2023年3月13日8:00
様々な施策で顧客体験を向上させ、自社決済利用比率50%超まで引き上げ
パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)では、顧客との接点をアプリやSNS等のデジタルでアップデートし、顧客体験を向上させていく。その中で、決済や会員サービスを拡充してグループの収益機会の拡大を図り、現在約40%である電子マネー「majica」やUCS発行のクレジットカードなどの自社決済利用比率を2025年6月までに50%超とする計画を発表した。「ドン・キホーテ」や「ユニー」を利用する自社会員に対して、チャージ手段の拡充、即時発行といった便利な決済機能の提供のほか、ポイントやクーポン付与などの施策を講じて一層の利用拡大を図ると同時に、他社の決済手段を通じて購買をしている顧客にアプリを通じて便利さやお得感をアピールする方針だ。
店舗・商品とデジタルの組み合わせで
顧客の利便性・満足度を向上
傘下にドン・キホーテ、ユニーなどを擁するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)では、2014年から独自の電子マネー「majica」を運用している。2015年からはmajicaアプリの運用を開始しており、アプリ会員数は現在1,100万人。ほかに板カードを利用しているアクティブ会員が100万人いる。また、2019年にユニーを子会社化したことに伴い承継したクレジットカード会社、UCSが発行する、「majica donpen card」などのハウスクレジットカード会員数は、310万人だ。
PPIHではこの会員基盤に対し、アップデートされた「CV(便利さ)+D(安さ)+A(楽しさ)」の顧客体験を届けたいと考えている。そのための重要な顧客接点の1つがデジタル、つまりmajicaアプリでありSNSだ。PPIHでは、majicaアプリの機能アップデートを継続的に進めており、その成果が表れている。
タイムリーな情報提供や、クーポンやポイントを組み合わせた販促施策の展開によって顧客満足度が上がれば、利用頻度の向上が望める。また、デジタルを活用して、顧客の反応や行動をデータとして把握することができるので、それをもとに効果的なCRM施策を立案・実行することが可能だ。SNSなどでの発信が多くの目に触れることによって、新規顧客の獲得も期待できる。
自社決済利用の比率拡大
決済にかかるコストを大幅削減
現在、ドン・キホーテ、アピタ、ピアゴなどグループ内店舗における自社決済利用層は約40%で、30%がmajica、10%がクレジットカードによるものだ。majica等の自社サービスを提示するが支払いは他社決済を利用している層は約10%。majicaサービスを使っていない層は約50%である。
PPIHはまず、PayPay等のQRコード決済を導入していない。店舗からの要望も多かったが、それよりもmajicaや自社カードの決済の利便性を上げ、よりよいサービスをつくっていくことを決めた。自社決済を利用してもらえれば、当然のことながら外部に支払うコストを抑制することができ、他社へのデータ流出も抑止でき、顧客の囲い込みも可能となる。PPIHでは自社決済比率を2025年6月までに50%超まで引き上げる計画だ。
そのためにはまず、majicaを持っているが決済には利用していない層に、チャージして支払う体験をしてもらう。majicaサービスを使っていない層のうち、現金決済を利用している3割の人には、いずれキャッシュレス決済に移行する際に、自社決済を選択してもらう。また、施設内の直営店舗以外のテナントでは自社決済利用比率が10%とまだまだ大きな成長の余地があるため、この顧客の取り込みを図る。具体的な施策としては、店頭での入会やチャージの呼びかけや、会員限定のお得なキャンペーンの展開とそのアナウンスの強化などに力を入れている。
一方、他社決済しか利用しない人、インバウンドの顧客などに関しては、徹底してコスト削減を図る。PPIHは、2021年6月にUCSで国際ブランド決済のアクワイアリング(加盟店開拓)ライセンスを取得して業務を内製化。パン・パシフィック・インターナショナルフィナンシャルサービス 代表取締役社長の岩淵功太郎氏は「手数料の交渉も行い、以前と比較して約15億円のコスト削減を実現しました」と話す。
今後はチャージ手段や即時発行も強化へ
店頭での最高の顧客体験を提供
majicaをもっと便利なツールにするため、PPIHではグループ外の店舗・施設でもmajicaが使えるようにする予定。チャージ手段に関しては、銀行口座や後払いへの拡大も進めている。クレジットカードのUCSカードについては、スマホを使って即時に発行できる体制を整えるべく準備を進めている。よりお得になる、買い物が楽しめる等のサービスを提供することでmajicaでの支払いに集約させるとともに、ドン・キホーテ特有の顧客である飲食店や法人の仕入れとして店舗を利用する法人客向けに新たなサービスも提供していきたい考えだ。
収益機会を広げる戦略の一環として、PPIHではCRM施策、決済領域のほかに、メディア・広告領域、商品領域での取り組みも進める。広告については、店頭とデジタルの両方を活用し、商品を最大限にアピール。商品については、ユーザー参加型の仕組みを検討中。いずれも詳細は後日発表される予定である。
岩淵氏は、「われわれの強みは、ドンキ、アピタ、ピアゴといった店であり商品です。店頭でお客様に最高の価値を届けるために、majicaにアップデートをかけていく」と断言。「こうすればこれだけ効果が上がる」という様々な仮説の実行と検証を積み上げて、店舗とムーブメントを作り、より良い顧客体験を届ける施策を進めていくとしている。