1.プリペイド決済市場の業種別動向

 上記の留意点を前提に、プリペイド決済市場約90%の動向を見てみたい。 
(1)28年度と比較して、29年度の発行額が増加している主な業種(1兆円以上) 
①発行専門会社 1兆5,840億円
 ⇒1兆7,330億円 前年比 約109% 
②スーパー 1兆9,320億円
 ⇒1兆9,860億円 前年比約103% 
③運輸 1兆5,280億円
 ⇒1兆6,230億円 前年比約106% 
④クレジット 2兆9,960億円
 ⇒3兆3,050億円 前年比約110% 
(2)28年度と比較して、29年度の発行額が減少している主な業種(1兆円以上) 
①その他 12兆6,900億円
 ⇒11兆2,700億円 前年比約87%(約13%減少) 
となり、「その他」の業種の減少額が大きく、増加した各業種の発行額を呑み込み、発行額全体を引き下げたことが分かる。

ではプリペイド市場全体に影響を及ぼした業種とは何か。各種データ等を収集・分析した結果、パチンコ業界と推定した(当研究所見解)。

その推定に結びついたデータが、(図表5)のゲームカード・ジョイコホールディングス(パチンコカード事業者)の決算資料である。

(図表5) ゲームカード・ジョイコホールディングス決算資料 単位:百万円

この資料によれば、平成25年以降同社のパチンコカード発行額は毎年度約1兆円前後減少しており、その影響が、もろに「その他」の業種に反映されたと考えられる。

このため、上記で示した増加業種の発行額の増加分では、プリペイド発行額の全体の減少傾向を止めることはできなかったと推察される。 

2.プリペイド決済市場の媒体別動向

 次にプリペイド決済市場の動向を、(図表6)の媒体別の発行推移から見てみる。

(図表6) 媒体別発行額の推移(日本資金決済業協会資料) 単位:百万円

前掲の「第19回 発行事業実態調査統計」で示されているサーバ型、IC型、磁気型、紙型の媒体別発行額推移から読み取れる特徴は以下の通りである。

①サーバ型、IC型が共に減少。発行額全体の減少の主要因となっている。この背景に関しても、IC型、サーバ型プリペイド発行額の50%以上を占めているパチンコ業界(推定)の売上衰退傾向が影響して
いる。 
②パチンコ業界を除いたサーバ型、IC型、磁気型の発行額推移に関して見てみると 
A.3媒体(紙媒体除く)の合計発行額 
 平成26年      20兆5,285億円 
 平成27年      20兆7,990億円 
 平成28年      20兆458億円 
B.パチンコ発行額 
 平成26年      11兆3,737億円 
 平成27年      10兆4,667億円 
 平成28年       9兆1,051億円 
C.パチンコ発行額を除いた3媒体の合計発行額 
 平成26年 A-B= 9兆1,548億円 
 平成27年 A-B= 10兆3,323億円 
 平成28年 A-B= 10兆9,407億円 
となる。 
③3媒体に限定してみると発行形態の推移は、毎年堅調に伸びていることが分かる。ただ、磁気型に関しては発行規模が小さく(28年度は減少)IC型、サーバ型の2媒体をツール、基盤とするプリペイド事業が市場を支えていると判断される。

3.業種別・媒体別プリペイド動向の検証

 上記の分野別動向および媒体別動向をクロスした分析からプリペイド決済市場を整理すると以下のようなことが分かる。

①平成28年度の発行額の減少は、主にパチンコ業界の発行額不振による影響が強い。 
②パチンコ業界以外の発行専門会社、スーパー、運輸、クレジット業界の発行額は毎年堅調な伸びを示している。 
③上記4業界のプリペイド決済に採用されている媒体は、IC型、サーバ型が主流であり、4業種と上記2媒体発行額が同様の増加傾向を示している。

 ここでは、本統計の業種別分類ではなく、前掲の「支払手段一覧表」で分類されているカテゴリー別プリペイド決済を前提に、パチンコカードを除いた動向を見てみる。 
a)IC型電子マネー(モバイルを含む)が堅調に発行額を伸ばしている。 
 全国共通利用網により、Suica、PASMO、ICOCAなど交通系ICカードは堅調に伸びている。またnanaco、WAON、楽天Edyなど流通系電子マネーは、ポイントサービスとの連携により市場を伸ばしている。 
b)サーバ型電子マネー事業への新規参入もあり発行額が増加している。 
・インターネット上で利用できる電子マネー(WebMoney、Vプリカ、iTunes Card等)の増加と、それに伴い発行額も増加している。 
・リアル店舗とインターネット上で共用できる電子マネー(au WALLET、LINE Pay、おさいふPonta等)などの発行が相次いでいる。 
・ハウス型プリペイドカード・電子マネーの発行が多種多様に増加している(スターバックスカード、タリーズカード、CoGCa、ゆめか、miyoca等)。 
・主にギフト用に利用される(リアル・バーチャル)ギフトカード(百貨店ギフトカード、Amazonギフト券、iTunes Card等)などが増加、特にAmazonギフト券などは、ポイント交換商品として人気も高く、利用が増加している。

これまでのプリペイド決済市場は、どちらかと言えばハウス型のプリペイドカードや電子マネーが市場を牽引してきた。この傾向はバーチャル系のプリペイドカードを含め、しばらく続くと予想されるが、ブランドプリペイドカードの登場で、汎用型プリペイドカードが改めて見直されることも十分に考慮すべきであろう。

Ⅲ プリペイドビジネスの今後の可能性

 プリペイド決済市場は、2020年のオリンピック・パラリンピックに向け当面は、堅調に伸びていくと予測される。同時に、5年、10年スパンで今後の市場動向を考えた時に、成長への可能性はどこにあるのか、またその課題は何か、(図表7)では要点のみをキーワードとして示しておきたい。

(図表7) プリペイド決済ビジネスの今後の視点と課題(カード戦略研究所作成)

今後、電子マネー、プリペイド市場を拡大するためには、個々の取り組みも重要であるが、他の決済手段とのサバイバルの観点からも、全電子マネー共通インフラの実現(加盟店開放)に向けた業界の取り組みが課題となる。 

その上で、プリペイド決済の新たなビジネスモデルの構築を考えていくことが次へのステップではないかと敢えて付言したい。

 

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