2014年7月29日 8:00
貯まりやすいポイントよりも、○○なポイントを貯める
株式会社ポイ探 代表取締役 菊地崇仁
日本経済新聞社が2014年3月に行った電子マネー各社への調査で、電子マネーの利用件数が急増している事がわかった。Suica、nanaco、WAON等は前年同月よりも2ケタ増。これは、2014年4月から消費税の増税が行われた事による影響だ。消費税が8%になり、少しでも増税分の3%を取り戻したいという事から、ポイントの貯まる電子マネーを利用し始めたのだろう。
増税前には筆者も3%分を取り戻すにはどうすれば良いかという取材を何度も受けた。その際、必ず聞かれる項目は「貯まりやすいポイントは何ですか?」の質問だ。しかし、ポイントを貯める上で重要なのは「貯まりやすさ」よりも「使いやすさ」である。
例えば、いつでも還元率が3%の「ポンパレモール」と還元率2%の「リクルートカードプラス」を利用すれば、オンラインショッピングモールでの還元率は5%になる。「楽天市場」での還元率は1%、「楽天カード」の還元率は1%で合計2%還元。同様に「Yahoo!ショッピング」の還元率は1%、「Yahoo! JAPAN JCBカード」の還元率は1%でこちらも合計2%還元だ。増税後に、普段利用しているクレジットカードをリクルートカードプラスに切り替え、オンラインショッピングモールをポンパレモールに変更すれば、オンラインショッピングモールでは増税分の3%分を取り戻すことが可能だ。
しかし、リクルートサービスをたくさん使う人であれば一番お得な組み合わせだが、ポンパレモール・リクルートカードプラスで貯まるポイントは「リクルートポイント」となる。リクルートポイントを利用するには、約1000店舗しか加盟していないポンパレモールで利用することになるだろう。リクルートポイントは貯まりやすいが使いにくいポイントの代表例と言える。
では、使いやすいポイントとは一体どのようなポイントプログラムだろうか? 以下の条件に当てはまるポイントが使いやすいポイントと言えるだろう。
1.有効期限が無期限または長い
2.少ないポイント数から利用可能
3.交換(購入)できる商品が多い
1.有効期限が無期限または長い
多くの場合、ポイントには有効期限が設定されている。この有効期間内に利用しなければせっかく貯めたポイントも失効してしまうのだ。いくら購入時に10%還元となっていても、使えずに失効すれば0%還元となってしまう。
しかし、永久不滅ポイントやシティ リワードポイント等のようにポイントに有効期限が設定されていない場合もある。これらは、たとえ還元率が低かったとしても、いつかは使えるポイントになるのだ。
また、楽天スーパーポイントやTポイント等のように、最終ポイント獲得日・利用日から全てのポイントの有効期限が自動で1年延長されるポイントもある。楽天カードやYahoo! JAPAN JCBカードで公共料金等を支払っていると、ポイントが失効することはない(期間限定ポイントを除く)。
このように、有効期限が無期限または長ければポイントをいつかは使えるため、○%還元を必ず受けることができるだろう。
2.少ないポイント数から利用可能
次に、貯めたポイントを1ポイントから利用できるのか、1万ポイント貯めなければ利用できないのかも重要な点だ。
例えば、イオンでの買い物を考えてみよう。クレジットカードの「イオンカード」で支払うのと、電子マネーの「WAON」での支払うのではポイントの貯まり方は同じだ。どちらも200円(税込)につき1ポイントの獲得となる。しかし、貯まるポイントが異なるのだ。イオンカードの場合は「ときめきポイント」が、WAONの場合は「WAONポイント」が貯まる。
イオンカードで貯まる「ときめきポイント」は1000ポイントで1000円分のWAONポイントやイオン商品券に交換可能だが、WAONで貯まる「WAONポイント」は100ポイントで再度WAONにチャージが可能となっている。
要するに、イオンカードで貯まる「ときめきポイント」は単純計算で20万円利用しなければ交換できないが、WAONで貯まる「WAONポイント」は2万円の利用で交換できるということになる。
ポイントの有効期限が無期限または長い場合は、いつかはポイントを利用できるだろうが、1000ポイントまで達する前に有効期限が切れてしまう場合は、いくら貯めても利用できない。少ないポイントから使えたほうがポイントを使える可能性は高くなる。
従って、イオンでポイントを貯めるのであれば、イオンカードを利用するよりもWAONを利用した方が良いと言える。
3.交換(購入)できる商品が多い
貯めるべきポイントで一番重要なのはポイントの利用先だろう。ポイントで交換(購入)できる商品数が多ければ、何か好きなものに利用することが可能となる。しかし、10%以上の還元率があったとしても、自分に興味が無い商品にしか交換できないのであれば、ポイントを貯めるメリットは全くない。
企業も使いやすいポイントへの切り替え・変更開始
使いにくいポイントとして挙げたリクルートポイントに話を戻そう。上記の3条件をクリアするため、リクルートポイントは2014年夏頃にはPontaポイントへの交換が、2015年春頃にはリクルートポイントが廃止され、Pontaポイントへの切り替えが予定されている。ポイントの貯まりやすさを売りにサービスインしたポンパレモールだが、楽天市場、Yahoo!ショッピングから大きく水をあけられた状態だ。Pontaポイントへの切り替えで、ようやく2社の追い上げを開始することができるだろう。
同様に、使いにくいポイントから使いやすいポイントへの切り替えを行った業種がある。ケータイの利用料金で貯まるポイントだ。auは通信料金で貯まったポイントを、電子マネー「au WALLETカード」にチャージし、MasterCard加盟店で利用できるようにした。また、ソフトバンクは通信料金で貯まるポイントを共通ポイントの「Tポイント」に切り替えた。自社でしか使えなかったポイントをどこでも使いやすくし、顧客満足度を高めるように方向転換したのだ。
また、マイレージも同じように使いやすさをアピールし始めている。ANAは「ANAカード」「AMCモバイルプラス」会員限定で、1マイルからANA SKYコインに交換できるようにした。従来は3000マイルまで貯まらなければ交換できなかったマイルを1マイルから利用できるようにしたのだ。
このように、従来使いにくかったポイントを、使いやすいポイントへと切り替えたり、変更したりする動きが活発になっている。今後もこの流れは続くだろう。
しかし、未だに使いにくいポイントは山ほどある。ポイントカードやクレジットカードを作る場合等は、上記3条件を最初に確認することをおすすめする。ポイントは使うことが目的であり、貯めることが目的ではない。使えないポイントはどんなに還元率が高くても貯めるべきではないのだ。
菊地 崇仁(きくち たかひと)
1998年に法政大学工学部を卒業後、同年日本電信電話株式会社(現NTT東日本)に入社。社内システムの開発、Lモードの料金システム開発、フレッツ網の機器検証等に携わり2002年に退社。同年、友人と共に起業し、システムの設計・開発・運用を行う。2006年、ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年3月代表取締役に就任。ポイント探検倶楽部に掲載されているポイントは約230種類。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られる。
三児の父であり家計のやりくりをすべて担当。ポイントのみならず、クレジットカードや保険なども守備範囲で、近年は投資にも挑戦している。著書は「新かんたんポイント&カード生活(自由国民社)」、「得するポイント(カード)の貯め方・使い方(日本監督協会)」。運営サイトは「ポイント探検倶楽部(ポイ探)」、「株式会社ポイ探」、「菊地崇仁オフィシャルホームページ」等。