共通ポイント乱世の時代でも変わらずに成長を続けるTポイントの強みとは?

2016年4月6日8:30

魅力的な提携社の拡大、Tカードの付加価値向上、マーケティングの強化に力を入れる

Tポイント・ジャパン(TPJ)が運営する「Tポイント」は、日本人の4割にあたる5,743万人(アクティブ・ユニークユーザー)が利用するポイントサービスとなる。共通ポイント戦国時代の中において、現在も順調に提携社が増加し、新たな業種・業態での採用も進んでいる。また、Tポイントに加え、Tカード1枚でチケットやプリペイド電子マネーとして利用できるなど、汎用的なサービスへの広がりも見せている。

ハイブランドの業態、ガスや電気の生活インフラも開拓
ヤフーを中心にWebでの浸透も進む

Tポイントは、2016年1月末で提携者数が134社、ネットとリアルを合わせて49万店舗で利用可能だ。そのうち、リアルが約10万店舗、ネットが39万店舗となっている。Tポイント・ジャパン 取締役 アライアンス・コンサルティング本部 本部長 長島弘明氏は、「2015年度は三越伊勢丹様、吉野家様などのナショナルチェーンが11社参画いただけました」と成果を口にする。

Tポイント・ジャパン 取締役 アライアンス・コンサルティング本部 本部長 長島弘明氏
Tポイント・ジャパン 取締役 アライアンス・コンサルティング本部 本部長 長島弘明氏

近年は、複数の共通ポイントが展開されているが、過去1年の提携先の顔触れを見ても、毎月、順調にナショナルチェーンの提携先が拡大している。加盟店との関係もより強固になっているため、他社への切り替えなど、大きな影響は受けていないとしている。

さまざまな業種の提携社の開拓が行われているが、昨今は電力やガスなどの生活インフラでも採用が進んでいる。また、地方の有力なスーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなどへの営業も引き続き注力。さらに、交通、航空などへの営業も継続して行っている。

長島氏は、「これまでの提携社は、コモディティなブランドが中心でしたが、百貨店大手の三越伊勢丹様が提携社に名を連ねていただいたように、百貨店を中心として、ハイブランドな業態にもチャレンジしていきたいですね」と意気込みを見せる。

流通企業の中には、マルチポイントを展開するところもあるが、「色々なシーンで貯める、使える利便性はもちろん、企業にとってはデータベースを使ったマーケティングが重要となります。データベースが割れてしまうのは、マーケティング上避けたいところではありますが、東京電力様のようなインフラ系の企業は顧客利便性を追求して、複数のポイントを導入する可能性があると思います」と長島氏は説明する。

また、当初はリアルを中心にポイントサービスを展開してきたということもあり、Webでの浸透は課題の1つであったが、TPJの株主でもあるヤフー(Yahoo! JAPAN)が積極的な取り組みを行っていることもあり、ECへの送客についての目標値はクリアしているそうだ。また、リアルからネット、ネットからリアルへの送客に関しても成果が表れ始めている。

中小の加盟店の開拓も進んでおり、1万店舗ほどとなっているが、「さらに一ケタ上げていかなければなりません」と長島氏が話すように、まだまだ満足していないようだ。

より幅広い層の会員に訴求する意味では、人気アニメやアーティストなどとのコラボレーションカードの発行も進んでいる。キャラクターカードは、当然、趣味で入会する人もいるが、たとえば「妖怪ウォッチデザインのTカード」については発行枚数が多いだけではなく、会員の購買率が高まっている。今後もTSUTAYAなどと連携し、新しいキャラクターカードを発行していく方針だ。

「Tカード(弱虫ペダルデザイン)」を2016年3月25日よりTSUTAYA店頭にて発行するなど、キャラクターやアーティストとコラボレーションしたカードも増えている
「Tカード(弱虫ペダルデザイン)」を2016年3月25日よりTSUTAYA店頭にて発行するなど、キャラクターやアーティストとコラボレーションしたカードも増えている

提携社に提供するスマートフォンアプリをリリースへ
2万店舗で「POSクーポン」を発行し、離反や新規客を送客

スマートフォンを活用した機能の拡充にも力を入れる。カメラのキタムラやTSUTAYAで展開しているTカードのモバイル機能(FeliCa)に加え、認証、決済、チェックインなど、会員とのタッチポイントとしてスマートフォンの活用を想定している。

たとえば、マルエツでは、Android端末およびiOS端末向け新アプリ「マルエツチラシアプリ」を提供しており、API連携によるクーポンの振り分け、買い物履歴の確認、スタンプラリーや商品交換等で活用されているが、今春には各提携社に提供するスマートフォンアプリをリリースする予定だ。

