2019年11月12日8:00

Tappyのプロビジョニング技術をMastercardのトークン化技術と統合

Mastercard(マスターカード)と、香港のTappy Technologies(以下、Tappy)は、シンガポールで開催中の世界最大級のFinTechイベント「Singapore Fintech Festival」の初日となった2019年11月11日に記者説明会を開催し、両社のテクノロジーを融合させることで、時計、ジュエリー、メガネといった市場にあるほとんどのウェアラブルデバイス/ファッションアクセサリーに非接触決済機能(TypeA/B)を組み込むことができる技術を提供すると発表した。

左からTappy Technologies Ltd. ビジネス・デベロップメントヴァイス・プレジデントのSuboor Ahmed氏、同社 CEOのWayne Leung氏、Mastercard デジタルソリューションズ シニア・ヴァイス・プレジデントのBenjamin Gilbey氏、APエンゲージ・リードのVijin Venugopalan氏

ドングル、ICチップ、モバイルアプリを連携してパーソナライズ可能に

Tappyは、北米、アジア、欧州・中近東・アフリカでビジネスを展開するウェアラブル決済のトークンサービスプロバイダーだ。同社では、2019年2月にバルセロナで開催された「Mobile World Congress」でトークンサービスプラットフォームの展開を発表し、Timex Groupとのパートナーシップを公表していた。

Tappyの特許取得済みの非接触決済チップは、形状、旧来型・新型にこだわらず、市場にあるほぼすべてのファッションアクセサリーに埋め込むことが可能だ。同社のトークンサービスプラットフォームでは、データのプロビジョニングに使用するドングル「Universal Passive Provisioning Unit(UPPU)」、アクセサリーに埋め込むICチップ(バッテリーレス)、モバイルアプリケーションを連携させることでパーソナライズを可能としている。

UPPUに使用するドングル(時計に装着)

TappyのUPPUをMastercardのMDESと統合

ファッションアクセサリは、UPPUの技術を使用してトークン化することができる。なお、ICチップについては、デジタルセキュリティ大手のThales(タレス)/Gemalto(ジェムアルト)とパートナーシップを結んでいる。

Tappyは、Mastercardと提携することで、同社の技術を、Mastercardのペイメントトークンサービス「マスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」と統合して、プロビジョニングを行い、安全な支払い処理を実現するという。また、仮に消費者がファッションアクセサリーを紛失した場合、サポートセンターに電話することで、トークンを無価値化することが可能だ。

Timexと連携して非接触決済が可能なサービスをスタートへ

まずは、Timexと連携し、2020年上半期に時計で非接触決済が可能なサービスをスタートする予定だ。同商品はTimexのWebサイトで購入可能となる。なお、ファッションアクセサリにドングルが付くことにより、コストは10~20ドルアップする見込みだ。また、実際の販売方法はファッションアクセサリーの販売事業者に委ねるため、場合によっては1つのドングルで複数のデバイスをパーソナライズすることも可能になるとのこと。

なお、時計の場合、ICチップを埋め込んで製造することもできる。たとえば、皮の素材では2年、シリコンではさらに長期間の利用に耐えられる。また、「Apple Watch」などではすでに非接触決済が可能だが、さまざまな機能を複合的に使用できるデバイスとなっている。その点、Tappyが提供するウェアラブルデバイスでは、当面は決済に特化した機能を提供する予定だ。

鉄道、前払い/後払い双方のサポート、リワードとの連携も視野に

Mastercard デジタルソリューションズ シニア・ヴァイス・プレジデント Benjamin Gilbey氏によると、アジア・パシフィックエリアでのウェアラブルデバイスは、2019年の1.5億個から、2022年は4億個に増加するため、需要は大きいとした。また、中国やタイ、ベトナム、シンガポールなどで多くの人がウェアラブルデバイスを受け入れている。さらに、非接触決済の利用も拡大している。例えば、オーストラリアでは96%が非接触決済となっており、インドや香港での伸びも著しい。また、シンガポールでは地下鉄で非接触決済による乗車が可能だ。そのため、今後もウェアラブルデバイスによる非接触決済の需要は高まるとみている。

Mastercardでは、「Mastercard Accelerate」を通じて、テクノロジーベンダー、FinTech企業と積極的に提携している。今回、Tappyが国際ブランドでMastercardと最初に提携した理由は、FinTech企業との連携する方法を簡素化する「Mastercard Accelerate」の「Mastercard Engage」が大きかったという。同プログラムを活用することで、Mastercardの数千のカスタマーの中から、最適な会社と接続する環境が整えられるとした。

Tappy Technologies Ltd. CEOのWayne Leung氏によると、将来的には、オープンループ以外の独自規格も含めた世界の鉄道システムのサポート、前払いと後払いの両方のクレジットカードのサポート、ロイヤリティ/リワードプログラムへの対応などを挙げた。

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