近鉄ホールディングスのデジタル地域通貨「近鉄ハルカスコイン」、2019年度の実用化を目指す

2019年3月22日8:00

本格運用では住宅地、観光地などエリアの特徴に合わせて通貨を発行

近鉄グループホールディングスは、2018 年10 月1 日から12 月10 日まで、三菱総合研究所の協力を得て、ブロックチェーン技術を活用したデジタル地域通貨「近鉄ハルカスコイン」の2 度目の社会実験を行った。同実験の成果と今後の展望について説明してもらった。

沿線の活性化に向けてブロックチェーン技術を活用
1回目の社会実験では約5,000名が参加

近鉄グループホールディングスがデジタル地域通貨の検討を開始したのは約2年前。同社では、近鉄グループの会員制度である「KIPSカード」を抱える中で、沿線地域への貢献ができないかと考えていた。また、三菱総合研究所ではブロックチェーンを使った技術で地方創生につなげたいという思いがあり、お互いのニーズが合致してデジタル地域通貨の実験を開始することとなった。

近鉄グループホールディングス 事業開発部 課長 林龍人氏

まず、2017年9月1日~10月1日に、「KIPSカード」会員から5,000人を募集して、1回目の近鉄ハルカスコイン社会実験を実施。近鉄グループホールディングス 事業開発部 課長 林龍人氏は、「あべのハルカスはビルとして日本一の高さを誇る、地域のランドマークであるため、新しいテクノロジーへのチャレンジの場として位置づけました」と説明する。実験では、5,000円で1万円のインセンティブを付けたが、約5,000名の参加があり、7割強(約3,800名)が実際にコインを使用した。また、月のトランザクションは約1.5万回あった。「実験では、使ってみると便利という声を8割以上の方からいただけました。トランザクション時のトラブルも特になく、電子マネーなどと同様のスピードで処理できるという確認が取れました」と三菱総合研究所 主席研究員 博士(経済学) 奥村拓史氏は成果を述べる。

一方、課題としてはアプリを立ち上げる必要があり、「ICOCAなどのICカードに比べて煩雑」という声があった。さらに、従業員一人一人にトレーニングを細かくする機会が取れなかったそうだ。

2回目はグループ外も含め約400店舗で検証
固定QRコードを用いた決済方式も採用

2回目の実験では、マニュアル動画を作成し、参加施設の従業員がいつでもトレーニングを受けられる環境を整え、実験に臨んだ。

きんえいアポロビルでのデモ

また、地域通貨としての運用をさらに意識し、参加施設を前回の約200店舗から約400店舗に拡大。あべのハルカスに加え、新たに大阪市立美術館や天王寺動物園、あべの巴通り商店会、阿倍野筋一丁目東商店会の店舗なども加わった。また、専用チャージ機でのコインの追加発行が可能なほか、参加者同士でコインの受け渡し(個人間譲渡)ができるようにした。

たとえば、商店街などは現金以外の決済手段を取り入れていないケースも多いため、1回目のタブレットを活用した方法に加え、店舗に設置した固定QRコードを用いて決済する方式も採用した。林氏は、「固定QRは、お客様に金額を入力してもらう必要はありますが、お店側の操作はいりませんので、今後どちらの決済手段が主流となっていくのを見極める意図がありました」とした。

また、今回は社会実験のため、決済手数料は徴収していないが、実際の運用に向けては一定の料率が必要となる。「店舗によっては、クレジットカードより安価であれば加盟したいという意見をいただいています」(林氏)。実際に近鉄ハルカスコインを運用した店舗では、導入後のメリットも感じており、考えも柔軟になっている。なお、手数料率は、金融決済の品質を担保した上で、クレジットカードなどよりも安価に提供できる仕組みを検討中である。

結果として、2回目の社会実験の応募者数は約3,000名。チャージ利用者数は約1,000名となり、チャージ額総額は約1,600万コインとなった。実際の利用率は99%、トランザクション回数は約8,000回、利用者間トランザクションは 約200回となっている。また、スタンプラリーで4つのゾーンを回遊してもらう取り組みも実施した。

チャージ機のコインチャージ

「第一回目の実験では、インセンティブにひかれて申し込まれた方も多かったようですが、今回はスマートフォン決済に興味がある方に使われている印象を受けました。レストランをはじめ、使われている方の使用頻度は高いです」(林氏)

利用者からの要望として、より便利にチャージできるようにしてほしいという声が挙がった。今回は、KIPSカウンターおよび同カウンターに設置されたチャージ機で入金処理を実施。チャージ機は駅の券売機を活用して試験運転を行ったが、ワンタイムパスワードコードを導入したことから、今後、駅でチャージできるなどといった拡張性はあるとした。

特徴を持った通貨を発行へ
自治体や企業での提供も視野に

今後の予定として、2019年度中の本格運用を目指す。具体的な地域通貨の姿については検討中だが、沿線、住宅地、観光地などにおいて、特徴を持った通貨を発行する仕組みを目指す。近鉄グループ以外の店舗や地元自治体や商工会などと連携できれば、地域通貨としての価値はさらに高まるとした。また、BtoBとしての展開が可能になれば、コインの流通はさらに伸びる。将来的には全国の自治体や企業への提供も見据えている。

カード決済&リテールサービスの強化書より

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