2014年3月13日8:00
Visa payWave決済対応のカード情報を仮想クラウド内に保持
AndroidのHCE機能により、Visa payWaveのさらなる進化・普及に期待
Visa Inc.は、米国時間の2014年2月20日、「Visa payWave」対応のカード情報を従来の「セキュアエレメント(Secure Element)」ではなくクラウド内に保持する機能を発表した。Googleは、NFCスマートフォンで利用できる機能「Android4.4(KitKat)」に「Host Card Emulation(HCE)」を採用したが、同機能を利用してVisa payWaveの新たな規格、ツールおよびガイドラインを導入した。今回は、Visa payWaveの展開やHCEへの期待などについて、2014年2月末にスペインで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2014」において、Visa Inc.シニア・ヴァイス・プレジデント デジタル デベロップメントマーケット Sam Shrauger氏、アジア・パシフィック エマージング・プロダクト・ソリューションズ ヘッドのVikram Modi氏に話を聞いた。
2007年からVisa payWaveのサービスを開始
次のステップとしてクラウドベースのモバイル決済を提供
――まず、Visa様のモバイル決済サービスの変遷について、簡単にお聞かせください。
Sam Shrauger:Visaでは、2005年非接触のオンラインペイメントをスタートし、2007年にVisa payWaveをリリースしました。その後、micro SD、SIMカードへの対応、Androidスマートフォンでの利用、そしてHCEの発表などを行っています。
――Visa payWaveの具体的な普及状況についてお聞かせください。
Sam Shrauger:具体的な数字は申し上げられませんが、例えばオーストラリアはVisaの決済が3番目に多い国ですが、非常によく利用されています。また、ブラジルでは100万台の端末が設置されています。
オーストラリア、シンガポール、カナダなどは、かなり成長率は早いです。市場にもよりますが、最近はカスタマーがタップして決済するのに慣れてきました。また、物理的なカードも存在していますが、デジタル化してクラウド上に格納するHCEは次のステップです。
――アジアでの展開はいかがでしょうか?
Vikram Modi:アジアでは、先述のオーストラリア、シンガポール、香港、台湾などで成長しています。日本は、Suicaをはじめ、コンタクトレスは非接触ICカードを使い慣れており、最近ではVisa payWaveにも関心が高まっています。今後は日本の方が旅行した際に、現地でVisa payWaveの端末が利用できるため、興味が高まると考えています。
――日本では東京五輪が2020年に開催されます。
Sam Shrauger:東京五輪については、まだ先の話になりますが、Visaでは今まで大きなイベントのスポンサーになって新しいサービスを普及させてきた実績があります。
近年ではモバイルへの移行が顕著に
金融機関のアプリケーションにVisa payWave 機能を追加可能
――Visa payWaveのカードとモバイルの利用状況についてはいかがでしょうか?Sam Shrauger:
具体的な数字は申し上げられませんが、最近はモバイルに移行しつつあります。非接触のペイメントについては、カナダやオーストラリアで利用者が伸びています。HCEの技術がでてきたことで、これから非接触のモバイルペイメントは普及すると考えています。HCEは、金融機関、加盟店にとって魅力的な技術です。
――現状、NFC等、モバイルを使った決済サービスはそれほど普及していないと言われています。
Sam Shrauger:その答えは国によって変わります。マーケットによりますが、キャリアと金融機関をまとめるのが難しい国もあります。ただ、スペインなどのように問題ない国も存在します。
確かなことは、二年前からはコンシューマの行動がモバイルに移行する傾向が見えてきたことです。ただし、モバイルで決済することが最初にするサービスではなく、映画のチケットを購入したり、ボーディングパスに利用したり、タップすることに慣れているから盛り上がると考えます。例えば、米国のスターバックスでは自社のアプリで10%の決済が行われていますが、その理由は決済以外のサービスでも便利に利用できるからだと思います。
HCEは決済だけではなく、金融機関などの第三者がサービスを使えますし、カスタマーにより良いサービスを提供するために利用されるでしょう(Visaでは金融機関に向けたソフトウェア開発キット(SDK)も開発中)。
セキュリティを意識してHCEのシステムを構築
日本市場のVisa payWave普及に期待
――Visa様ではVisa payWaveを拡張し、金融機関が仮想クラウド内でVisaアカウントを安全にホストできるようにするための新たな規格、要件、プログラム承認プロセスおよび実装ガイドラインを導入されるそうですが、HCEのセキュリティ面についてはいかがでしょうか?Sam Shrauger:
Visaはペイメントの会社なのでまずはセキュリティを考えて作りました。GoogleやSimplytappに相談しながら開発したため、セキュリティ面は問題ないです。また、重要なポイントとして、2013年10月にトークナイゼーション(データベースの暗号化よりも強固な技術)の基準がリリースされました。HCEはトークナイゼーションに基づいているのでセキュリティ面は強固です。
利用者は、クラウドに接続できないことがありますが、接続している間にトークンをダウンロードして端末に格納します。トークンをダウンロードするのは、ソフトウェア開発キット(SDK)の認定がないと使えなくなっています。そのため、セキュリティはむしろ強化されると思います。
--「V.me」等のデジタルウォレットサービスの展開についてはいかがでしょうか?
Sam Shrauger:パートナーの銀行には、SDKを作って自身のウォッレットを提供できるようにしています。それぞれの金融機関がお客様に何を提供したいかは自由です。QRコードがNFCより使われるかは分かりませんが、いろいろな選択肢を与えています。「V.me」は2012年10月にローンチしましたが、現状オンラインペイメントのみで、店舗では利用できません。
――今後のVisa payWaveの目標についてはいかがでしょうか?
Sam Shrauger:具体的な数字は公表できませんが、目的としては、“よりセキュアに”“安全に”“スピーディーに”“簡単に”です。弊社は、HCE、Visa payWave、V.meなど、カスタマーに便利なツールを提供していく立場です。
――日本市場への期待については?
Vikram Modi:日本市場については、まだ現金で処理されるケースが多いので、チャンスはあると考えています。決済を簡単、安全にするツールとしてVisa payWaveやHCEを提供していきたいです。
※HCEの日本展開については未定
※取材は「モバイル・ワールド・コングレス2014」のVisaブースにて