2017年3月23日7:05
中国人観光客に対してのプロモーション効果で店舗の魅力は着実に伝わる
老舗ディスカウントストアとして食品・生活用品・医薬品から家具・家電・衣料品に至るまで、幅広い商品を取り扱う多慶屋では、2015年12月1日から、ANT FINANCIALが展開する中国人向け決済サービス「Alipay(アリペイ)」の店頭決済を導入している。多慶屋では、W12(12月12日に行われたアリペイのフェア)や春節(旧正月、2017年は1月27日~2月2日)などのイベントと合わせ、さまざまな取り組みを実施してきたが、いずれも国内屈指の実績を上げている。
KOLが自身のアカウントで商品をPR
爆買いが減る中、客数は対前年比131%を記録
多慶屋では、2015年のW12に合わせる形で「Alipay」を導入。同月は同店全体で推定2万5,000人の中国人客が来店し、免税手続件数は約8,300件、免税基準額を超えるAlipay決済は約3,900件にのぼり、免税販売件数のうち46.98%を占める結果となるなど、想定以上の結果となった。
2016年のW12では、Alipayのプロモーションで多慶屋の店舗の紹介が行われ、送客に結び付けることができた。同取り組みでは、店舗に、Alipayが推薦する影響力のあるブロガーであるKOL(Key Opinon Leader)を派遣し、4日間滞在させた。KOLは、1日中、各々のアカウントを使ってファンに向けて、店舗の商品を紹介しつつ、アプリ内のライブショッピングに誘導した。今回、選ばれたKOLは日本の商品や小売り事情に詳しく、それぞれが数万人のファンを有している。W12は9~12日までの4日間のイベントだったが、ライブショッピングでは同時に多くの人が視聴した。多慶屋でも複数のKOLがローテーションを組み商品の紹介を行った結果、同期間中のスマートフォン経由の売上は1,000万円を超えた。多慶屋 企画部部長 伊藤欣司氏は、「Alipayのチャネルで弊社の宣伝をしていただけますので、送客効果としては非常に有益だったと感じています」と成果を口にする。
Alipayアプリには、W12に関する「日本攻略」ページがあり、ライブショッピングについて紹介。多慶屋も目立つ位置で告知されており、店舗への送客でプラスに働いた。さらに、Alipayには「紅包(ホンバオ)」というお年玉サービスがあり、中国人観光客の購買意欲が増したそうだ。Alipayアプリでは、ユーザーの半径1キロ、5キロといったように、現在地に近い場所で決済されたランキングが表示される機能を提供しており、多慶屋御徒町本店、多慶屋SELECT上野店への送客につながった。
なお、中国の大型連休「春節」ではAR機能を利用したイベントが行われ、利用者は「福」を5つ集めると割引が受けられる特典が提供された。
多慶屋では、12月、1月にAlipayで決済した人に対し、割引施策を実施。その成果もあり、両月のAlipayの決済実績は各1億6,000万円となり、中国の旧正月(春節)にあたる2月の5日間でも3,700万円の実績を記録した。
多慶屋 企画部課長 馬躍原氏は、「旧正月の免税売上を見ると、中国税法の改正により、時計やブランド品のバッグといった高額品が下がったことにより、金額は前年と比べて落ち込んでいます。ただし、客数は対前年比131%と伸びています。確かに爆買いは減りましたが、お客様の支持は今まで以上にいただいています」と語り、笑顔を見せる。
今後もインバウンドのモバイル決済を強化
DCCを多慶屋全店で導入へ
なお、ANT FINANCIALでは中国での利用者の傾向などをもとにAlipay決済のモニタリングを実施。「たとえば、普段高額の買い物をしない人が高級時計を購入された場合、セキュリティチェックが入るなど、Alipayはセキュリティが高い決済サービスという実感があります」と馬氏は口にする。
今後も多慶屋では、モバイル決済の取り組みを強化していく方針だ。馬氏は、「単純にモバイル決済を導入しただけでは売上は伸びません。大切なのは如何にAlipayと意図するイベントを盛り上げて、お客様に訴求していくかがポイントです」と語る。実際、国内でAlipayを導入している店舗でも決済件数はそれほど伸びていないところもあるが、多慶屋ではANT FINANCIALの協力を得られたからこそ、短期間で定着したと感じている。今後はWeChat Payを活用した取り組みも行う予定だ。
そのほか、インバウンド施策として、日本のジェーシービーと連携し、台湾やタイのJCB会員を送客してもらっている。また、DCC(外貨建てカード決済サービス)を一部の店舗で導入しており、全店舗での展開を行う計画だ。