2015年11月20日8:53
ジェムアルト(Gemalto)は、決済セキュリティソリューション「Dynamic Code Verification」を2015年10月にリリースした。同ソリューションにより、カード発行会社は、非対面のクレジットカード決済の際に入力していた静的な3桁のセキュリティコードを、動的なCVV/CVCに置き換えることができるという。同コードは 20分ごとに更新されるため、オンライン決済時のセキュリティを強化可能だ。また、カードに加え、モバイル版も提供している。ジェムアルト eBanking & eCommerce シニア・ヴァイス・プレジデント ホウカン・ノートフジェル(Hakan Nordfjel)氏に、Dynamic Code Verificationの特徴について、話を聞いた。
カードとモバイルに対応し、バックエンドのサーバも提供
――まずは、「Dynamic Code Verification」の特徴からお聞かせください。
ホウカン・ノートフジェル:動的CVV/CVCクレジットカードを提供している企業はほかにもありますが、「Dynamic Code Verification」ではカードに加え、モバイルにも対応しており、弊社ではバックエンドのサーバも提供しています。そして、そこにSafenet(セーフネット)のHSM(ハードウェア・セキュリティ・モジュール)が以前から導入されています。カードのコストは通常のクレジットカードよりも高いですが、重要なのはカード発行会社がすべてのお客様に発行する場合はもちろん、顧客をセグメントして一部のお客様に発行し、他のお客様にはモバイルで提供することも可能です。モバイルウォレットであってもカード同様に動的CVV/CVCを利用することができます。
――コストの目安について可能であればお聞かせください。
ホウカン・ノートフジェル:ボリュームによって価格は変わりますが、通常のカードに比べると値段は数倍高いです。当然、数百万枚発行しているイシュアと5,000万枚の企業で比べると、値段は異なります。
また、コストにはいろいろな見方ができ、投資収益率という点では、数年かけると不正が減少するのはプラスとなります。また、安全なネットショッピングが可能になると、利用者が増え、イシュア(カード発行会社)やeコマースサイトの売り上げも高まります。
――たとえば、16桁のクレジットカードに8桁の動的な番号を追加するといったソリューションは以前から展開されてきましたが、なかなか普及しませんでした。
ホウカン・ノートフジェル:ジェムアルトでは10月にDynamic Code Verificationをリリースしましたが、以前は16桁のクレジットカード番号に8桁を追加するカードを展開する企業にとって最大の顧客でもありました。そういった意味では、すべての大陸にお客様を有しています。
16桁+8桁のカードは、Webシステムを改修するコストの面で課題がありましたが、Dynamic Code Verificationは、8桁を入力するカードと比べると、コストが低く抑えられます。また、旧来のカードはeコマースではなく、オンラインバンキングのみが対象となっており、単価も通常のトークン形状に比べてかさみましたが、それでも数百万枚の実績があります。
イシュアにとってシンプルな実装が可能に
――VisaやMasterCardといった国際ペイメントブランドの認定は取得されていますでしょうか。また、最近では、指紋認証機能を搭載したカードも登場していますが、脅威だと感じられますか?
ホウカン・ノートフジェル:VisaとMasterCardからの認定を受けています。また、指紋認証といった生体認証は良いテクノロジではありますが、市場自体が小さく、指紋センサーをカードに組み込むと値段が張ってしまいます。
――貴社が提供されるサーバ自体のアドバンテージについてお聞かせください。
ホウカン・ノートフジェル:CVV/CVC用のサーバということで、行動を認証するシンプルなタスクですが、弊社の利点は各市場のローカルスペックに対応しやすいことが挙げられます。日本の場合は、磁気カードの方式が異なるなどの課題はありますが、技術自体は提供可能です。弊社には、どんな市場に対しても導入できる強みがあります。CVV/CVCは弊社のサーバが認証を行い、それをイシュアに返します。イシュアは何もする必要がなく、実装がシンプルです。また、従来のカードをモバイルウォレットに入れて、CVV/CVCを付加することができます。
――最近では、本人認証技術「3-Dセキュア」を一回限りのワンタイムパスワードで提供するサービスもありますが、競合する可能性はございますか?
ホウカン・ノートフジェル:3-Dセキュアは、多くの国でショッピングカートの放棄率が高まっています。そういった事態になると、eコマースサイトもカード発行会社側も売り上げが減少します。また、一部の国では3-Dセキュアを全く導入していないケースも見受けられます。そこで、代替ソリューションとして、このカードが有効です。ただ、3-Dセキュアと弊社のソリューションは共存可能であり、導入されているWebサイトでは3-Dセキュアと併用し、それ以外のサイトではこのソリューションを使うことで不正の削減が可能です。
日本をはじめ15~20の市場で営業を重点的に展開
――海外ですでに導入しているイシュアはございますか?
ホウカン・ノートフジェル:まだ10月に発表したばかりですが、数カ月前からパイロットはスタートしています。また、モバイルについては1つ実績があり、数十万の顧客を持つお客様で本番環境に入っています。
――Safenetを買収されましが、どういったシナジーが生まれていますか?
ホウカン・ノートフジェル:たとえば、ジェマルトはインターネットバンキングを大きく展開していますが、それをSafenetの従来のお客様にもたらすことができます。また、セーフネットはエンタープライズに強く、認証や暗号ソリューションのシェアを確保することが可能です。さらに、ジェマルトは銀行と通信に強いですが、金融については3,000件の顧客を有していますので、そういったところに暗号化技術などを売り込むことで、アップセルが期待できます。また、ほとんどの通信企業はジェムアルトのお客様ですので、そういった企業にセーフネットの製品をもたらすことが可能です。
――最後に目標数値についてお聞かせください。
ホウカン・ノートフジェル:目標数値に関しては申し上げられませんが、重点的に働きかけたい市場は15~20カ国くらいあり、普及する期待を抱いています。CNP(Card Not Present)と呼ばれている非対面での不正対策が必要な国は多いため、3-Dセキュアの代替や補完として導入していただきたいです。また、ターゲットには日本も入っています。従来から日本には、通信や銀行、官公庁などの顧客を抱えており、ローカルチームも大きな存在です。
なお、ジェムアルト アイデンティティ データ&ソフトウェアサービス インターネットバンキング&eコマース ソリューションセールスディレクター 相原敬雄氏によると、国内ではゲーム、教育などでカード型のワンタイムパスワードの実績を有しているそうだ。今後は国内でも「Dynamic Code Verification」を積極的に展開していきたいとしている。