリンピック効果は開催時までにとどまらない。開催後の2020年までに、英国に400億ポンド、6兆円の恩恵をもたらすと試算している。