2016年10月5日9:12
金融(決済・貯蓄)の魅力に加え、日常生活をより豊かに、楽しくするサービスを目指す
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の福岡銀行では、2016年10月からJCBブランドのデビットカード「Debit+(デビットプラス)」を発行する。それに先駆け、FFG傘下のiBankマーケティングでは、金融サービスプラットフォーム「iBank(アイバンク)」が提供する中核サービスプロダクトとして、FFG傘下の福岡銀行の総合口座普通預金と連携(口座登録)可能なスマートフォン専用アプリ「Wallet+(ウォレットプラス)」を開始した。また、日々の暮らしの情報コンテンツ「mymo(マイモ)」も提供するなど、金融とITを融合させた新たなマーケティング展開への準備を着々と進めている。
金融と非金融、日常と非日常をシームレスにつなぐサービスを目指す「iBank」
JCBブランドのデビットカード「Debit+」を10月から発行
iBankマーケティングは、情報通信サービス業に属する事業を主たる業として営むフィンテック関連企業だ。同社が福岡銀行などと連携して提供する金融サービスプラットフォーム「iBank」は、金融と非金融、日常と非日常をシームレスにつなぐマネーサービスを目指している。「iBank」では、銀行ならではの金融機能(決済・貯蓄等)に加え、ライフスタイル/ライフイベントに隣接する非金融サービスの領域もカバーするサービスブランドとして、さまざまなプロダクトを提供していく。
7月22日には、スマートフォン専用アプリ「Wallet+」を一般公開。同アプリは、福岡銀行の総合口座普通預金と連携することで、日々の収支がわかる「お財布」機能や、アプリ専用の貯蓄預金口座を開設することで、手に入れたい目標に向けてスタートできる「ちょこっと預金」、「目的預金」が「Wallet+」内で利用できるマネーサービスとなっている。
また、6月7日にスタートしたWebサイト版情報コンテンツ「mymo」では、日々の生活やライフイベントにおいて、ちょっと“お得”でちょっと“賢い”生活を送るためのヒントになるような情報を配信。専門家や著名人の協力を得てコンテンツの制作を行っており、暮らしや趣味、ビジネススキル、地元の情報などを、スマートフォンやパソコンで閲覧することができる。
10月には、JCBブランドのデビットカード「Debit+」を発行する予定。同カードはキャッシュカードとの分離型で、福岡で浸透した交通系ICカード「nimoca」とセットになっている。そのため、日常の交通乗車から支払いまで、1枚で便利に利用してもらうことができると期待している。
「Debit+」と「Wallet+」の連携で、口座の照会や預金管理が可能に
「ちょこっと預金」「目的預金」など独自サービスも展開
たとえば、「Wallet+」と「mymo」がVersion1.0であれば、デビットカードの発行は1.5となる。iBankマーケティング 代表取締役社長 永吉 健一氏は、「ここまでは当初描いてたとおり順調に進んでおり、テレビCMなども含めた本格的なアプリのプロモーションは10月のデビットカード発行のタイミングを予定しています。『iBank』はプラットフォームビジネスにしており、アプリも自社開発しているため、段階的にサービスの追加が可能です。デビットカードを発行して終わりではなく、Version2.0、その次は3.0といったように、新たなサービスの企画・構築に向けて準備をしています」と説明する。
「Debit+」と「Wallet+」を連携させると、口座の残高や決済の利用履歴の照会、収支の確認が可能だ。また、旅行など、目標に向かって利用者が無理なく、着実に一定額を毎月積み立てることができる「ちょこっと預金」を提供。さらに、「目的預金」では、メイン口座から貯蓄口座に振り替えることができる。
「『Wallet+』では、アプリに多く触れていただく仕掛けを作っています。デビットカードを日常の生活の中でお使いいただくと、実質的な家計簿のようなものができますので、収支管理の機能で閲覧していただけます」(永吉氏)
