2018年8月6日8:00
アクセンチュアが金融機関や企業のブロックチェーン活用を促進するプラットフォームソリューション開発
アクセンチュアは、 2018年8月3日、赤坂インターシティコンファレンス(東京都港区)で、 新たなブロックチェーン・ソリューションに関する記者説明会を開催した。同ソリューションは、ふくおかフィナンシャルグループのiBankマーケティングが進める、 地域ポイント管理システム構築プロジェクトでの採用が決定しており、2018年秋をめどに運用がスタートする予定だ。
アクセンチュアはブロックチェーン活用でビジネスを革新へ
複数のシステムを接続可能なブロックチェーン・ネットワークのハブへ
ブロックチェーンには、ITコストの低減、業務コスト低減やスピード向上、参加者が情報を共有して活用できるといったメリットがあるが、さまざまな課題も顕在化している。
アクセンチュアでは、2017年11月17日に「ACTS(アクツ)」、2018年1月31日に「AI-Hub」を発表。ACTSは、さまざまな外部サービスと連携し、マイクロサービスによるデジタル・エコシステムを実現して、パーソナライズなサービスを顧客に提供できるという。また、さまざまな外部AIエンジンを使い分け、データのガバナンスを保ちつつ、統合されたAIサービスを提供できるのがAI-Hubとなっている。この2つを活用し、ブロックチェーンによって、契約と情報を複数社、組織間で安全につなぐことができるとした。
ブロックチェーンは、昨年までさまざまなPoC(実証実験)が行われ、できることとできないことが分かってきたそうだ。一方で、ブロックチェーンのエンジンは戦国時代であり、利用者は何を選べばいいのか難しい時代となっている。さらに、ブロックチェーンの仕組みを入れたとしてもデータベースの機能だけであり、エンタープライズの中できちんと実装することが求められる。一種類に特化して、エンジンとビジネスシステムを密結合に構築しているケースもあるが、「エンジンが1個だけ生き残るとは思っていません」と、アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 テクノロジーアーキテクチャ グループ マネジング・ディレクター 山根圭輔氏は話す。実運用のためには、さまざまなチェーン・エコシステムの仕組みを同時に連携して、ビジネスに組み込めるような仕組みが必要であるとした。
山根氏は、アクセンチュアのブロックチェーン・ハブの特徴として、①さまざまなエンジンを接続して接続・利用可能、②複数のブロックチェーン・エコシステムをハブとしてつなぎ、連携可能。③データベース、プラスアルファの実エンジンを共通機能として準備する、④新ビジネスロジックの中心となるACTSとの連携により、疎結合で変化とスピードに強い業務システムを構築できる――4つを挙げた。
ブロックチェーン・ハブの利用の想定として、「デジタル・エコシステム時代の軽量金融機関系」としてP2P保険、デジタルバンクなど、地域仮想通貨エコシステム、コンソーシアム内での情報共有台帳、個人情報銀行、プライバシー保護データマイニング(PPDM)技術と組み合わせたプライバシー情報分析基盤、サプライチェーン・トレーサビリティ管理システムを挙げた。
スマートコントラクトで柔軟なキャンペーン設計が可能に
地域ポイントサービスの共通プラットフォームを目指す
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下のiBankマーケティング(iBank社)は、アクセンチュア協力のもと、2018年秋にブロックチェーン関連技術を活用した地域ポイント管理システムを構築し、ポイントサービスを軸とした地域における新たなサービスプラットフォーム構築を目指している。
iBank社は、金融機能と非金融機能を融合させたスマホアプリ「Wallet+」を展開している。2016年のリリースから2年間で50万ダウンロードを達成させた。そのポイントサービス である「myCoin」は、日々の「Debit+(ブランドデビットカード)」の利用や、Wallet+導入金融機関の各種キャンペーン等で獲得でき、貯まったポイントは預金口座へのキャッシュバックや他ポイントに交換が可能だ。他社とのポイント連携として、Tポイント、Pontaの共通ポイントに加え、西日本鉄道の交通系ICカード「nimoca」と提携している。今後は、デビット決済以外のサービス利用に基づく利得還元、地元経済圏の主要ポイント事業者との提携拡大、地元中小企業にポイントサービス機能を提供することなどを予定している。
iBank社では、すでにブロックチェーン関連技術の特性を活かしたサービス・機能の高度化に向けた検討を開始している。将来的にはポイント管理システムのオープン化により、さまざまな地域・事業会社との連携を通じた地域ポイントサービスの共通プラットフォームの提供を目指している。たとえば、柔軟かつ独自性のあるポイント発行ができるポイントプラットフォームを安価に提供したり、ポイント発行企業の増加や、ポイント利用メニューの拡充を通じて、より貯まりやすく、使いやすいポイントサービスを実現させていきたいとした。さらに、ポイントにより、購買・消費活動を 促進することを通じて地域経済に貢献していく方針だ。
新たなプラットフォームでは、アクセンチュアのブロックチェーン基盤により、「Smart Contract(スマートコントラクト)」による柔軟なキャンペーン設計、事業者向けの独自ポイント発行、クロスチェーンによる外部ブロックチェーンとの価値交換が実現可能だ。
注目を集めるQRコード・バーコード決済との連携は?
従来のポイントサービスの違いはロジックを組み込める点
今後は、国内で盛り上がりを見せるQR・バーコード決済との連携も構想としてある。たとえば、福岡銀行ではQR決済サービスである「Yoka!Pay」を展開しているが、加盟店から店舗に来店した人にポイント付与したり、利用できる仕組みも考えられるとした。
また、FFG傘下の親和銀行と親和銀行、「Wallet+」を採用した沖縄銀行に加え、「サービスそのものはいろいろな銀行さんに使ってもらい、地域、地域でポイント発行していただいて、つなげていく仕組みができればと思っています。事業者向けに独自ポイント台帳を横展開して使っていただく思想もあります」と、ふくおかフィナンシャルグループ 営業戦略部 iBank事業室 室長iBankマーケティング 代表取締役 永吉健一氏は話す。
アクセンチュア 常務執行役員 金融サービス本部 統括本部長 中野 将志氏は、ブロックチェーンを活用したiBank社のサービスが従来のポイントと何が違うのかについて、「ポイントそのものにロジックを組み込めることができること」だとした。たとえば、子供がお年玉をコインでもらった場合、使える店舗を限定するなどのロジックを設定することが可能だ。
中野氏は、「従来と違う価値を提供しながら、用途を広げることができ、さらにロジックを組み込むことにより利用者の嗜好が分かります。これによりマーケティングに活用できる情報は圧倒的に増えます」と強みを語った。また、金融機関はもちろん、それ以外の業種・業態でも活用できる仕組みだとした。