2020年5月1日9:00
消費者がスマートフォンやWebを利用して事前注文・決済を行うモバイルオーダーサービスが徐々に広がっている。国内でもスターバックスコーヒージャパン、日本ケンタッキー・フライド・チキン、モスフードサービス、日本マクドナルド、吉野家といった大手加盟店での導入が目立つようになってきた。今年は新型コロナウィルスの感染拡大を受け、テイクアウトの需要も増えていることから、さらなる認知向上・利用拡大が期待できそうだ。
米国や中国で広がるモバイルオーダーサービス
日本でもモス、ケンタ、スタバ、吉野家などが導入
モバイルオーダーサービスは、米国ではスターバックスコーヒーなど、加盟店での導入が広がっている。また、中国のコーヒーチェーン等でもスマホアプリと連動した動きが加速している。日本では2013年頃から一部の加盟店で導入が行われてきたが、固定客の取り込みで成果が上がる一方で、来店する顧客に幅広く利用されるという面では課題があった。実際、中華やピザの飲食チェーンではサービスを導入したものの利用が伸びず、運用を中止したケースもある。
国内大手企業の動きとして、モスフードサービスでは、2014年9月から一部店舗で先行導入していた「モスのネット注文」を、2015 年2月から、全国のモスバーガーに拡大した。また、日本ケンタッキー・フライド・チキンでも2015年10月末から、KFCネットオーダーシステムを運用開始している。
スターバックス コーヒー ジャパンでは、2019年6月26日から、東京都内の56店舗で、スターバックスのアプリを通じて注文、決済までを事前に完了し、店舗で商品を受け取る「Mobile Order & Pay」(モバイルオーダー&ペイ)を導入。ビジネス街立地店舗での同サービスを利用した注文件数は、2019年6月のローンチ時と比較し、約3倍まで増加したという。また、新たな取り組みとして、静岡市内のスターバックス コーヒー2店舗では、ドライブスルーレーンで、車に乗ったまま商品の受け取りができるサービスを試験的に導入している。
日本マクドナルドでも「モバイルオーダー」を約2,700店舗(2020年3月時点)に導入。同社では、スマートフォン向けマクドナルド公式アプリに、「モバイルオーダー」機能を拡充させている。
吉野家でもモバイルオーダーを導入しており、NTTドコモと連携した販促施策等により認知拡大を急いでいる。
モバイルオーダーサービスの「利用経験」は15.6%
利用した人の85.1%が「満足」と回答
それでは、モバイルオーダーの認知度はどの程度あるのだろうか?MMD研究所は、18歳~69歳のスマートフォンを利用する男女5,630人を対象に2020年4月7日~4月13日の期間で「2020年4月 モバイルオーダーに関する利用動向調査」を実施し、その結果を発表した。その結果、モバイルオーダーサービスの「利用経験」は15.6%(「現在も利用している」13.3%、「利用経験あり」2.3%)となり、仕組みやサービスを「全く知らない」人は約半数に上った。
利用上位は、マクドナルドのモバイルオーダーが55.1%、モスのネット注文が34.5%、KFCネットオーダーが28.1%の順となった。モバイルオーダーを利用する理由は、「待ち時間を減らしたい」「列に並びたくない」が上位となっている。さらに、モバイルオーダーで利用する決済方法は、「クレジットカード」が73.7%、次いで「QRコード系決済サービス」となっている。
モバイルオーダーサービスを利用した人の85.1%が「満足」(「満足」が41.3%、「やや満足」が43.8%)と回答しており、不満は2.0%は留まった。
サービス提供事業者も増加、スマホ決済アプリ内での利用も注目
今後はテーブルオーダーとの連携も伸長?
当初は2013年にサービスを開始したShowcase Gigをはじめ、カチリ、DIRIGIO、Lisa Technologies、セイコーソリューションズ、Okageなど限られた企業がサービスを提供していたが、最近では楽天(楽天グループの米国・Rakuten Ready, Inc.のソリューション)やNTTドコモ(セイコーソリューションズと連携)なども参入を発表している。また、PayPayやLINE、NTTドコモをはじめ、スマホ決済サービスを提供する事業者が自社アプリの中で事前注文・決済サービスを整備する動きも増えそうだ。これにより、モバイルオーダーシステムの認知度はさらに高まると予想できる。
また、テイクアウトに加え、店内飲食においてもスマホを利用してメニューの注文・決済を行う動きは中国でも加速している。日本では、すき家において、利用者がクレジットカードを登録した専用スマホアプリで、テーブル上のQRコードを読み取ることによって、注文と決済を瞬時に完了させる仕組みを導入している。また、阪急阪神百貨店でもインバウンド向けの取り組みとしてテーブルオーダーを導入している。今後は、国内において、同様のサービスの広がりも期待できそうだ。