2020年2月13日8:50
レポート「世界の決済イノベーション市場要覧」の第6章では、「ネオバンクとチャレンジャーバンク、そしてオープンバンキングとBaaS (Bank as a Service)」について紹介している。
オープンAPIによるオープンバンキングへの期待
近年における決済サービスのイノベーションには、金融とテクノロジーとの融合である“FinTech”によるオープンバンキングによって生まれたネオバンク(Neo Bank)やチャレンジャーバンク(Challenger Bank)のBaaS(Bank as a Service)のデジタルバンキングサービスにおける決済サービスが大きな影響を及ぼしている。オープンバンキングとはAPI(Application Programming Interface)を活用して第三者が提供する外部のサービスをオープンに活用するバンキングの総称で、重要なデータをこれまでのように外部から隔離しておくのではなく、外部との共有を図ることで、新たな価値の創造が図れるというという考えに基づいて、ヨーロッパのPSD2(第2次決済サービス指令)などの新しい規制の中で、銀行などの金融機関がオープンAPI(Application Programming Interface)のテクノロジーを通じ、これまで以上に多くの顧客情報を共有することが求められている。インフラストラクチャを利用できるようにするオープンAPIは、標準化されたインターフェースを通じて、様々な情報源からの新しい競争を生み出す。特に、オープンAPIによるオープンバンキングは、既存の銀行などの金融機関と新興のFinTech企業の双方に新たな好機と劇的な変化をもたらすと期待されている。
EU(欧州連合)では、2015年11月に従来のPSD(Payment Services Directive、決済サービス指令)が改訂され、銀行など金融機関に対しオープンAPIの提供を義務付けるPSD2(第2次決済サービス指令)が成立し、2018年1月より発効されている。PSD2では新たに「PISP、Payment Initiation Service Provider」(決済指示伝達サービス提供者)、「AISP、Account Information Service Provider」(口座情報サービス提供者)、「ASPSP、Account Servicing Payment Service Provider」(口座保有型決済サービス提供者)の3つのサービスプロバイダーが定義され、こうしたサービスプロバイダーの対象業務は、ペイメントサービスの他、モバイル財布、口座振替、電子請求・支払い、Eコマースのマーケットプレイス、口座アクセスサービス、カスタマー・ロイヤリティ・プログラムなど多岐にわたっている。
オープンAPIの実装によるオープンバンキングの取り組み
“FinTech”により、デジタルバンキングサービスの送金と決済のデジタル化による決済サービスのイノベーションが、欧米や日本などの先進国のみならず、中国やインド、インドネシアなど多くの人口を抱える新興国においても、先進的な銀行などの金融機関や新しく誕生したデジタルバンク、それにFinTechのスタートアップによって起こされている。オープンAPIにより、金融機関はFinTech企業などのサードパーティとアプリ連携などのタイアップを行い、デジタルデータを最大限に活用し、利便性が高く、付加価値の高い送金サービスや決済サービスを含む金融サービスを顧客に提供することができるようになってきた。オープンAPIによるオープンバンキングは、特に決済業務の分野において、既存の銀行などの金融機関と新興のFinTech企業の双方に新たな好機と劇的な変化をもたらすと期待されている。
銀行などの金融機関が自社の顧客のデータへの接続方式を信頼できる第三者のサードパーティに開放するオープンAPIの実装によるオープンバンキングの取り組みが、世界的な規模で始まっている。既存の金融機関によるオープンAPIによるオープンバンキングの動きの他に、2008年の金融危機を機に、欧米を中心に、新しい銀行を意味する“ネオバンク”(Neo Bank)や挑戦を意味する“チャレンジャーバンク”(Challenger Bank)という金融サービスや金融機関が新たに登場している。“FinTech”の先進国であるイギリスでは、2000年頃からバークレイズやHSBC、ロイズ、RBSといった四大銀行の寡占による弊害を取り除くため、政府主導による金融機関改革が推進され、オープンAPIによるオープンバンキングを含め、多くのデジタル専門の金融機関であるチャレンジャーバンクが誕生している。“ネオバンク”は新しい銀行という意味で、当初、ネオバンクにはチャレンジャーバンクも含まれていたが、最近はネオバンク(Neo Bank)とチャレンジャーバンクのように区別するようになっている。
また、こうしたチャレンジャーバンクの動きに触発された従来の銀行も、シンガポールベースのDBSのDigi BankやフランスベースのBNPパリバのHello Bank、カナダのCIBSのSimpliiといったデジタル専門銀行、あるいはアメリカのJPモルガンチェイスのFINNやユニオンバンクのPure Pointなどデジタル専用のバンキングユニットを設立する動きを見せるようになった。