2019年9月27日8:00
タレスジャパンは、2019年9月25日に、EMVテクノロジーを活用したキャッシュレス決済のセキュリティのリスクとソリューションについての記者説明会を行った。タレスでは、「メタルカード」「生体認証対応カード」、「ウェアラブル決済サービス」などのカードデバイスに加え、ユーザーの流れを止めずに不正を検知する「サイレント認証」技術を提供している。
世界で拡大するEMVコンタクトレス
相互運用性を高めるEMVに世界の交通運行会社も注目
Thales(タレス)は、フランスの企業で8万人の従業員を有し、68カ国以上で展開しており、さまざまな事業を展開している。また、自己資金による研究開発費は10億ユーロ、2018年の売上は190億ユーロとなる。2019年4月2日にはGemalto(ジェムアルト)をタレスグループに統合し、デジタルIDやセキュリティビジネスを強化している。日本でも150名のスタッフがおり、同ビジネスを強化している。
タレスでは、銀行やカード会社といった金融機関に対し、ジェネレーターカードトークンとモバイルSDK、メタルカード、バイオメトリクスカード等を提供している。世界のキャッシュレス市場のトレンドとして、IICカードと端末に関する仕様」を定めた国際標準規格であるEMV仕様において、コンタクトレス利用が拡大していることを挙げた。カードやモバイルによるコンタクトレス決済は、接触型カードや現金に比べ2倍の速さで決済が済む。また、英国やカナダといったように、現金取引が30%減少した例もある。さらに、欧州では非接触型カードが導入される前後の比較で18%カード決済が増加したという。2019年には、非接触型カードの発行枚数が接触型カードを超えるいうデータもある。
交通セクターのグローバルトレンドとして、決済事業者の参入が増加。Account Based Ticketing (ABT)/EMVでの支払いが広がり、銀行Pay(OEM)が交通当局の関心を集めているという。イギリスやシンガポールをはじめ、EMVは運行会社の相互運用性を高めるイネーブラーとして、多くの国で認識されているとした。
メタルカードは数多くのラインナップを用意
国内の非接触決済でもウェアラブル技術を提供
また、従来の製品よりも利用者のステータスを体現するメタルカードは、「フル」「ハイブリッド」「べニア」「コンパクト」「イージー」とさまざまなラインアップを用意。米国などのシティバンク・プレステージ、米国のウエルズファーゴ・プロペルなどで採用されている。アジア・パシフィック地域 マーケティングディレクター 鈴木信太郎氏は、「色々な種類があり、フルメタルからプラスチックの間にメタルを挟んでいます。サンドウィッチの状態で重さを追及しているだけであり、裏表で非接触決済が可能です」と、特徴を説明する。現在、国内の各企業に性能評価を依頼しているが、品質面では良好な結果がでているため、「カード会社なども安心してご利用いただけます」と金融事業本部 本部長 藤森貴之氏は話す。
国内での取り組みとしては、ウェアラブル決済サービスを挙げた。タレスでは、2018年11月24日にパナソニックスタジアム吹田で開催された「明治安田生命J1リーグ ガンバ大阪 vs V・ファーレン長崎戦」において、ウェアラブル決済サービスに使用したハードウェアを三井住友カードや大日本印刷、パナソニック、ぴあと協力して提供した。また、日本マクドナルドでは「Visaのタッチ決済機能付きオリジナルリストバンド」が当たるキャンペーンを実施したが、同商品に技術を提供している。
EMV生体認証対応カードを提供
「サイレント認証」でモバイル決済の不正抑止が可能に
タレスでは、セキュリティと利便性を両立させる仕組みとして、ノルウェーのZwipeと協力してデュアルインターフェイス生体認証対応EMV決済カードを提供している。同カードは、バッテリー非搭載としては世界初となる生体認証対応カードとなり、指紋をセンサーの上に置くことで、決済に使用できる。現在は各種認定作業があり市場投入には至っていないが、国内外を含めて数多くの企業が関心を持っているという。
また、国内では、QRコード決済サービスのセキュリティ対策の課題が指摘されているが、独自決済サービスへの対応技術として「サイレント認証」を薦めている。同技術は、デバイスのIP情報、ユーザーの振る舞いなどの特性を判別し、スコアリングで正しい取引かを判別できるという。すでに国内でも銀行が採用しており、オンラインバンキングの後方で動いている。タレスでは、利便性とセキュリティを両立させる仕組みとして、独自のモバイル決済サービス等でも導入を提案するという。