2020年3月3日8:00
路線バス利用でTポイントが貯まる全国初のシステムの構築を支援
トリニティは、マーケティング戦略に有効なソリューションをクラウドサービスで提供しており、交通、流通などで多数の実績を誇る。その強みを生かし、長崎バスグループが2019年9月に導入した地域ICカード「エヌタスTカード」のシステムにも参画している。路線バス利用でTポイントが貯まる全国初のサービス誕生の経緯について、長崎バスグループの長崎自動車などが出資するエヌタス(長崎市)に話を聞いた。
電子マネーとTポイントを連携したICカード
販売開始から3カ月半で12万枚を発行
「エヌタスTカード」は、バスやタクシーで利用できる交通系ICカードと、商業施設での買い物に使える電子マネー「エヌタスマネー」「Tカード」が一体となった地域ICカードだ。発行するのは、クレジット機能付きカード(無料)と、クレジット機能がないカード(記名式と無記名式、各2000円で販売)。いずれも現金でエヌタスマネーをチャージして使え(クレジット機能付きカードはオートチャージも利用可能)、利用金額に応じてTポイントが貯まる。路線バスの利用でTポイントが貯まるのは全国初の取り組みという。
カードは現在、同グループの長崎バス・さいかい交通の路線バスや、長崎タクシー共同集金に加盟するタクシー、五島産業汽船のほか、長崎市の複合商業施設「みらい長崎ココウォーク」の店舗を含む約160店舗などで利用できる。
2019年9月のサービス開始以降、カードの売れ行きは好調で、同年末時点での売上予想(7万3,000枚)を上回る12万枚を販売。一時は在庫が底をつく事態となった。
新ICカード開発でトリニティと連携
くまモンのICカード、Tポイントでの実績を評価
長崎県では2002年、県内10社局の鉄道やバスで利用できる交通系ICカード「長崎スマートカード」を導入。しかし、時間の経過とともにシステムの老朽化が進み、システムの維持に多額の費用がかかることなどから、長崎バスとさいかい交通は2019年末でサービスを終了。他の事業者も、2020年夏ごろに利用できなくなる見通しだ。
長崎バスグループは、地元経済界などからの要望を受け、長崎スマートカードの後継として、利用を県内に特化・限定した地域創生型のICカードの開発を決定。汎用性の高いTポイントを取り入れた多機能カードをつくろうと、「くまモンのICカード」の実績があり、TポイントのASPを提供するトリニティとポイントシステムで連携した。
「エヌタスTカード」を運営するエヌタス 常務取締役の高井良 肇氏は「交通だけではなく、地域に還元できるポイントを電子マネーとして循環させる仕組みを考えた時に、Tポイントと電子マネー、両方が必要でした。トリニティが提供するサービスは必須だったのです」と強調する。くまモンのICカードでは、交通と店舗でのポイントがすでに運用されており、Tポイントでは、地域の個店の開拓で強みを持つ。地域に根差したカードを目指すエヌタスにとって、ASPサービスによる会員管理システムやポイント管理システムを通じてロイヤルティマーケティングに対するさまざまなソリューションを提供してきたトリニティの持つノウハウは魅力だったという。
こうして開発されたのが、電子マネーの利用でTポイントが貯まるエヌタスTカードだ。画期的なシステムの開発には苦労もあったが、「くまモンのICカードやTポイント・ジャパンとの取り組みなど、過去の経験を応用して構築していきました」とトリニティ 営業統括部 九州営業所 西本誠治氏は説明する。
年内に発行枚数20万枚、加盟300店舗を目標
行政サービスや医療、教育連携で地域活性化
エヌタスは今後、カードの利用エリアの拡大、会員数や加盟店の拡大に力を入れる。年内に発行枚数20万枚、加盟300店舗に増やすのが目標だ。
長崎に特化・限定したカードの特徴を生かした取り組みも進める。西本氏は「交通と商業を両輪とした地域活性化策をご提案したい」と話す。高井良氏も「お店に来た方がどういった交通手段を利用されたのかというように、交通と商業をつなげてとらえるのがCRMのうえで重要になります」と意気込む。
また、カードを利用した長崎の行政や地元企業、観光、医療、教育などとの連携も模索していく。2020年4月からは、出島資料館の入場料を電子マネーで支払えるようになるほか、周辺自治体でのカードを使った高齢者向けの交通補助サービスも始める予定だ。観光施設との連携を進め、期間限定で観光客に利用してもらう仕組みも視野に入れる。
地域の交通や商業施設だけでなく、行政や企業など地域全体を巻き込むICカード。エヌタスTカードが目指す地域展開にトリニティは欠かせない存在となりそうだ。
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