2019年12月16日8:00
現金主義が根強い大阪で「メルペイ」等を導入
メルペイは、2019年12月13日、大阪の名物スーパー「スーパー玉出」の全45店舗とお好み焼き・焼きそばの飲食店「鶴橋風月」の4店舗で、スマートフォン(スマホ)決済サービス「メルペイ」を導入したと発表した。大阪では現金主義が根強いが、両店舗での導入を機に、さらなるキャッシュレス決済の利用拡大を図る。(ライター・南文枝)
関西地方での潜在ニーズ見込む
他社との顧客層の違いも導入の決め手に
メルペイは、フリマアプリ「メルカリ」で利用できる決済サービス。メルカリで得た売上金を、メルカリ内はもちろん、全国約170万カ所の加盟店での買い物に使えるのが特徴だ。同社によると、利用者数は、2019年10月時点で500万人を突破した。
同社は地方に拠点を置く加盟店の拡大も進めているが、大阪は現金主義が根強い地域。大阪商工会議所が2019年6月下旬から7月、会員企業を対象に実施したアンケート調査では、約4割の事業者が、「国のキャッシュレス決済のポイント還元策が行われてもキャッシュレス決済を導入しない予定」、さらに約4割が「現時点では未定」と回答している。
しかし、メルペイによると、メルカリの売上金額が多いのは関西地方の利用者だという。1人あたりの都道府県別年間販売金額では、トップは和歌山県(7万7,267円)で、大阪府は3位(7万6,681円)。潜在ニーズは高いと見て、JR西日本の主要駅に隣接する商業施設や京セラドーム大阪、地元スーパーなど関西地方でも加盟店の拡大を進めてきた。
スーパー玉出は、黄色に赤字、ネオンが輝く派手な看板や「1円セール」などで知られる、大阪の名物スーパーで、「見て、驚いて、笑って、買う店舗づくり」を目指している。運営会社のフライフィッシュ(本社・大阪市)によると、全店舗を巡って買い物したり、に弁当や総菜を購入してSNS “食レポ”を投稿したりという熱狂的なファンも多いという。
これまでは、一貫して現金主義の姿勢を崩さなかったが、顧客の囲い込みや新しい顧客層の取り込み、客単価の上昇といった理由に加え、「お客様に喜んで、驚いて、楽しんでもらいたい」と、実験的にキャッシュレス決済を導入することとした。
メルペイについては、メルカリの利用者が使っているということで、他のスマホ決済サービスと顧客層が違う印象を持ったことも決め手になったという。メルペイマーケティンググループリーダーの大前宏輔氏は「(女性の利用者が約6割という)メルペイとの相性の良さに可能性を感じていただけたのではないか」と話す。
おばちゃんアイドルが店頭でPR
ローカルの加盟店を重点的に拡大へ
スーパー玉出では、メルペイに先行して2019年9月からヤフーなどが出資する「PayPay(ペイペイ)」、そしてインバウンド向けにアリババグループの「Alipay(アリペイ:支付宝)」を導入。フライフィッシュ広報室の國枝尚隆室長は「お客様からは、あの現金決済しかやっていなかった玉出でスマホ決済をやっている、という驚きをもって迎えられている」と話す。
売上に対するキャッシュレス決済の比率は11月頭の3%から、1カ月後には6%とじわじわと増加。同社は今回のメルペイの導入で、年末までに10%を超えると予想する。
メルペイ導入キャンペーンとして、12月22日まで、スーパー玉出は10%のポイントを還元(1人1000ポイントまで)、鶴橋風月ではオリジナルミニソースをプレゼントする。導入初日の13日、大阪市内で開かれた取材会では、大阪のおばちゃんアイドルグループ「オバチャーン」が登場。スーパー玉出天神橋店では、1日店長として「私ら主婦にはお得やね」「やってみたい」などとにぎやかにメルペイをPRした。
スーパー玉出では、レジに備えたQRコードをスマホで読み取り、決済する。楠俊彦店長は「キャッシュレス決済を始めてから、若い方のご利用が増えた印象がある。年配の方も利用されています」と話す。フライフィッシュは今後、売上や客層の変化などのデータを蓄積し、キャッシュレス決済をどう利用していくのかを判断するという。
メルペイの大前氏は今後の展開について、「最終的に残る決済サービスになりたい。ローカルの大きな加盟店様を重点的に拡大していきたい」と話した。