2017年4月10日8:00
地域に特化したサービスで着実に浸透
SAPICAは札幌市営地下鉄、札幌市電をはじめ札幌圏内の交通機関で利用できる交通系ICカード。2009年に発行されて以来、確実に発行枚数・売上を伸ばしている。堅調の秘訣はポイント付与やオートチャージ、電子マネーとして北海道で圧倒的なシェアを誇るローカルコンビニチェーン「セイコーマート」で利用できるといった地域のニーズに即したサービスの充実にあるようだ。
地下鉄、市電バスの乗車券として浸透
電子マネー対応店舗・施設は拡充
SAPICA(サピカ)は、札幌市交通局が運営する地下鉄・市電、北海道中央バス、ジェイ・アール北海道バス、じょうてつ3社のバスの乗車券として利用できるICカード。
名前には「サッと取り出して、ピッと利用できるSAPPORO(さっぽろ)のICカード」という意味が込められており、その名の通り、カードの読み取り部にタッチするだけで運賃を自動的に精算。定期券の乗り越し料金も事前にチャージ(入金)しておけば、タッチするだけで利用できる。カードシステムはFeliCaのサイバネ規格を採用しているが、ICカードとリーダ・ライタの通信時に使われるFeliCaシステムコードと暗号鍵はSAPICA独自のものを使用。そのため、Kitaca、Suicaなどの相互利用可能な他の交通系ICカード乗車券は片利用のみ。KitacaやSuica等をSAPICA加盟事業者の乗車券として利用することはできるが、SAPICAはJR北海道をはじめ他のICカードエリアで乗車券として使うことはできない。
「SAPICAをJR北海道で利用可能にするための協議は継続して行われていますが、実現には至っておりません。それよりも、札幌市としては市民カードとしてより便利に活用してほしいと思い、サービスの拡充を図っております」。(札幌市 総務局 情報システム部 システム調整課 システム調整課長 長沼秀直氏)
2011年には電子マネーのサービスを開始。市役所税の証明窓口、各区役所(戸籍住民課)、各市税事務所(納税課)でSAPICAの電子マネーが利用できるようになり、同年11月には札幌市内のセイコーマートでも使えるようになった。電子マネーが使える店舗・施設は札幌市内を中心に拡充しており、現在では、さっぽろ地下街、地下鉄大通駅構内のセブン-イレブン、さっぽろ駅・大通駅・すすきの駅構内のキオスク、清涼飲料水の自動販売機や自動証明写真機の一部にも対応。札幌市円山動物園の入園料としても利用可能である。
オートチャージの普及が急伸
図書館の貸出機能などを模索
また、ポイント付与やオートチャージといったサービスも展開。地下鉄・バス・市電では、SAPICAの利用金額10%をSAPICAポイントとして付与。セイコーマートでも、SAPICAでの支払い額に応じてSAPICAポイントが貯まる。貯まったポイントは1ポイント1円として運賃にのみ利用可能。降車するときに、支払う運賃以上のポイントがある場合は、ポイントが自動的に運賃の支払いに使われるので、ポイントの未使用や失効がないのが魅力である。オートチャージは、地下鉄の改札機やバス・市電の運賃箱のカード読み取り部にタッチしたとき自動的にチャージ(入金)される便利な機能。チャージ金額は1,000~3,000円で設定できる。
「SAPICAの発行枚数は年々増加し、発行枚数は2017年1月現在約130万枚。札幌市民は195万人ですからかなり普及しています。交通乗車券としての利用も高く、全体の利用件数(輸送人員)に占めるSAPICAの利用率は各交通事業者とも約70~75%となっております。また、オートチャージの利用も進んでいます。2016年9月のチャージ件数121万件のうちオートチャージは30万件(全体の24.9%)、前年同月比+14.0%、チャージ金額21億7,200万円のうちオートチャージは4,000万円で、前年同月比+13.6%となっています」(同部係長 池田剛氏)
オートチャージにはクレジットカードが必要になるが、JCB、Visa、Mastercard、American Expressとその提携カード(地元カード会社のニッセンレンエスコートやほくせん、札幌北洋カードなどの地元銀行カードなど)に対応。1枚のクレジットカードで家族5人まで登録できるのも好評である。また、発行枚数伸長のために、札幌市交通局ではSAPICA専用の改札機の設置や、所有者限定のイベントなどを開催してプロモーション。札幌市でも環境局が主体となりLED照明を札幌市内で購入・設置した世帯にSAPICAを交付する施策を実施している。さらに、2014年には記名式のSAPICAには、札幌市内約40カ所の図書館の貸出機能を追加。今後も市民にとって利便性の高いサービスを充実させていく予定だという。