また、情報コンテンツ「mymo」を提供することで、非金融サービスにアクセスしてもらうことが可能だ。「mymo」では、お気に入りの情報を仲間同士で共有したり、ストック(蓄積)する機能があるため、『Wallet+』と連携して、さまざまな提案を行うことができる。
「『mymo』では、非金融のライフスタイル、ライフイベントの情報を配信しており、ユーザーがこんな情報を見たい、欲しいといったニーズを喚起した上で、パートナー企業に送客するための仕掛けも作っています」(永吉氏)
CLOでは「Wallet+」でしか手に入らないクーポンを提供へ
「Wallet+」利用者はポイント付与が2倍に
カード決済情報と連動したクーポン利用(CLO: Card Linked Offer)も10月からスタート。「Wallet+」では、“旅行”“家”などといった目的預金別のクーポンページからクーポンを選択し、その店舗で決済すると、クーポン別のポイント(リワード)が付与される。従来のCLO同様に、店舗側の特別なオペレーションは不要だ。
「クーポンの提供企業にとっては、対象者に効率的なアプローチが可能です。その分、クーポンの提供企業には、“ここにしかないようなクーポンを配信していただけませんか?”というお願いをしています。福岡は一定の広告マーケットはありますが、大企業ばかりではなく、紙からデジタル媒体へのシフトについて悩まれている中小企業も多いです。お客様に信頼いただいている銀行の関連会社がメディアを保有しており、目的預金等の情報から、明確な利用意思がある方にアプローチができるという点で、関心をいただいています」(永吉氏)
8月30日には、福岡の企業を対象に『FFGデジタルマーケティングセミナー』を実施。永吉氏は、「200名規模の開催となりましたが、受付開始後10日ほどで満席となり、非常に高い関心をいただきました」と成果を口にする。CLOのクーポンは、開始当初は50社ほどの参加を予定。最終的には数百社の利用を見込んでいる。また、現状、「Wallet+」でのCLOの対象は「Debit+」の利用者だが、段階的にクレジットカード「アレコレカード」も追加していく方針だ。
「Wallet+」の利用活性化に向け、「Debit+」では、「Wallet+」を口座と連携した人には通常の2倍のポイントが貯まるようにする。同社のアンケートによると、ポイントサービスはいつの間にか期限が来て失効してしまう、何に交換してよいのかわからない、という意見が多かったという。
永吉氏は、「『Wallet+』では、若い社会人や女性をメインターゲットとしていますが、その8割が「ポイントの現金化」を希望されていました。そのため、「Wallet+」では、ポイントを目的預金に振り替える機能を付けています。また、主要な共通ポイントにも交換できるように準備を進めています」と話す。なお、nimocaと預金サービスとの連携は10月からスタートする予定だ。
新たな決済の技術についても研究を進める
サービスを今後も“+(プラス)”して顧客自らのサービスを作ってもらう
そのほか、FFGでは、独自電子マネー、リアルタイム口座振替、ブロックチェーンの技術など、新たな金融/決済の仕組みについても研究を進めている。銀行として、“如何にトランザクションコストを低く抑えるか”、“顧客の利便性をさらに高めていくこと”を視野に入れて、決済以外にも、おサイフケータイや生体認証などの技術の活用を含め、全方位的に検証している。
現在、福岡銀行の口座数は約350万。「Wallet+」のダウンロード数については、「アプリでのサービスなので、5年後に100万ダウンロードを目指したいですね」と永吉氏は話す。iBankマーケティングの収益源は、広告やクーポンによる送客手数料、銀行代理業などとなるが、現在までの展開には手応えを感じているようだ。
永吉氏は、「これまでの金融サービスは、作ったらそのままというケースも多かったが、『iBank』はお客様起点の新しいアプローチで作ったサービスになりますので、日々進化していかなければ駄目だと考えています。アプリの機能改善はもちろん、プラットフォームビジネスとしても進化させていきたいです。個別のサービス名に“+(プラス)”が付いているのは、ユーザーが好きなサービスを追加し、自分だけのサービスを作っていただくためでもあるので、単に次のサービスを見据えていきたいですね」と語り、笑顔を見せた。