2012年6月21日8:00
タレスジャパンは、2012年6月20日にCASPA銀座において、MONET、グローバルセキュリティエキスパートとともに「APT攻撃の新たなターゲット~リテールシステムの脆弱性をつく攻撃とは~」を開催した。
タレスは、2008年にエンサイファー(nCipher)を買収。同社の「ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)」は、暗号鍵を物理的に保護するセキュアなハードウェアで、内部プロセッサで暗号処理を安全かつ高速に実行できるという。決済用のHSMでは、「payment HSM」を提供しており、EMVにも対応している。また、暗号モジュールのセキュリティ要件を定義する米国連邦情報規格「FIPS140-2」、情報システムのセキュリティ評価基準を定めた「コモン・クライテリア」、PCI DSSの管理団体であるPCI SSCが定めた決済システムに求められるHSMのセキュリティ基準「PCI HSM」に準拠している。
同セミナーでは、「決済セキュリティのベストプラクティス~カード決済システムを保護するデータ暗号化ソリューション~」と題し、タレスジャパン e-セキュリティ事業部 シニアテクニカルスペシャリスト 上野隆幸氏が講演したが、新たな決済ソリューションとして注目を集めるスマートフォン決済においてもタレスのHSMの採用が進んでいるという。
昨今は、国内外でスマートフォンを決済端末に利用したシステムが数多く登場しているが、その広がりとともに「スマートフォンのセキュリティが一番の懸案事項になっている」と上野氏は話す。すでにスマートフォンのガイドラインとしては、日本クレジットカード協会(JCCA)の「スマートフォン決済の安全基準に関する基本的な考え方」、MasterCardの「BEST PRACTICES FOR MOBILE POINT OF SALE ACCEPTANCE」、PCI SSCの「Accepting Mobile Payments with a Smartphone or Tablet」などが発表されている。
例えば、PCI SSCが発表した「PCI Point-to-Point Encryption(P2PE)」では、スマートフォン決済ソリューションを展開する際、PCI PTSやPA-DSSの認定を受けたカードリーダ、P2PEの認定を受けたソリューションプロバイダの決済センターに加え、PCI HSMの認定を受けた鍵管理装置の採用を推奨している。
また、スマートフォン決済における暗号鍵管理としてPCI PTSの関連規格である「DUKPT(Derive Unique Key Per Transaction)」の採用は1つのキーワードになっているが、その対応もHSMであればスムーズに行えるそうだ。DUKPTはANSI X9.24-1で標準化されており、決済のトランザクションごとにユニークな鍵を派生することで、例え、鍵が解読されても以降のトランザクションには影響を与えない仕組みとなっている。トランザクションが発生するたびにカードリーダと決済センターの双方で新しい鍵を作り出し、セキュリティの保護を行う。その仕組みを実装するため、トランザクションキーを派生する「マスターキー」をセンター側のHSMで安全に保護することが有効であるという。また、トランザクションキーを派生させるためのプロセスもHSMで保護が可能だ。
上野氏は、「タレスの決済HSMはDUKPTのアルゴリズムを標準で搭載しており、決済センターでHSMを導入していただくことにより、DUKPTに準拠した暗号鍵管理の実装が可能となります」と説明する。すでにロイヤルゲートが展開するスマートフォン決済ソリューション「PAYGATE」でも同社のHSMは採用されているそうだ。
また、当日は、「次の標的はPOS !~今から始める、標的型POS攻撃対策~」と題し、グローバルセキュリティエキスパート システムリスクソリューションセンター マネージャ 鈴木貴志氏、「リテール事業において抑えるべきセキュリティポイント~海外の事例から学ぶ~ 」と題し、MONET ソリューション事業部 技術部 テクノロジエバンジェリスト 鶴巻肇氏が講演した。