2020年3月25日8:00
顧客と従業員の負荷を最小限に抑えつつセキュリティ強化を図る
いなげやでは、改正割賦販売法がクレジットカード加盟店に求めるIC化対応、カード情報非保持化を実現するため、新たな決済システムを稼働させる。2020年3月中に全136店舗に、新決済端末を合計で約1,000台設置。POS側では一切のクレジットカード情報を持たない外回り方式で運用する。日々来店するたくさんのお客様や、従業員の誰もにわかりやすい平易なシステムであること、高い安全性を担保できること、さらに、コストを適正に保てることが新ソリューション導入のポイントとなった。同社におけるキャッシュレス決済比率は約2割。社会状況の変化などを鑑みながら、クレジットカード以外のキャッシュレス決済の導入も検討していく。
外回り方式で情報非保持化を実現
ポイントシステムは従来通り運用
2018年に施行された改正割賦販売法は、加盟店に対して、2020年3月までにクレジットカードの100%IC化、クレジットカード情報の非保持化などを求めている。関東1都3県で136店舗のスーパーマーケットを展開するいなげやでは、これに対応するため、大日本印刷(DNP)が提供する「DNPマルチペイメントサービス」を導入した。
「DNPマルチペイメントサービス」は、クレジットカード情報をPOSに一切通さない外回り方式を採用。いなげや各店ではICカード読み取り機能を搭載した決済端末「Vega3000」を設置し、クレジットカード情報の非保持化を実現する。外回り方式は、POSシステムを全面刷新することなく導入が可能で、管理やメンテナンス等のコストも内回り方式に比べて低く抑えられると判断。これが、同社が「DNPマルチペイメントサービス」を選択した大きな理由の1つだった。
顧客や従業員に極力ストレスを与えない、わかりやすく平易なシステムであることも重要事項。「複雑なシステムを導入して、日々たくさんのお客様に応対する現場に混乱をきたすようなことは避けたかったのです」といなげや 営業本部 販売促進部 部長の堀合洋介氏は振り返る。
加えてもう1つ、同社がシステム選定の条件に掲げていたのが、ポイントシステムを従来通り円滑に運用できることだった。
同社では「ing・fanカード(アイエヌジーファンカード)」というポイントシステムを運用している。現金払い専用の「ing・fanクラブカード」のほかに、三井住友カードとの提携によるクレジット機能付きの「ing・fanVカード」があり、いずれの会員にも13桁のお客様番号を発行している。そのため決済システムには、「ing・fanVカード」の16桁のクレジットカード番号と、13桁のお客様番号との紐づけをPOSを介さずに行った上で、お客様番号だけをレジに送信する機能を備えていることが求められた。これらの条件にかなったのが「DNPマルチペイメントサービス」であった。
まず立川の店舗で3月12日から運用を開始。ここで1週間様子を見た上で、約40店舗ずつ4回に分けて導入店舗を拡大し、3月中に全店での稼働体制を整える。
ニーズとコストのバランスを踏まえ
慎重にキャッシュレス決済対応を拡大
ポイントシステム「ing・fanクラブカード」は200円の支払いにつき1ポイントが貯まり、1ポイント=1円として購入代金に充当できる。クレジットカード機能付きの「ing・fanVカード」は、1,000円(税別)の年会費がかかる(初年度は無料)が、クレジットで支払うと、現金払いの2倍のポイントが付与される。
店頭での「ing・fanカード」の提示率は75%と高い数字を誇る。クレジットカード機能付きの「ing・fanVカード」は、決済件数全体の約5%となる。
同社では顧客サービスの一環として、「ing・fanクラブカード」会員がデジタルポイントカードとしても利用できる「いなげや公式アプリ」を2016年から運用している。このアプリに、2018年2月より、DNPが提供している「スマートキャンペーン」機能を搭載。アプリでキャンペーン対象商品を案内し、ユーザーがあらかじめエントリーした上で、店頭で対象商品を購入すると、自動的にキャンペーン応募手続きが完了する仕組みだ。「DNPマルチペイメントサービス」の導入は、これに続く両社の2度目の協業となる。
いなげや店頭の現在のキャッシュレス決済は、「ing・fanVカード」を含めたクレジットカードがほとんどで、その比率は全体の約2割。キャッシュレス化の波が押し寄せていることは実感しながらも、キャッシュレス決済サービスの導入には手数料負担が伴うため、同社は慎重な姿勢を見せる。顧客のニーズとコストとのバランスを計りながら、検討を進めていく考えだ。
カード決済&リテールサービスの強化書2020より