2016年8月8日8:41
訪日観光客を越境ECに誘導し地場小売業の進出・販売を支援
世界最大規模のオンラインマーケットプレイス「eBay(イーベイ)」への日本企業出店を支援するイーベイ・ジャパンはこのほど、米国eBayに京都に特化したECページを開設した。伝統工芸品などを扱う地域の製造業・小売業の越境EC進出をサポートするプロジェクトにおける第一弾として、まずは外国人に高い人気を誇る京都から着手。特設ページでは着物や茶器・和食器などの伝統工芸品を販売し、日本の文化である地場産業を支援する。決済業務を担うPayPalをはじめ、京都市や商工会議所などと組み、新規プロジェクトとして推進していく(著者:通販研究所 代表 渡辺友絵)。
越境EC客としてインバウンド客の購買を継続化
日本の高品質・高付加価値商品を世界展開するプラットフォームに
イーベイ・ジャパンが2016年8月5日に発表した「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」は、増加している訪日観光客を越境EC顧客に転換し購買の継続化を図るプロジェクト。その背景には、2015年の訪日観光客が1973万人を超えて前年比47.1%増と過去最大の伸び率になったことや、東京オリンピックの開催を控えさらに増加が予想されることなどがある。また、国内の伝統工芸品生産額は最盛期の5分の一程度の1040億円に減少している一方で、2015年度におけるeBayの日本伝統文化にかかわる商品取引額は約400億円にのぼり、世界市場では高い関心が持たれている。
中でも京都は訪日客の人気が高く、2014年の統計数値では観光客数・外国人宿泊者数ともに過去最高を記録している。訪日外国人の土産購入品目の購入率調査では「和服・民芸品」が12%を占めていることもあり、まずは多くの伝統工芸品を扱う京都の地場産業を同プロジェクトの第一弾としてリリースし、越境EC客への訴求度を高めていく。
PayPalなどパートナーと連携し総合的な取り組みに着手
集客や決済、参加店舗開拓、出品サポートを分担して実施
「eBay」は200カ国以上で展開し、年間販売額は約10兆円。ブランド中古品やビンテージ商品、カメラ、趣味用品など世界中から常時8億商品が出品されており、年間購入者数は1億6000万人にのぼる。プロジェクトにはイーベイ・ジャパンを中心に、200カ国以上で決済プラットフォームを展開するPayPalや、参加店舗支援を行うフォネックス・コミュニケーションズ、中小企業基盤整備機構、京都市、京都商工会議所と連携。イーベイ・ジャパンは日本国内におけるセラー(商品販売者)の獲得活動を行う中で、日本の高品質・高付加価値商品の越境ECプラットフォーム展開を検討していたが、これら企業などとのコラボにより総合的な取り組みが実現する。
8月5日の記者会見では、プロジェクト開始に際してeBay副社長兼アジア・パシフィック地域代表のJay Lee氏が「越境ECは日本事業者にとって大きな可能性を秘めており、今回のプロジェクトにより京都の事業者の皆さまとのパートナーシップを深めていきたい」とビデオメッセージを通じて語った。
協業プランとしては、イーベイ・ジャパンがプラットフォームの構築・提供をはじめ、パートナーを通じてシステム構築や物流などのインフラ整備を手がける。PayPalはバイヤー(購入者)の集客を担当し、自社プラットフォームの利用者にメールを軸としたプロモーション活動を行う。さらに、訪日観光客のデータを活用したアプローチも視野に入れている。世界中に1億9000万人のバイヤーを持つ同社は昨年までeBayの傘下にあったが、分離独立後初の協業となる。「昨今は海外から京都市宿泊の予約決済業務が拡大しており、まずはアジア市場を中心に集客に乗り出す」(野田陽介ビジネス開発部長)という。
フォネックス・コミュニケーションズは、京都セラーの開拓・獲得および翻訳・出品データ作成といった出品サポート支援業務で参画。倉庫などの物流サポートも手がけていく予定でいる。中小企業基盤整備機構は、今後国内の中小企業が海外に進出するための啓蒙活動や各種支援を担う。京都市と京都商工会議所は、京都の製造業や小売業が越境ECに参入する際の支援を担当する。
京都特設ページはまず22社からスタート
アプリやステッカー活用し来店時の購入アシストも実施
京都特設ページにはスタート時点でメーカー・小売事業者22社が参加し、和服や器、織物、茶器などを販売。ページ内には京都に基づく独自のカテゴリ検索を設け、「訪日外国人の人気商品」「伝統と現代デザインの融合」「匠コレクション」などをキーワードに商品検索ができる。ほとんどが手づくりや伝統工芸技術を使った地元発の商品で、制作工程や和服の着付け方法など興味を持ってもらえそうな幅広いコンテンツも提供する。参加店舗の店頭にはステッカーを貼り、来店客がeBayサイトにアクセスすればその店舗の詳細を英語で紹介するなどのアシスト手法で購入促進につなげる。
同プロジェクトの収益基盤については、eBayやPayPalが設定している標準の手数料に準じて徴収。ただ、全体の取りまとめはフォネックス・コミュニケーションズが行うため、メーカー・小売業者がどこまで業務を代行するかによって手数料が変化する可能性もある。掲載商品数や売り上げについての目標は具体的には決まっていないというが、第一弾である京都ページの動きを踏まえ、地方再生支援策として他の自治体にも拡大していく。