2017年4月17日17:42
ミック経済研究所は、国内におけるEC(電子商取引)のネット決済代行サービスを対象とした「ECにおけるネット決済代行サービス市場の現状と展望 2017年度版」を発刊した。同レポートによると、ネット決済代行サービス市場規模は2017年度から2021年度まで平均成長率16.1%で推移し、2021年度には4,288億円の市場規模になると予測されている。
同マーケティング資料は、国内におけるネット決済代行サービス事業者(PSP:Payment Service Provider)を対象に、各社のネット決済代行サービス売上及び市場の動向について調査している。同調査では、各社の売上実績および予測値を、契約形態別(決済処理型、収納代行型)、決済手段別(クレジットカード、コンビニ、電子マネー、ネットバンク、モバイルキャリア、振込/ATM、国際決済など)、商品カテゴリ別(物販、デジタルコンテンツ、サービス、公金・公共料金)といった観点から集計・分析している。また、各社の動向を積み上げ、2021年度までのECにおけるネット決済代行サービス市場の中期予測をしたという。
同調査によるとネット決済代行サービス市場規模は、2016年度で202,900百万円、2017年度で前年度比118.6%の240,600百万円となる見込み。
経済産業省の「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、日本の消費者向けEC市場(BtoC)規模は、2015年で前年比107.6%の13兆7,746億円に拡大している。2014年の前年比114.6%の伸び率を下回り、若干鈍化したものの依然として市場の拡大が続いている。
ここ数年で企業に限らず個人でも簡単なコードをWebサイトに組み込むだけで直ぐに決済サービスを導入できることを売りとする事業者の参入、一方、ECサイトそのものも2013年末から始まったYahoo!JAPANの出店無料化などの影響などにより、ECに新しく参入する事業者や個人が増加し続けている。さらにEC専業の中小規模ショップだけでなく、ECサイトと実店舗の両方を持つ事業者や直接消費者に販売するメーカー直販サイト、カタログ通販やテレビ通販などの従来の通販企業など、実店舗や既存のチャネルに加えてネットも重要な販売チャネルとして注力する企業が増え、PSPにとっての顧客が増えているそうだ。
EC市場もネット決済代行サービス市場も順調に拡大する中、クレジットカードの不正利用やカード情報の漏洩問題が深刻になっている。そこで安心・安全なクレジットカードの利用を実現するために2015年3月にクレジットカード会社だけでなく、PSPや加盟店、ネットワーク事業者、POSメーカーなどさまざまな関係先が協力し合って議論できる場として「クレジット取引セキュリティ対策協議会」が設置された。そして同協議会が取りまとめて発表した「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画」に基づき、カード情報の非保持化と保持する事業者にはPCI DSSへの準拠を求めるなど、2020年に向けてカード決済におけるセキュリティ強化が徹底されると予測される。PSP側としてもカード情報の非保持化の推進と不正利用対策の強化が急務になっており、トークン決済の提供や不正検知システムを導入するなど、自身の対策を強化するとともに、不正利用が発生した際のチャージバック(クレジットカード会社から加盟店への支払い拒否)を保証する事後のサービスまで提供する事業者も増えてきている。
価格圧力とセキュリティ投資の増加で益々競争が厳しくなる中、今後も国内のEC市場は順調に成長していくと予測。EC化率も引き続き上昇が見込まれ、ネット決済代行サービス市場も競合との差別化に成功した企業が勝ち残るような厳しい市場環境に変わりつつ、高成長が続くとした。