2020年3月19日8:00
AIの精度が高まりほぼ100%の商品を識別。購入客の1割が利用
ポプラでは、2019年4月、東京都・港区のコンビニ「生活彩家」貿易センタービル店に、システムコンサルティングのサインポストが提供する無人AIレジ「ワンダーレジ」2台を設置。レジ混雑の解消、販売員の業務軽減を実現すべく、実証実験を続行中だ。日々、AI(人工知能)の学習やオペレーションの改善が進み、知見が蓄積されている。「ワンダーレジ」は、AIの画像認識により商品マスターとの照合を行うことで、精算処理を実行する仕組み。1点ずつバーコードを読み取るよりも手間が少なく、スピーディに会計を完了できる。商品マスターに登録されている対象商品は、2,000超。毎日のように弁当などを購入する常連客を中心に、来店客の約1割に便利に利用されている。
AIが瞬時に複数商品を認識
手間なくスピーディな精算を実現
ポプラでは、AIを活用した「ワンダーレジ」導入によるレジ混雑の解消、販売員の業務軽減、さらにはAIを活用した新業態の開発も視野に入れて実証実験を続けている。
「ワンダーレジ」にはAI「SPAI」が搭載されている。顧客が「ワンダーレジ」に商品を載せると、「SPAI」が瞬時に商品を画像認識し、商品マスターと照合。「お会計に進む」ボタンをタップすると商品一覧と金額が表示され、確認後、電子マネーをかざして会計を終了。レシートの発行もできる。決済手段としては現在のところ、交通系電子マネーなどに対応している。
企業内店舗など小規模出店のニーズが高まる中、ポプラでは人件費を抑えるため無人ソリューションの導入を検討してきた。その1つがセルフレジだが、「ワンダーレジ」は、商品のバーコードを1点ずつ読み取る方式の通常のセルフレジと比べて、顧客の手間が少なく、精算のスピードも速いという。1台当たり100万円以下と、導入コストも比較的低く抑えられることから、設置の決定に至った。
画像だけではサイズの認識などが難しい雑貨を除き、現在の商品マスターの登録アイテム数は、食品・飲料を網羅した2,000超。登録・更新は、「ワンダーレジ」を開発・提供するサインポストが担っている。
弁当やおむすびは一見して似たような商品もあり、スタート当初は判別が難しいケースも多かったというが、AIの学習が進んだことと、表面にシールを貼るなど独自に編み出した手法によって、現在では判別不能や誤認識はほとんど発生していない。
購入客の約1割が「ワンダーレジ」を利用
レジ混雑解消の効果に確かな手応え
運用を始めてから約9カ月が経過し、毎日のように「ワンダーレジ」で弁当や飲料を買い求める常連客も徐々に増えてきた。全体では購入客の約1割、1日平均130~150人に利用されている。ポプラ 営業本部 関東営業部 本部長の上野雅弘氏は「利用者のうち3分の1が常連客、3分の1が初めての利用者といったところ。朝・昼のピークタイムにも列ができることはほとんどないので、繰り返し利用するようになるお客様が多く、レジ周りの風景が変わりつつあります」と成果を述べる。
生活彩家では100円(税込み)ごとに楽天スーパーポイントが1ポイント貯まるが、現状「ワンダーレジ」での支払いにはポイントが付与されない。ポイントシステムとの連動を実現できれば、利用者はより一層増えると考えられる。
また、決済手段は、基本的にすべての電子マネーに対応できるようにし、QRコード決済にも広げていきたいとした。これによってサービスの利便性はさらに高まる。
この実験を通してポプラは「ワンダーレジ」を、「レジ効率を上げて販売機会ロスを減らすという課題はすでにクリア。問題なく投資回収ができるという手応えを感じています」(関東地区本部 店舗運営部 スーパーインテンデント 藤原翔氏)と評価。サインポストではこの結果に自信を得て、複数のコンビニチェーンや他業態にも「ワンダーレジ」の導入を提案していく考えであり、ポプラもサービス認知拡大のためにこれを歓迎している。
同社は美味しい弁当を並ばずに買える環境を整えることで、新規顧客の獲得につなげたい考えだ。上野氏は「われわれはもともと、弁当のポプラという会社を持っていたほど、弁当にこだわりがあります。現行の法規制では無人で弁当を販売することはできませんが、将来的には無人AIレジをフル活用した弁当専門店の展開なども視野に入れています」と意気込みを見せた。
カード決済&リテールサービスの強化書2020より