2019年8月30日8:05

ネガティブ情報を共有し、安心・安全なサイトを業界横断で目指す

インターネットによる海外航空券や国内宿泊の不正購入に対応するため、旅行会社がコンソーシアム「旅行業不正検知共通プラットフォーム(JIRSTA、Japan Internet Reservation Standard for Travel Agency) 」を設立した(事務局はジャパンシステム)。JIRSTA は、2017 年7 月に楽天トラベルを運営する楽天が中心となり、じゃらんを運営するリクルートライフスタイル、一休.comを運営する一休の3 社が発起メンバーとしてスタートし、2018 年12 月にエイチ・アイ・エス(HIS)も加わった。JIRSTA の目的は、メンバー企業でネガティブ情報を共有し、悪徳業者を締め出すこと。コンソーシアムは国内旅行会社に参加を呼び掛けており、旅行業界が一致団結することによって、不正防止対策の強化を目指す。

OTA による不正被害が国内でも顕在化
業界でまとまった対策が重要に

インターネット上だけで取引を行う旅行会社である「OTA」による旅行サービスの不正取得が国内でも顕在化している。JIRSTA 会長会社の楽天 コマースカンパニー カンパニー Co-CCO 秋元智広氏は、「これまでは、旅行業は換金性が低いと考えられていたため、不正利用によるうま味はありませんでした。しかし、3年前から、悪徳事業者が旅行サービスを不正取得し、転売するというモデルが確立され、国内旅行会社を標的にするケースが出てきています」と話す。

楽天 コマースカンパニー カンパニー Co-CCO 秋元智広氏

秋元氏は、「グローバル化やインバウンドの増加、越境ECの拡大など旅行サービスの不正利用の被害が拡大する状況に対応するには、各社が個別に不正防止策を講じるよりも、不正利用履歴データの共有化や高度化する不正利用への防止策の共有が効果的で、対策にかかる費用の削減効果も期待できます」と意気込む。

実際、楽天トラベルで起こったクレジットカードの不正利用の増加を受け、楽天は、前述のOTA2 社とコンソーシアム「JIRSTA」を設立し、不正検知のための共通プラットフォームの運営に乗り出した。秋元氏は、「さまざまな対策を講じましたが、完全に防ぐには3~ 6カ月かかりました。しかし、悪徳業者は当社が無理だとわかると、別の会社で不正を働きます。また、その会社がダメならさらに別の会社へとなり、イタチごっこが止まらない。業界でまとまって、対策を講じる必要性を感じました」と話す。

不正利用の事例を蓄積して加盟会社間で情報を共有
被害に遭ってからでは遅い、今こそ不正対策強化を

同プラットフォームは米国製のシステムを活用してカードの不正利用を検知・防止するとともに、不正利用の事例を蓄積して加盟会社間で情報を共有する。

同プラットフォームは、利用者のカードをオーソリ(承認)する前に、予約データや利用した端末情報のデータなどを送信する。システムは予め設定したルールに基づいて不正利用の可能性を点数制で採点し、その結果を加盟各社にリアルタイムで送信する流れだ。

その結果を受け、加盟会社は不正利用の可能性があるものについて、カード決済以外の決済方法を案内するなどの対応を実施する。加盟会社は予約データをシステムに送った回数に応じた金額と、システムの保守費用などをジャパンシステムに支払う。

秋元氏は「不正対策は、ツールやシステムを導入して終了するのではなく、企業側が有効なオペレーションを構築しなければなりません。経営者は、不正利用が起こる前からコストを費やして対策するには腰が重くなりがちです。しかし、悪徳業者の不正利用の被害にあってからでは遅いです。東京2020を控え、世界の目が日本の旅行業界に向いており、しっかりと対策を講じるべきです」と話している。

「3-D セキュア」によるセキュリティ強化にも死角?
自社で不正カードの利用を防止できないケースも

※書籍「PCI DSS・カードセキュリティ・実行計画対策ガイド」より

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