2018年4月20日8:00
福岡県を基盤に鉄道・バスを運行する西日本鉄道では、2008年より電子マネー機能を備えたIC乗車券「nimoca(ニモカ)」を運用。これまで340万枚を発行している。うち、会員登録済みのカードは6割。交通とショッピングの利用比率は8対2。金融機関や学校法人、県外の交通機関や企業とのアライアンスによって、ユーザー、加盟店の拡大が図られている。
福岡発のIC乗車券「nimoca」
銀行や学生証との連携も進む
福岡県を基盤に鉄道・バスを運行する西日本鉄道では、2008年より、定期券も搭載できるIC乗車券であり、電子マネーとしてショッピングにも利用できるnimoca(ニモカ)を発行している。無記名式で券売機やバス車内でも購入できる「nimoca」と、会員登録が必要な「スターnimoca」、クレジットカード機能やオートチャージ機能も付いた「クレジットnimoca」の3種類があり、電車・バスの乗車でポイントが付くほか、「スターnimoca」「クレジットnimoca」では加盟店でのショッピング・利用でもポイントが貯まる。
提携カードとしては、JALやANAのマイルとnimocaポイントとの相互交換が可能な「JMB nimoca」「ANA VISA nimoca」がある。また、福岡女学院大学、純真学園大学、筑紫女学園中・高等学校、学校法人麻生塾などでは、学生証にnimocaの機能を搭載している。
金融機関との提携としては、福岡銀行、西日本シティ銀行、福岡中央銀行、北九州銀行、熊本銀行、宮崎太陽銀行、佐賀銀行のそれぞれとキャッシュカード一体型「クレジットnimoca」を発行。福岡銀行とは、「デビットnimoca」も発行している。
アライアンス先を増やすことは、nimocaの新規会員獲得に直結する。さらに、残高が一定額以下になると自動改札機などにタッチした際に自動的にクレジット決済でチャージが行われるオートチャージ機能を設定している会員は利用金額が高いことがわかっているので、そのオートチャージ機能を搭載できる「クレジットnimoca」の会員を獲得するためにも金融機関等とのアライアンスは大変重要だ。
九州各地や函館の交通機関に導入へ
100年以上のバス運行システムが強みに
さらにnimocaは、熊本市電、大分交通、宮崎交通、北海道の函館市電など、福岡県外の数多くの交通機関に導入されている。
「100年以上のバス運行経験に基づいて開発したnimocaのシステムは、乗り継ぎ割引サービスや、乗降区間・経由を指定する定期券(多区間定期券)など、乗合バスで想定されるサービスをほぼ網羅しています。これらが評価され、佐賀県唐津市の昭和自動車さまの導入を皮切りに、多くの自治体さまや交通事業者さまから共通利用についてお問い合わせをいただいているところです。使える範囲が広がれば公共交通の利便性が高まりますので、われわれにとっても歓迎すべきことと捉え、システム・センター利用をパッケージ化して、ご提供しています」(西日本鉄道 事業創造本部 ICカード事業部 課長 田端敦氏)
加盟店拡大に伴いショッピング利用が増加
ショッピング比率3割を目指す
2017年末現在で、nimocaの発行枚数は340万枚。そのうち会員登録が必要な「スターnimoca」「クレジットnimoca」は6割。ニモカ 営業部長 洲脇寛氏は、「この比率は上昇傾向にあります」と話す。
ユーザーのニーズを吸い上げて施策に活かすために、同社では会員登録を促進したい考え。そのためには、ショッピング利用でポイントが付く加盟店を増やすことが重要だ。
現在、nimoca電子マネー加盟店としては、主に西鉄駅構内の売店および自動販売機、西鉄グループのにしてつストア、スピナ、スピナマートや、百貨店、専門店、飲食、ドラッグストア、レジャー、ホテル、タクシーなど、幅広い業種業態をカバー。また、県外ではnimoca導入交通機関との電子マネー加盟店開拓に関する業務提携を進めている。
加盟店が増え、交通以外の利用が拡大していることに伴って、ショッピング利用のうち、グループ外利用は半数を超えた。現在、交通とショッピングの利用比率は8対2。洲脇氏は、「利用拡大を図るのは当然ながら、nimoca導入交通機関とも連携をとり、まずは比率を7対3にしたいと考えています」と意気込む。目標に向けて、利用できる場所を案内するツールを作成するなどして、サービスの周知徹底を図っていく意向だ。
nimocaはサービス開始に当たって設立された株式会社ニモカを中心に、グループ内アライアンスにより運営されており、その全体で見れば収益は十分に確保できているという。前出・田端氏は、「現在、海外からの技術支援の要請なども受けているところで、新しい可能性に向けて、積極的な挑戦を続けていきたいです」と語った。