また、TPJのデータベースを活用し、スマートフォンに実装する機能については、FeliCaだけではなく、バーコード等を含めて検討している。

相互送客できる強みを生かし、アライアンス先と連携したさまざまな企画も展開。例えば、ソフトバンク、すかいらーく、TSUTAYA、ファミリーマートと連携し、「ファミリーマート」、「ガスト」、「TSUTAYA」を利用した場合、2015年10月9日からTポイントを3倍付与する取り組みを行っている。また、ヤフーでもTポイントを活用した積極的な販促施策を実施している。

ソフトバンク、すかいらーく、TSUTAYA、ファミリーマート、Tポイント・ジャパンは、2015年9月7日に記者会見を開催し、ソフトバンク携帯電話の利用者が、ファミリーレストラン「ガスト」や、書籍、DVD・CDなどのレンタルや販売の「TSUTAYA」を利用した場合、2015年10月9日からTポイントを3倍付与すると発表
ソフトバンク、すかいらーく、TSUTAYA、ファミリーマート、Tポイント・ジャパンは、2015年9月7日に記者会見を開催し、ソフトバンク携帯電話の利用者が、ファミリーレストラン「ガスト」や、書籍、DVD・CDなどのレンタルや販売の「TSUTAYA」を利用した場合、2015年10月9日からTポイントを3倍付与すると発表

さらに、アライアンス企業間の送客ツールとして活用できる「POSクーポン」を発行して他店舗への来店を促す取り組みを2万店舗で実施。長年の取り組みの成果もあり、施策は洗練化されており、精度も年々高まっているそうだ。

「店舗を利用したことがない人、離反した人をどう戻していくかなど、クーポンの発券拠点を工夫することにより、顧客基盤を融通しあうことが可能です」(長島氏)

東京モーターショーの「Tチケット」利用は想定を大幅に上回る
「Tマネー」はチャージ手段の拡充を検討

共通ポイントとして浸透した現在、単純なポイントサービスにとどまらず、チケットやマネーなど、Tカードに新たな付加価値を持たせる取り組みもスタートしている。「Tチケット」では、Tカードがライブやイベントなどの入場チケットとして使用可能だ。例えば、2015年10月29日~11月8日まで、東京ビッグサイトで開催された「第44回東京モーターショー2015」では、T会員があらかじめネットで購入手続きを済ませれば、チケットの発券や発送もなく、Tカードで入場できるチケットサービスを実施した。

 

「Tチケット」購入者への特典として、入場列が混んでいる時も「Tチケット専用レーン」から入場できるサービスを提供し、スムーズな入場が可能となった。具体的な数値は非公表だが、想定よりも遥かに多くの利用があったという。また、Tポイントが貯まるブースにも多くの人が詰めかけた。さらに、主催の一般社団法人日本自動車工業会では、前回までのイベント時に一部の人からアンケートを取得していたが、どのような属性の来場者が訪れているのかを把握できなかった。その点、Tカードをスリットするだけで、男女、年代、居住地の大まかなデータを把握することが可能となった。

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「Tチケット」購入者は「Tチケット専用レーン」から入場できた

一方、プリペイド型の電子マネー「Tマネー」については、ファミリーマート、TSUTAYA、ウエルシア、ドラッグイレブン、ドラッグユタカ、東武ストア/フエンテ、ドッグストアmacなどで採用が進んでいる。利用が多い店舗の場合、来店客の20%程の提示率となっているが、業態特性によって利用に偏りがあり、サービスとして浸透するのは時間が必要な部分もある。ただ、一度利用してもらい、その良さを実感してもらえれば継続して利用される傾向にある。今後は店舗のレジに加え、クレジットカードからの入金など、チャージ手段の拡充についても検討している。また、TSUTAYAでは、ギフトとしてプレゼントできるPOSAカードも展開している。

Tマネーは「Tマネー」を贈り物としてプレゼントできるPOSA型ギフトカード『Tマネーギフトカード』を提供
Tマネーは「Tマネー」を贈り物としてプレゼントできるPOSA型ギフトカード『Tマネーギフトカード』を提供

手数料率で争うよりも送客やマーケティングにおける付加価値で勝負
早期の6,000万人のアクティブ会員達成を目指す

共通ポイント戦国時代の現在、業界最低水準の手数料を売りにしているサービスも出てきているが、今後も共通ポイントの先駆者として、手数料率で勝負するよりも提携先への送客やマーケティングの課題を解決する点に目を向けていきたいとしている。

「手数料を武器にした瞬間に、料率のたたき合いになるだけであり、新規のお客様を獲得できる仕掛けやノウハウ、データ分析の分析など、見合う価値を提供していきたいです」(長島氏)

最終的には日本全人口の1億2,000万人にTカードを保持してもらうことが理想だが、まずはアクティブ会員6,000万を早期に達成させたいとしている。今後の目標について長島氏は、「お客様に対しては『さらに便利に使える拠点を増やしていく』『カードで利用できるメニューを増やす』、対企業様に対しては『データベースマーケティングを強化することで、売上アップに努めていく』ことになります」と語り、笑顔を見せた。

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